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嘘のいろ【きわどいはなし】

「やっぱりおしゃれな人は下着もおしゃれなんだ」
おとこの手が細いキャミソールの肩ひもを下げる。黒いレースのカゲロウの羽よりも薄い下着がするりと床に落ちる。おとこに導かれるまま、おんなはベッドに入る。ずっと荒んだままの心は動かない。こんなことをして楽しいとも、いや悲しいとももう感じなくなっていた。

「海が見える部屋がとれたからそこで食事でもしない?」
メールの意味はもちろんわかっていたが、知り合ったばかりのおとこと、この部屋まで来てしまった。お気に入りの黒のワンピースに念入りにブローまでして。
「君のロングストレートの髪素敵だね」
おとこは満足げに言う。運ばれてきたフランス料理の味なんか覚えていない。赤ワインの酔いが回って来て心の闇がほんの少し晴れた気がしている。考えるのはやめよう。何もかも壊れればいい・・・

おとこが果てるとおんなはするりとベッドより出て、床に散らばった下着を身に着ける。
「また会ってくれる?」
おとこの言葉に振り向きもせず、バッグから口紅を出すと壁一面の鏡に踊るような文字を書く。

Y E S

一番鮮やかな赤と言われているシャネルの赤い口紅で。

NOという意味のYES・・・言葉は心なんか映さない、ただの記号だけ。

おんなは部屋を出ていく。


        おわり

山根あきらさんの企画に応募させてください。
山根あきらさんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします。

小説ならばもっと背景を書かないといけないでしょうが、「きわどい」シーンを切り取って書いてみました。きわどいかな?(≧▽≦)

#きわどいはなし

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