シャニアニ1stについての感想

はじめに

アイドルマスターシャイニーカラーズ、そのアニメ1stシーズンのテレビ放送を終えたため、感想を述べさせていただきます。
まず、この作品に携わり、届けてくださった関係者の方々に対して、感謝の意を表明させていただきたいです。

アイドルたちの動きが良かった

もう何十回も言われておりますが、やはり言葉だけでなく視線、表情、動きで伝えようという試みがすばらしかったです。
原作のブラウザー版でもかなりアイドルたちの動きにはこだわりを持って作られているのを感じていましたが、アニメでは原作でよくある日常パートだけでなくレッスン、ダンスシーンに至るまで細やかな動きで各アイドル個人の個性を表現しようとしていて感服しました。
3Dアニメで作られることに不安感はありましたが、確かにこれを2Dでやるというのも難しいですし、放送されるアニメの本数の多い昨今では「デレアニ」以上に延期をして2023年の「アニメに本気」とかいう謎企画に間に合わなかっただろうことを考えると、結果的にですが選択としては正しかったし、納得できる部分だったと思います。

シャニマスらしい着眼点だった

11話、12話では、ライブシーンだけでなく舞台裏にもスポットを当て、メイクや衣装の担当者たちとアイドルが慌ただしく準備をしているシーンを多く描き入れて、アイドル以外のキャラクターの活躍も描写することの多いシャニマスらしさ、普段体験しているライブもこうして作られているということを感じられました。

6,7話ではWingという初めての大舞台に挑む各ユニットのスタンスを明示するだけでなく、全組敗退はしたけれども全組が売れるという最善ではなくとも納得できる結果を得られるように動くところにシャニマスらしいところが見られました。
新人アイドルの登竜門として注目を集める大会に新興事務所のユニット4組全員が本選に出場するというだけでも話題になるのは間違いないですがプロデューサーが組んだTVの企画、これによって彼女たちに挑戦者としての物語を作り出すことが出来ていました。
意図的なのかは知らないですが、シーズのシナリオで語られていたコマの話に当てはまる構図になっているところも説得力があるところです。
もしどこかのユニットが優勝していたらTVでもそのユニットばかり取り上げられていたかもしれないですし、もしかしたらこれが最良だったのかもしれません。
また、敗退して果穂が泣いている理由を話すシーンは最初のコミカライズの時、果穂が敗退して泣いているところの補完となっていてよかったです。

真乃が一歩踏み出す話として良かった

1話では原作の出会いのシーンをベースにしつつSTEPで出ていた真乃の抱えている葛藤も描かれていてよかったです。
引っ込み思案な少女が自分の悩みを打ち明けるというのはとても難しいところではありますが、雨などの空の情景を演出に加えることで言葉を使わずに悩みを抱えていることを描写出来ているし、新しい出会いをきっかけに、勇気を出して新しい世界へと踏み出していく姿が4月という始まりの季節に放送する事自体意味のあることだと思いますし、そういうところもシャニマスの運営らしいなと思いました。

残念だったところ

演出についてはもうちょっとという感じでしたが、それ以上に残念だったのは以下の部分です。

どういう事務所なのかわかりづらい

先ほどよかったと語った部分に絡むのですが話の構成の都合によりこの事務所自体がどういった規模なのかわかりづらくなっていました。
まず、事務所の外見からして小規模な事務所であることが伺えるのですが2話にして大物監督へ依頼をしていて、この事務所の規模感が分からなくなってしまっています。(監督が受けてくれたのは単純にプロデューサーの力なのでしょうけど)
そしてその後も事務所についての説明がほぼないので視聴者視点でWING7話で作られた物語が分かりづらくなってしまっています。
6話前半でプロデューサーが企画持って行ってTV局の担当者に「283プロ?見ない顔ですねぇ」とか言われるシーンを入れて補足したほうが分かりやすかったかと思います。
せっかくプロデューサーを有能な人間として描いているのに伝わりづらいし、原作のように主張を強くしてもよかったかと思います。

一部アイドルの解像度

おおむね1年目の彼女たちならこういう時こんな反応をするだろうと思えるのですが、一部アイドルについて違和感を抱くところがありました。
特に大きなところでいうと下記の部分です

確かに千雪さんは1年目ではユニットの最年長として振舞おうとしているし、大崎姉妹に遠慮しているのも確かなのですが、少女性と大人らしい強欲さを併せ持つ部分もこの時点である程度表出していましたし、その面にあまり触れられないのは残念でした。
また、大崎姉妹も千雪さんが遠慮しているのを感じているしだからこそ自分たちも千雪さんを尊重しようとする、その尊い関係性が1年目のアルストロメリアの肝であり、「薄桃色にこんがらがって」につながる伏線でもある。
もうちょっとこの辺りを押してもよかったかと思います。割と大崎姉妹が千雪さんに甘えすぎているところがあってバランスが崩れていましたし。

また、11話にて甜花ちゃんが無事に役割を果たせたことで安堵して涙を見せるシーン、とてもいいシーンなのですがこの時点で達成感を感じるほどの成功体験をしているとなると、甜花ちゃんのGRADにつながりにくい気がします。
どちらかというと甜花ちゃんが安堵して満面の笑みを浮かべ、それを見て甘奈ちゃんが涙を見せる感じがそれっぽい感じもします。
基本パラレルだからアニメの甜花ちゃんがGRADみたいな経験をするとは限らないのですが……

シナリオ面での大きな疑問点としては、アンティーカ感謝祭モチーフなのに咲耶でなく霧子のほうが曇っていたり(単純に一緒じゃない時間が増え始めた時期だから?全体的に霧子のセリフが少ない気がするけど、そういった都合?)、10話のプールのシーンでcatch the shiny tailオマージュをするかと思ったのですがもうすでにイルミネは言わなくても伝わる関係性になっていたり(尊いね)するのも気になります。

全体の感想

正直、初報時点ではポリゴン・ピクチュアズはあまり美少女アニメ方面での評判は聞かないし、脚本、監督はコメディ寄りの作品ばかりの経歴ということでだいぶ不安でした。
アンティーカと放クラはアイドル物のテンプレートをなぞるだけでもある程度は面白いものにできるのですが、アルストロメリアとイルミネについてはうまく扱えないのではないだろうかと思っていました。
そんな不安を抱えつつ、実際見てみると原作の雰囲気を極力再現しつつ新たなはじまりの物語を描こうとしているのが感じ取れましたし、各アイドルたちのイメージを極力崩さないように慎重に扱ってくれているのも感じました。

原作で1年かけているWING本選までの道筋を数ヶ月に短縮しつつ現実での1stライブに相当するものまでを12話で描くというのはとても難しいですが、足りない部分はありつつもきちんと話を作れていて、せっかくここまで出来たのならばもっと時間をかけてより丁寧に作られたものを見たかったです。
あの「アニメに本気」とかいう全体企画の都合クオリティアップのための延期もできなかったのが悔しいところです。
アイマスの全体施策がよく分からないものなのは今に始まったことではないのですが……

正直このスタッフでやるならコミカライズ版のアイドルマスターシャイニーカラーズをベースに24話やれば安定して面白いものが作れるはずですが、そうではなく新しい物語を描くことにしたところが良くも悪くも常に道を模索してきた"アイドルマスターシャイニーカラーズ"らしさがにじみ出ています。

そして、もうすぐ2ndシーズンの先行上映が始まります。
作画面では、追加ユニットのモデルも1stシーズン時点で作り終わっていますし、シナリオ面でも追加ユニットのストレイライトやノクチルはキャラがとても立っているのでシナリオを作るうえでも動かしやすいと思いますし、2期も期待できると思います。
新たなユニットを加えてさらに輝きを増す彼女たちを見るのがとても楽しみです。