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問題解決と制約事項

先程読み終わった本は、安西祐一郎氏の「問題解決の心理学」である。
全体的に、問題解決をするための心理学の適用というよりかは、問題解決プロセスにおける心理的機能の分析の本なのかなぁ?とは感じた。
本筋とは外れるが、人間とは「自分を〇〇という立場だと思って思い出して下さい」という記憶の実験をすると、その〇〇という専門分野に関わる記憶を優先的に思い出すと書かれていた。
これは最近流行りのAIのプロンプトの書き方のコツとしても紹介されるものなので、やはりAIのシステムは人間を模倣できているんだなぁ、と思った次第である。

それはさておき、今回の記事は上述の本に関連する話題である。
私のライフワークのひとつとして考えているもののひとつが、この「問題解決」というテーマである。
人間、真剣に生きていれば、必ずどこかで困難にぶつかる。
その困難を試行錯誤して乗り越えることで、OJTとなって本人の能力向上にもつながるし、組織としての課題の克服にもつながるし、社会のイノベーションにもつながるのである。
人類の進歩とは、今まで不可能であったことを可能にしていくプロセスであると言えよう。

私が問題解決というライフワークを意識したのは20代半ばであり、実質2つ目の職場での、とある大先輩に依る所が大きい。
その人物はハッキリ言って嫌われ者であった。
自分の部署の仕事を、根拠たる規則を曲解してテイ良く押し付けようとするタイプであった。
(気の弱い、私のいた部署の次級者が押し付けられて持ち帰ってきて、それに対して若手衆(私を含む)が、「それはあそこの部署の本来業務や!」と言って突っ返させたのは良い思い出である。)
通称クロダヌキと呼ばれており、スーパー腹黒で、部下(直接の部下は除く)や同僚からの評判も中々悪い人物であった。
自身の高い能力を、明確に自分が楽するために使うタイプの人物だったのである。
ただ、その一方で私個人は、その人物と共通する職域であったことと、割と私が他所の部署とのやり取りが多い仕事だったこともあり、コッソリ可愛がってはもらっていた。
ということもあり、付かず離れずのボチボチの距離感で過ごしてきた訳であるが、ある日私がちょっとした危機にぶつかった。
細部は伏せるが、私がその業務に対して行なってきた方針を逆手に取って、ある部署がその他の部署の納得がとても得られない要求をしてきたのである。
自身の今までの方針を維持してその他の部署の不信を買うか、今までの方針を覆してその部署の不信を買うかという所まで追い込まれた。
当時の上司は温厚だが、あまり問題解決はしてくれない人で(むしろ相談したら問題が増えて返ってくるタイプの人だった)、私は腹黒タヌキのその人物に相談した。
細部は言えないので結果だけを言うと、私の方針を維持したまま、その部署の要求を納得させて抑えられる方法を、一言で教えてくれたのである。
(支障ない範囲でザックリ言うと、予備費的な項目で留保するけど、使わなかったらその部署に予算充当するから、という説得をしたのである。)
元々、その人物からは「もっとズル賢く上手いことやりなよ」と言われていたのだが、当時は私も若かったので(今も心は若いつもりだが…)、やはり公明正大な基準で業務をコントロールしたいと思っていたのである。(単に不器用だった、というのもあるが…)
元々、その方針とは違うアドバイスをしてきたのであるから、言ってしまえば「ほら、言った通りにしないからこうなっただろ?」と言ってしまえば、道義的にはそれで終わりである。
しかしながら、その人物の方針に反した私の方針を尊重した上で、鮮やかに私が抱えていた問題を解決してしまったのである。
その職務では色々と板挟みにあったり苦労することが多かったが、先ほどの問題も含めて多くの問題にぶつかり、時には自分で解決し、時には前述の様に他の人の協力や助言をもらって乗り越えてきた。
その経験がその後の勤務に生きているとともに、私のライフワークのひとつとして「問題解決」を掲げるに至らせたのである。

さて、この問題解決であるが、私のいる業界では似た様な言葉として「制約事項」というものがある。
問題というものは、自分の権限で(場合によっては周囲の協力を得て)解決できるものであり、制約事項は自分の権限では(基本的に)解消できない前提的な制約である、という整理である。
つまり、制約事項は仕方がないものだと諦めて前提事項とし、その範囲内で起きる問題に対して、どうにかして解決しながら業務を進めていく、ということになる。
その範囲内で問題をいかに解決して業務を進められるかが担当者の腕の見せ所であり、制約事項を侵してしまうと大問題に発展することもある。
例えるならば、社内の内規であれば、それを変えて解決する話であればそうすればいいが、法律の定めがあることに反して業務をする訳にはいかない、といった感じである。
自分の権限を超えることをやってしまえば、その責任を取らされるのである。
ただ、業務をやっていると、どうしても問題点だけを解消していった所で、どうやってもニッチもサッチもいかない、という自体も起こり得る。
その場合はどうすればいいのであろうか?
実は、問題点と制約事項は立場によって変化する。
であるからして、自分にとっては制約事項であるものであっても、場合によっては上司だったり他部署にとっては問題点の範囲内である場合がある。
そのため、より高い視点から制約事項を含めて分析し、自分の権限で対処できる問題点を解消したとしても根本的な障害が取り除けないのであれば、思い切って上司(や他部署)の力を借りることで、開かれる道があると言えよう。
自身がライフワークとして自身の問題を解決できる人間となりたいと思うとともに、他者の抱える問題点、場合によっては制約事項を解決してあげられる人間になりたいと思っている。
私は、上司としてあるべき姿として3点を重視するべきであると考えている。
「明確な指針(ビジョン)を示すこと」「(部下のも含めた)問題を解決すること」「責任を取ること」
正直、人の上に立つ上で、決してスーパーマンである必要は無いと考えている。(なれるならばそれに越したことはないが…)
ただ、凡人であっても人の上に立たざるを得ない機会は決して少なくない。
その時に、この3つの観点を忘れずに在りたいと考える。

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