ヒキニートが「N・H・Kにようこそ!」を観た話。

ある意味最高のタイミングで観れたかも。

ただの感想なので殆どネタバレは無いと思いますが、ニート/漠然とした不安に苛まれてる人/日々が虚しい人にはとりあえずオススメです。

①概要

N・H・Kにようこそ!というアニメを観ました。日本放送協会への風評被害No.1の作品ですがストーリーとは一切関係ないです。
どんな話かというと、社会に確実に存在しているどうしようもない方々のお話。統合失調症気味の引きこもり青年、夢見る底辺クリエイター、陰謀論に取り憑かれた自殺志願者、引きこもりの兄を養うためにマルチ商法にハマって取り返しがつかなくなった元委員長、自分の存在価値を信じきれない少女etc...
かくいう私も底辺ヒキニート満喫してるわ情報商材引っかかりかけるわ自殺未遂寸前の経験もあるわ、全く他人事じゃねーお話し。
作者の実体験ベースらしく嫌に生々しいですが、ご都合主義すぎず、露悪趣味すぎないなにやら不可思議なバランスです。

② 音楽と映像

BGMがやたらとおしゃれなのも好きな雰囲気、メロディが抑え目でコードの響きをそのまま聴かせる雰囲気に徹した曲が多かった印象。
あっちはゲームですがゆめにっきのサントラとか聴いてるとBGMって構造的な情報量無くても成立するもんですね。(アニメのサントラに変拍子使う変態もいますが)
OPの「パズル / Round table feat.nino」と二期EDの「もどかしい世界の上で / 牧野由依」はすばらしき曲なのでとりあえず聴いて欲しい
どちらもやたらと洒落ていて適度に力が抜けた綺麗な音楽、作品の退廃的な雰囲気といいコントラスト、されど歌詞は登場人物の心境をよく表していたり…
本当に作品に合っていてほんと好き、シナリオと歌詞のマリアージュすこすこです、幾重にも意味が塗り重なって特別な色味を帯びていく感じいいよね…
二人出会うまで 無くしてた何か 最後のかけらを取り戻して歩き出そう
ちっぽけな世界なのにどうして 期待に胸が膨らむの? はてしない世界なのに どうして 何にも期待が持てないの?
多分10年後も聴き続けられるんじゃないかな(というかこの曲を初めて知ったのがそれくらい前なので既に10年以上聴いている…?なぜかアニメを知らず曲だけ知っていた)

どちらも思う通りにいかない世界の中でももがきながらも歩いていく、後ろ向きに前向きなスタンスに勝手に共感します。
これに共感できないと死ぬしかねぇしな!

OPの映像監督が何度も見たくなる映像作る天才、石浜真史なのもまた嬉しい。
制作スタッフのクレジットすら芸術的に映えさせるのこの人くらいでは…? 逆にクレジットないと成立しないOPなんてのもあります(AチャンネルのOPとか映像関係に全く詳しくない私でも脱帽する素晴らしさでした、いいよね…)

③岬ちゃんについて

超今風に言えば、電波系で依存気味なメンヘラメインヒロインちゃんです、わりと意味不明な動機でつきまとってきますが超かわいいです

最後の方で納得できる動機は描写されますが、ゾッとします、そして後半の圧倒的メンヘラムーブにはゾックゾクできます、一粒で二度美味しい!
「うちにも岬ちゃんくればいいのに」と、いったい何万人の穀潰しが妄想したことでしょう、最後まで見切った人はみんな思うんじゃねーの
CV.牧野由依のウィスパーボイスたまらないですね、聴いてるだけで耳掃除されそうな澄んだ声してます。聴き続けてるとこの世界から浄化されそうです(されたい)

④共依存の末路、個人的経験から

ただ、こういう自分の存在価値を他者に依存するようなタイプの人って共依存になって破滅するのがオチだと思うんですよね。
自身の存在価値が分からない、自己肯定感が希薄な人間が自分よりダメな人間に世話焼くことで、自分の欠けた劣等感と信じることができない存在価値を埋めようとする…
ほんと見てて嫌になるほど生々しい。自分も欠けていてそれが分かってしまうからきっつい(引きつった笑い+誤魔化すような防衛機制的な狂い笑いを浮かべながら見てました
他者を助けることに依存するのは「メサイアコンプレックス」とかいうらしいですが、私こういう人出会ったことがあるんですよね…
だからこそ、欠けている部分を他者を使って埋めようとすることで起きる問題とかその歪さとか生身で経験してきてるので尚更…クるものがありました。

恋愛関係の理想は自立している者同士が「自分だけで生きていけるが、それでもあなたと居たい」とつながることだと思うのですが…
私自身それができるほど強くないし、何かしらの手段で麻酔をかけ続けないと希死念慮がすぐ湧いてくる日々でして
そんな理想はどうも叶えられそうにない現実に毎日直面しております、そんな状態でこういうの見ると精神的にきつい…
それでいて現実の思う通りにいかなさに苦しんでいる時ほど、誰か伴侶を求めたりするその浅ましい本能がまた…うん…人は弱く醜い
私だけでしょうか…
※ナチュラルにキャラを人間として見てますが、作り物と感じるキャラについてはそもそも思考の俎上に乗せません。

「人生で起こる9割は辛く苦しいこと」「想像力が貧困だから、うまく神様を信じきることができない」「信じきれればわるいことぜんぶ神様のせいにできるのに、私は悪くないって確信できるのに」なんて台詞を彼女は言います。
虚構を信じること、その能力でもって人は繁栄してきたなんで話がサピエンス全史なんかで描かれていましたね。
これ生きていくためには必要なんだと最近しみじみ実感してます、何の根拠もなくても明るい未来を信じることができなければ人は生きていけない。
主人公も言ってますがなまじ「衣食住があるからこそ引きこってしまう」しなんとなく生きることができてしまう、そして漠然とした不安を抱えながら生きていけてしまう。
そういう時に「自分の未来はいまより明るい、自分の未来は自分の力で変えることができる、私は価値がある人間なのだ」と信じることができないと、人は死にたくなるんじゃないでしょうか。それぞれ希望、自己効力感、自己肯定感ってやつですね。
こんな形のない漠然とした不安はいったい何万人の人間を自殺に追いやったんでしょう。芥川龍之介もそんなことを言っていました
科学的には文明病だそうですが、また横道に逸れるので詳しくはこの本を参照、このアニメの登場人物全員に読ませたい。

アニメには2人の行く末は描かれていませんがこの2人多分幸せな結末にはならないんじゃないかな… 自殺から一度立ち直ったところで、自殺を考えるほどに抱えた生きづらさは消えないんですよね。
それを抱えて生きていかなければならなくて、その過程を楽しめるような性格ならそもそもそこまで思い詰めないですし…

その行く末に幸福がないと思ってしまうのは、今の私が希望、自己効力感、自己肯定感をすべてロストなう、だからでしょうなぁ。


まぁ、なんつーか。どうせフィクションならいい方向に転がり続けることを祈っておきましょうか。俺はダメだったけど共依存の先に幸福を掴める関係性もきっとあるんじゃないかな。

⑤(人生)おわりに

1.バイト探そ…主人公の境遇はマジで笑えないし、向こうから岬ちゃんがやってきてくれる筈もないので。
2.何もしてないと焦燥感と自責感に呑まれるので、それを麻酔(という名の娯楽や情報)で麻痺させながら日々をやり過ごそう
と思いなおしたヒキニートでした。

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