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Steamのウィッシュリスト工作?

先日Steamに初めて自作ゲームを提出したのですが、一つ学んだこととして、無名の初提出デベロッパーのところにもいろいろな海外の業者から「おめでとう!君のゲームをもっと宣伝しよう!」的な連絡が来ます。
それもまあ、なかなかうんざりするくらいの数が来ますね。
App StoreやGoogle Playにアプリを配信したときにも似たような業者からの連絡はありましたが、少なくとも僕の場合はSteamのほうが圧倒的に多かったです。

内容は主に、料金を支払うことでキュレーターやらインフルエンサーやらに紹介してもらえる、とか、配信ページをもっと魅力的にしてあげる、といったサービスです。
その辺りはまあいいのですが、すごく気になったのが「お金を払えばウィッシュリストを増やしてあげますよ」というもの。
たとえばこのような感じです。事業者名は一応伏せておきます。

Wishlist activities ($190)
Adding about 1500-3000 players to your game's wishlist.

Approximately 2,000 mixed wishlists, 10-15 days – $200.
Approximately 8,000-10,000 premium wishlists, 2-3 days and the game immediately appears in the Most wishlisted games on Steam search. – $5,000.
If you need more information, I'm happy to provide a detailed breakdown of each service. Feel free to reach out with any questions.

-2,000 mixed wishlists of your game for $219.
-8,000-10,000 wishlists (premium - filter out players whose Steam purchases are >$100 - for $4,499.)

もちろん違法性はないのでしょうが、これっていわゆる「工作」ですよね?!

ウィッシュリストと売上の関係?

さて、工作ってどうなんや?というモラル面の話はいったん置いておいて、支払う価値があるサービスなのかということを冷静に考えてみます。

といっても私はこのトピックに関してど素人です。
単にググって先頭に表示された記事の情報から雑に考察してみました。

重要なところを抜くと、このあたりでしょうか。

  • ゲームの発売初週の販売本数の中央値は,発売時の Steam ウィッシュリストの合計数の 0.2倍

  • ただしかなりブレがあり、Steamでの第1週の売上は,発売時のウィッシュリストの1.5%から100%以上にまで及ぶ

  • ウィッシュリストは発売時の結果を少しだけ予測できるが,たいしたことはない

実際には、デベロッパーのフォロワー数や、販売される価格がいくらか、といった要素がかなり影響しそうなので(ウィッシュリストは価格未発表の状態で登録するのが普通なので、いざ価格が発表されると「思ったより高いやんけ、やめとこ」となったりする)、ウィッシュリスト数だけで話を進めるのはかなり強引です。

ただそこの厳密な効果測定が記事の主題ではないので、とりあえずいい加減な計算を進めると、たとえば1,000円のゲームのウィッシュリスト8,000を5,000ドル(1ドル=150円だとすると750,000円)で購入したとします。
ウィッシュリスト8,000追加によって売上が1,600増えるとすると、増加売上額が1,600,000円。一方でコストは750,000円。めっちゃ得やんけ!

ん、いやいやそんなわけないですよね。
その業者のウィッシュリスト8,000がゲームを買う可能性はゼロなので、あくまで「ウィッシュリストが増える→Steamの中で注目の作品扱いされる可能性が高まる」だけの効果でしかないわけです。
結果として期待中央値分の売上アップが得られることはおそらく稀で、実際には半端な金額を支払ったところで「ウィッシュリストだけは謎に多いが全然売れてないゲーム」が1つ爆誕するだけだろうと思います。

業者が得して、「業者に金を払わなかったほとんどのデベロッパー」が少し損するだけ

このような業者が一定数存在するということは、このサービスにも少しは(もしかしたらそこそこ?)需要があることになります。
業者はデベロッパーから料金をもらって、潤います。そのお金で妻子を養ったり、電気料金の支払いをしたり、初音ミクのフィギュアを買ったりするわけです。

しかし、世の中の大抵の商売はゼロサムゲームです。誰かが得すれば誰かが損する。
この場合誰が損するかというと、彼らサービスにお金を払った客も直接的に損するかもしれませんが、それ以上に確実に損するのは「業者に金を払わなかったほとんどのデベロッパー」です。

というのも、工作によってウィッシュリストが操作され、本来そこまで注目されていない作品がSteam内のランキングなどに上がってきたりしてしまうことになり、工作がなければランキングに食い込めた作品が椅子から蹴落とされてしまうためです。

といってもこれは別にもっともらしく語るようなことではなく、当たり前の話ですね。
そもそもこのSteamウィッシュリストに限らず、一般的なインターネット上の「広告」にしても同じ話で、それが存在することで広告屋が収益を得て、広告に金を出せない(出さない)多数のコンテンツ提供者が少しずつ損をする、という構図になっているわけですよね。

ただ、このウィッシュリスト工作に関しては、明らかにこのサービスが存在することで業界全体にとってはマイナスになっている(彼らが収益を稼げるだけで、業界に貢献するポイントが何もない)と感じるので、願わくば滅びてほしいものだなーと思いました。

工作といえば

以下、ただの個人的体験にもとづく余談なのですが。
工作に関してこのような嫌悪感を抱いたのは2度目で、以前自分はニコニコでボカロP活動をしていました。
全然「その界隈の人には有名」とか「収益を得ている」というレベルではなくて、自分の好きなように曲を作ってアップしてわずかなリスナーさんの反応を楽しんだり、歌い手さんや絵師さんとのコラボを楽しんだり、といったレベルです。

そのうち、そんな底辺的なニコニコボカロP界隈にも「工作」が存在することがわかってきました。
仕組みはまんま同じ、業者にお金を払って再生数やマイリスト数を稼ぐというものですね。

そしてだいたいその界隈に属していると、他人の作品のレベルというのはわかってしまうものなので、明らかに「え、このクオリティでこの再生(マイリス)数?!」などと不自然な人気の発生に気づいてしまいます。嫌な表現ですみませんが。
そして仲間うちで「xxさんって絶対工作使ってるよな…」とか噂し合ったりして、なんとなく疑いの目で周囲を見るようになったり…
業者がちょっと小銭を稼いで、依頼者の承認欲求がちょっとだけ満たされて、その他の関係者にとっては全て(わずかな)マイナス効果。
本当に唾棄すべき存在だと思いました。

…まあしょうがないのですよねえ、そんなこと言っても。
と、何か初めてのことにチャレンジすると、世の中の嫌なものもまた1つ目につくんだよなぁ。というお話でした。
(そしてようやく、この記事の内容も世界中の誰にも役に立たないことに気づく僕。)


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