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#3 そして我が家は、険悪になった。



上勝から帰ってきた翌朝。
オフィスが開くであろう時間を見計らい、即、電話、即、アポイントをとった。そして、東京・千代田区の都道府県会館へ。

打ち合わせやアポには落とし所が必要である。

これが、座右の銘の私にとって「ご挨拶アポ」は、なんというか、不本意でしかない。


でも、進むべき次のタスクが見当たらなさすぎて。
とにかくいただいたアドバイスを実行に移して動くしかなかったんだ。

フレンチモンスターというレストランを経営していること。
夫の故郷・徳島をテーマにしていること。
この度、徳島銘菓を作りたいとプロトタイプを作ったこと。
徳島に持って行ったら、みなさん喜んでくださったこと。

・・・で?って言われたらどうしようと、額に汗しながら喋りまくった。

すると皆さん、本当に本心から関心を寄せてくださって。
レストランにはどんなお客様がいらしてどんなふうなお料理を召し上がるのかとか、どんな感想を持たれるのか、お菓子はどんなものを作っているのか、熱心に話を聞いてくださった。

だから作ってきたパワポをお見せしながら、また一生懸命喋った。

すると、「錦織さん、何をして差し上げたらいいですか?」

きたっ!
恐れていたこの一言。そして沈黙。その落とし所がわかっていたら、こんな準備不足で私はここにいないよ・・・

その様子を察したのか「今度、徳島県人会を東京でやるんですよ。100人以上の皆様がいらっしゃるから、そこでお菓子を販売したらどうですか?」
とご提案してくださった。

え!そんなチャンス!いきなりのチャンス!いいんですか!色々調整して、またご連絡しますと打ち合わせを終えた。

自宅に帰り、きっと夫も賛成してくれるだろうと思ったら「そんなこと、勝手に決めてくるな。お菓子の事業を始めるとか簡単にいうな」とまさかの手の平返し。

えーーー!やりたいって言い出しのはそっちじゃん。しばらく我が家に険悪な空気が漂うこととなった。

その時には、なんで?って思っていたけれど。今ならそれがなんでなのか、はっきりとよくわかる。

「継続的に、安定的に、安心安全でかつ、美味しいお菓子を提供し続ける」
これがどんなに難しいことか。今の自分だったら、どれだけ無謀なことか。
100個くらい挙げることができる。

でも、このチャンスをなんとか形にしたい。またレストランの隅で、自分を持て余すのはいやだ。我が家の空気はどよーーーんと、重苦しい雰囲気になっていったのでした。

そして、その重苦しい空気の中、夫から放たれた一言。

「お菓子事業始めるのなら、どっかで優勝してこい。優勝しないような菓子に、俺は1円たりとも投資しない」


えーーーー!? 

まだ商品にもなってないっていうのに

優勝って???


何???

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