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一発勝負
父の書斎の机にある、謎めいた4つのボタン。
1〜4の番号がそれぞれ刻印されている。
ボタンの近くには、小窓のような小さな扉が机に埋め込まれている。
おそらくは、この4つのボタンを正しい順番で押すことによって、その小窓が開くのだと想像ができる。
中には何が入っているのだろうか。
あくまで想像の域を出ないが、ボクは直感していた。
「正しい順番で押さなければ、ロックが掛かってしまうかもしれない。」
つまり、まずは正しい順番を推理し、確証を持ってからボタンを押さなければいけない。ここはミスできない。ボタンを押す時は、一発勝負だ。
ボクは、そう覚悟した。
それから、これまでに見つけたヒントを、机の上に広げた。
まずは手紙だ。
No.0は、ボクと爺やが住む隠れ家で見つけた手紙。
No.1の手紙は、城のホールで見つけた手紙だ。
No.2の手紙は、城の地下室で見つけた手紙。
No.3の手紙は、アトリエで見つけた手紙だ。
No.4の手紙は、城のボクの部屋で見つけた手紙だ。
No.5の手紙は、森の小屋で見つけた手紙。
この中で、No.1からNo.3までの手紙と、No.5の手紙には、カードと懐中時計が同封されており、その内容をそれぞれの手紙の裏にメモしてある。
No.1の手紙に同封されたカードと時計の内容がこれだ。
No.2の手紙に同封されたカードと時計の内容はこれ。
No.3の手紙に同封されたカードと時計はこれだ。
そして、No.5の手紙に同封されていたのがこれだ。
これでヒントは揃ったはず。No.5の手紙に書いてあるとおり。
ボクは、最後の推理を始めた。
針
まず気になるのは、No.0とNo.5の手紙に、全く同じ追伸が書かれていることだろう。
ボクは、それぞれの追伸を見比べて、やはり全く同じものであることを確認した。
こんな謎めいた文言が、偶然に揃うことなどあり得ない。
父は、わざとこれを書いている。
間違いなく、何かのヒントだ。
「まるで円盤を駆け巡るように
永遠に時の中を・・・って、
これは時計のことだよな。
親子・・・。時計・・・。
そ、そうか!!」
ボクの頭を何かが貫いた。
気づいてしまえば明らかだ。
なぜ、こんなことに今まで気づかなかったのか。
時計の親子とは、長針と短針。
すなわち、
この一節は、長針と短針の間が示す数字を意味しているのではないだろうか?
この一節も、そういう意味でヒントになっている。
ボクはもう一度、手紙の裏のメモを見た。
「12時10分で、
長針と短針の間の数は1だ。
1時15分では、2。
2時20分では、3。
3時25分では、4だ。」
やはり、父の机のボタンに該当する1〜4の数字が浮かび上がる。
問題はその順番だが、なるほど、これもピンと来た。
1st、2nd、3rd、4thの並びが、見つけた順番通りじゃなかったのは、カードに書かれた言葉を正しく並べるため・・・だけじゃない。
それぞれの長針と短針の間に刻まれた数字を、正しく並べるための順番でもある。ボクはそう推察した。
つまり、その四つの番号の並びは・・・。
1、3、4、2。
確信を持ったボクは、一発勝負の覚悟を決めた。
そのボタンをゆっくりと押した。
1、3、4、2。
・・・カチカチカチ・・・。
机の中で、何かの仕掛けが動く音がした。
それから、机の小窓のような扉が開いた。
中には、これまでのものよりも少し立派な封筒が入っていた。
ボクはゆっくりと、それに手を伸ばした・・・。
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