チャリンチャリン太郎

僕は鈴木太郎、4月からリフォーム会社に就職した。

初めて仕事で注文が取れた日、僕は我慢していたエアコンを買うことにした。格安の中古、窓に取り付ける縦長のもので、なんと扉がついている。
じいちゃんから聞いていた古いテレビのようだ。両開きの扉がついていて、見る前に拝んだ、とか。

それをヒントに、エアコンを使うたびお賽銭を貯める、というアイデアがひらめいた。
扉を開けて、チャリンとジャムの空き瓶に小銭、「今日も注文が取れますように」と拝み、スイッチを入れる。いつかそれが習慣になった。

そんなある日、バイトで入ってきた花ちゃんに僕は恋をした。
その夜は、チャリンと小銭をいれたあと、念入りに拝んだ。
「花ちゃんが振り向いてくれますように」

夜中。エアコンは動かなくなった。
翌日電気屋に来てもらうと彼は困ったように言った。

「なにか大きな負荷がかかるようなことをエアコンにしませんでした？
もう動かなくなっています」

　　　　　　　　　　　　おわり(408文字）

ご存じたらはかにさんの企画に応募します。
よろしくお願いいたします。