友達になりたいなんて浅はかなのかな

キスをした男の人がいる。おはようございます、たかみやです。

その日は店で唯一腹心の悪友と呼べる、年下のキャストと相判をもらってそのままアフター。営業中しこたまシャンパンを飲んで、お客さんが先に入っていたバーなのかスナックなのかラウンジなのか分からないところでもしこたまビールを飲んで、そのままそのキャストに連れられ初めてホストクラブに行って(人生で一番泥酔した)、缶物やポンパをすいすい入れていたらセット料金内の飲み物も一口も飲まず最初に席に着いたホストくんに「君指名で!」と言ったらしくその子に煙草に火をつけてもらっただけで数万の会計をした夜、いや朝の話。

キスをしたのはその可愛いワンコ系のホストくんではなく(ホストクラブの話もまた書きたい)、あとから知った話でしたが近所のキャバクラのボーイくんでした。今思い出すとなんて軽率なことをしてるんだよ。

ボーイくんがいつから合流してたのかよく分かんないんですよね、バーあたりからいた気がして、あたしをホテルに誘うお客さんを宥めてタクシーに押し込んでくれたのはあとから知ったけど。

そのバー、アパートの一室みたいな雑居ビル?の中の店舗で、外は普通に朝でよく晴れていて、飲み屋街の端っこのそのバーの入口のドアの前でよくもお前そんな…

「あれっあたし男の人でも酔ったらキスとか出来るんだ」「てかこのシチュエーションエモすぎる」「まじで酔ったな、なにしてんだろ」「この瞬間全てを文章化して脳味噌からプリントアウトしたい」そんなことを考えてた。

そこから何故か電話番号を交換し何度か電話をし、あたしが寝ている平日の朝4時とかにかかってきた電話にブチ切れブチ切りなどし、また何故か営業後にご飯を食べることに。

その日はさすがにあまり飲みすぎずに向かった駅前の牛丼チェーン。ビールを飲んで牛丼をのんびり食べているとボーイくんが現れました。シラフで対面するのはあたしは初めてという謎シチュ。

「もう飲んでたの」

そう言って彼がテーブルに置いたのはビールの食券二枚。

「あたしが二杯飲むわ」

と笑って返して、ビールを飲みながら思ったのは「この子と友達になりたいなあ」という中学生のようなピュアな考え。

キスまでしたんだし(逆に言えばキスしかしてないけど)、ボーイくんはわりとガンガン好き好きアピールをしてくれてましたが夜の世界に生きるノンセクレズはいくら年下のにゃんこ系癒し系イケメンでも靡きませんし。

お互いの仕事の話、ボーイくんに姉がいること、あたしに弟がいること、色々話しました。

ビールを飲み終え外に出て、電車まで時間あるからコンビニ寄りたい、と言えば飲み物奢るよ、と可愛らしいことを言ってくれたので甘えることに。

「何飲む?」「んー、どうしよ」「俺金麦で」「まだ飲むの?」「高宮ちゃんは?」「あたしコーヒーでいいや、レジのブラック飲みたい」

「……後悔しない?」

これ、今まで聞いたどんな口説き文句よりパンチラインでした。

金麦二本でお会計して、店の前で開けて乾杯して。

「やっぱり付き合う気ない?」「あたしと友達にはなれへん?」

この言葉だけ、お互い我慢していたんだろうなと。酒と泪と男と女。あとおかね。その世界に唯一不必要なものは友情だと分からないほどあたしは純粋ではなかった。お客さんではなく、他店のボーイとキャスト。真っ黒寄りのグレーな二人、誰にも内緒の逢瀬。もう二度と会わないことを決めていて、そうすればもう二度と会えないところが狭い飲み屋街のラビリンスたる所以でしょう。

電話帳の名前と、君の言葉だけで十分だよ。若い君は夜の帳にそぐわない程真っ直ぐだった。君の幸せをこっそり祈ってる、キスしたぐらいで飲み屋の女口説けると思うなよ、あとお姉さんとは仲良くね。

ほろ酔いで乗った電車の人混みを、何故か時々思い出します。

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