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GⅠホープフルステークス



序文 名馬になるための条件


つい先日の有馬記念は22年ダービー馬、
ドウデュースの勝利で幕を閉じた。

鞍上は武豊騎手、競馬界を代表するレジェンド騎手が勝ったことで、レース後の競馬ファンはいつも以上に盛り上がっていたように思う。そういう私自身も、馬券を外してしまったにもかかわらず、レース後のコメントには大層感動してしまった。不意の怪我から復帰しての一発回答。TV実況も言っていたが役者が違う、素直にそう思った。
鞍上はこれで有馬記念4勝目。オグリキャップ、ディープインパクト、キタサンブラック、そしてドウデュース。名立たる名馬に跨ってきた武豊騎手。もちろん有馬記念だけでなく、数々のレースで栄冠を彩ってきた。
…そんな武豊お手馬の中で、私が個人的に一番好きな馬がスペシャルウィークである。

武豊をダービージョッキーにした馬である

以前、ウオッカのノートを書いた際に「塞翁が馬」という故事を引用したが、スペシャルウィークもまた同様に、数奇な運命を辿ってきた馬であった。
1995年に誕生、父・サンデーサイレンス、母・キャンペンガールの仔として生まれた。出生の際、母キャンペンガールは受胎中から疝痛(せんつう)を繰り返していて、生命が危ぶまれる状況の中、スタッフ・獣医総出での出産となった。…こうしてスペシャルウィークは生まれたが、母は難産の影響で仔が生まれた5日後に死亡。スペシャルウィークは別の乳馬があてがわられ、また他馬よりも人の手によって直接的に育てられた。
余談だが乳馬になった馬は大型の輓馬(ばんば)、いわゆる「ばんえい競馬」に出走していた馬だった。
その影響か、人の手にかけられた影響かはわからないが、気性難が多いとされていたサンデー産駒の中にあって非常に穏やかな馬として育ったそうだ。

2年後の97年、栗東トレセン。管理の調教師・白井寿昭は一人の騎手に声をかけた。
「サンデーの仔で面白いのがおる。
       乗ってくれへんかな?」
これが武豊騎手との出会いだった。
既にトップジョッキーとして地位を確立していた武だったが、日本ダービーでは9度挑戦して一度も勝利がなく、競馬会の「不思議」とまで言われていた。その彼が一度騎乗すると、すぐにこの馬のことを気に入ったという。
「今度こそダービーを勝てるかもしれない…。」
実際この馬が日本ダービーを獲ったことは史実として誰もが知ることなのだが、デビューからそこに至るまで、簡単な道のりではなかったようだ。

97年11月、デビュー戦こそ落ち着いたゲートから盤石のレース運びで1番人気に応える快勝を飾ったが、2戦目の白梅賞で弟・幸四郎のアサヒクリークにハナ差で敗れてしまった。この敗戦が尾を引き、次走予定していた共同通信杯を見送り。…このままではクラシックには出れなくなる。そんな危機感を覚えるも、共同通信杯は降雪によりダートに変更という異例の事態に。結果、見送りで正解だった。
と安堵した矢先、今度は賞金加算を見込んだ500万下のレースを除外されてしまう。いよいよツキに見放されたか、と思いきや次走のきさらぎ賞に出走し結果完勝。難なくダービー出走権を手中に収めた。
それから日本ダービーを制した後の活躍は、競馬ファンならよくご存じであろう。天皇賞、ジャパンカップ、幾多のライバルたちに囲まれながら、2年間で古馬GⅠを4勝。馬券外に沈んだのはGⅡ京都大賞典のみ。燦然と輝く戦歴である。


その命を危ぶまれながら生まれてきた。
あの時もし失敗していたら…。
名馬は生まれて来なかったかもしれない。

新馬戦を控えた追切。
あの時もし出会っていなければ…。
ダービー制覇はなかったかもしれない。

あの時敗けていなければ、
あの時除外されていなければ。

それぞれの生涯に「if」を語っても仕方のないことかもしれないが、名馬として歩むためにはきっと才能や努力だけでなく、時として運や「ツキ」を味方ににつけなければ勝ち上がってはいけいない。
競馬に限った話ではないが、勝負の世界には常に目に見えない何かが働きかけているのではないか。スペシャルウィークの生涯を追うことで、改めてそう思わされるのである。
先日の有馬に話は戻るが、ドウデュースの完勝。天皇賞での乗り替りや公開抽選会が今思えば「お膳立て」に思えてくるくらい、目に見えない力を引き寄せる、競馬に愛された騎手の姿は、まばゆい輝きを放っていた。

さて今週はホープフルステークス、大井・東京大賞典を除けばJRA年内最後のGⅠレースである。今年も素質馬揃いの一戦になりそうだ。
佳境を迎えた2歳馬戦、年明けからはクラシックへ向けたレースがはじまる。素質だけではなく、かつてのスペシャルウィークのように、運命に導かれたドラマを背負った馬は出てくるのだろうか…。今の私たちにそれを知るすべはないが、楽しみが尽きることはなさそうだ。

レジェンド武はセンチュリボンド騎乗で出走予定。
17年にGⅠ昇格したこのレースは
「武豊が勝てていない唯一のGⅠレース」である。
有馬記念を制した勢いそのままに完全制覇なるか?
淡い期待を抱いてしまう方も少なくないだろう…。

「GⅠホープフルステークス、まもなく出走です」

3冠馬コントレイルもこのレースを勝った。
次代の名馬は生まれるだろうか?

はじめに

JRA24番目のGⅠレース、ホープフルステークスです。
創設は古く1984年に「ラジオたんぱ杯3歳牝馬ステークス」としてはじまりました。14年にGⅡ、17年にGⅠに昇格、中山芝2000mの2歳重賞です。昨年は14番人気のドゥラエレーデが勝利。馬連64,580円の大波乱決着となりましたが今年は…?14年以降の過去9年データから、最適解を導きたいと思います。

コース攻略

中山芝2000mは有馬記念ほどではないが
器用さが求められる難コースだ

4コーナー終了地点からスタートする内回りコース。基本外枠は不利です。
直線の急坂を2度駆けなければならず、スピードだけでなくスタミナ・パワーも要求されます。急坂かつコースも広くないため後方からの一気は難しく、好位から中団につける差し馬が活躍する傾向があります。
昨年の大波乱はスローペースからの前残り決着、レース展開がどうなるか、深読みする必要がありそうですね…。

過去データからひも解く好走データ集

情報量の少ない2歳馬戦とはいえ、好走条件は間違いなくあります。早速見ていきましょう。

1番人気の成績は?

【5-1-0-3】で連対率66.7%とまずまずの成績。これを単勝オッズで分けると、単勝2倍台までの馬は【4-1-0-1】で連対率83.3%となりますが、
単勝オッズ3倍台以上だと【1-0-0-2】にダウン。
また前走1800m以上を1番人気で勝っていると【4-0-0-1】と勝率80%。
今回の想定1人気はシンエンペラーで単勝3倍前後の見込み…。
この馬をどう評するか。まずはそこからですね。

関東馬VS関西馬

通算成績、
関東馬【2-4-5-51】 関西馬【7-5-4-54】
で意外にも関西馬優勢。GⅠ昇格後の17年以降は関東馬0勝。

外国人J大活躍

過去9年で連対した18頭の内11頭に外国人騎手が騎乗。
そのうち8頭がノーザンF生産馬。
外国人が乗ったノーザンの馬は要注意!
馬主は社台系その他でも問題はないです。

上りを使える馬に注目

前走で上がり3Fが1位だった馬5勝
前走で上がり3Fが2位だった馬3勝
前走で上がり3Fが3位だった馬0勝
前走で上がり3Fが4位だった馬1勝
さらに逃げ馬は0勝(2着1回)
先行馬が10連対。道中6番手以内につけた馬が高い確率で差してきます。
「上りの使える先行馬」に注目したいです。

「2戦2勝」勢いのある馬を買え

キャリア1戦【2-0-2-12】
キャリア2戦【4-5-4-37】
キャリア3戦【1-1-2-27】
キャリア4戦【2-1-1-17】
キャリア5戦【0-2-0-14】
GⅠ昇格後はキャリア2戦2勝してきた馬の連対率が最も高いです。

まとめ

ここまでまとめると
前走1番人気で1800m以上のレースを勝っている。
外国人騎手が乗る関西馬。前走上がりタイムが1位。
ノーザンF生産で、これまで2戦2勝。

この条件を満たす馬は高確率で好走する、と考えていいのではないでしょうか…?
と、さっそく確認してみましたが全ての条件を満たす馬は1頭もいませんでした。1番人気のシンエンペラーが好走条件に最も近いですが、前走上りは最速ではありませんでした。また、前走はモレイラ騎手の神騎乗あっての勝利。基本扱いの難しい馬なので、ムルザバエフ騎手も相当な手練れではありますが、どこまでコントロールできるかは未知数です。
昨年に続き、今年のホープフルSもなんとなく荒れそうな予感がしてきました…。

それでは、最後に注目している穴馬を挙げて今回のnoteを締めたいと思います。翌日には東京大賞典も控えてますので、今回は小ボリュームになりましたがお許しください。

今年も荒れるのか…?
推奨穴馬の紹介

過去9年のデータを拾ってきましたが、かっちり好走条件にハマる馬は現れず、さらにレガレイラ、ミスタージーティーなど個人的に狙いたいと思っていた馬は皆外枠という事態に…。そこで昨年同様荒れるだろうと踏んで、今回は抽選を突破してきた穴馬を中心に、推奨していきたいと思います…!
シンエンペラー、ゴンバデカーブースを購入予定の方は読まなくともよろしいかと思います(笑)

それから、(参考にする人は、まあ…いないとは思いますが)あくまで穴狙いなので、ほらみろ当たらなかったじゃないか!みたいなご指摘は御勘弁くださいませ。

🛬タリフライン

2歳牡馬・サトノダイヤモンド産駒 美浦・古賀厩舎
鞍上・Tマーカンド

デビュー戦は10月の府中、芝1800戦。出遅れ気味のスタートから不安を感じさせましたが、直線に入ると外目からスムーズに伸びていき、粘る先行馬に差し切り勝ちを収めました。1000m「1.02.0」のスローペースを後方待機から一気に撫で斬った切れ味はポテンシャルの高さを感じさせました。上り3Fのタイムは33.4秒とメンバー最速でした。
サトノダイヤモンド産駒の重賞勝ちはサトノグランツのGⅡ2勝まででGⅠ勝ちはいまだありません。どちらかというと大器晩成方の血統のような気もしますし、ストライドの大きい父に似た走りは府中向きかもしれません。ただ、現在産駒が38勝しているうち芝2000mで16勝をマークしており、中央全場の中では中山でトップの7勝を挙げています。
現状サトノダイヤモンド産駒にとってはベターな舞台といえるでしょう。
火曜の最終追いでは馬なりで目立った点はありませんでしたが、日曜には美浦Wを強めに攻めて81.9-12.0mの好時計をマークしており、順調に仕上がっているとみていいでしょう。
乗り替りで騎乗のマーカンド騎手は、今期重賞勝利がなく芝中距離も決して得意ではありませんが19勝のうち9勝を中山であげています。ここで待望の重賞制覇もなくはないと思います。
ちなみにですが、先日発表された今年の漢字一字は『税』。タリフラインとは輸入関税における分類表のこと。「税」…。
データ的に不安を感じるときは、オカルト・サイン予想に転じても面白いかもしれませんね…。

🚢アドミラルシップ

2歳牡馬・ゴールドシップ産駒 美浦・相沢厩舎
鞍上・Hドイル

ゴールドシップ産駒でありながら、先日の有馬記念に出走したライラック(父:オルフェーブル)を実姉に持つ良血統馬です。2頭の母親であるヴィーヴァブーケは目立った戦績を残せていませんでしたが、4代遡るとスカーレットブルーの名前があり、この牝馬はダイワメジャーやダイワスカーレットで有名な「スカーレット一族」の牝祖にあたります。
ステイヤーとしての持久力のある血筋にゴルシ産駒特有、ステイゴールド系のパワーが加わった配合は魅力的に思えます(血統については勉強中ですが)。
【サンデーS3×4】【ノーザンテースト5×4】のクロスはなかなか効果的で、近代日本競馬にしっかりと適合できる素質を持っているのではないでしょうか?11月京都での新馬戦は8頭と少頭数のなか、1000m「1.04.2」の超スロー展開。好位から直線に侵入し、ルメール騎乗の有力馬ヴィレムとの叩き合いを制しました。
姉であるライラック同様、瞬発力と持久力を兼ね備えた駿馬であり、急坂を2回擁する中山2000mは条件的には合うでしょう。
追切は先週水曜、美浦Wで馬なり87.4-11.1の猛時計。日曜に85.3-11.5強めの負荷をかけ上々の反応を見せています。
想定オッズは40~50倍前後で2桁人気は間違いなく、穴馬中の穴馬といえますが、前年のドゥラエレーデの件もあります。鞍上ドイル騎手の一発に託してみる価値は十分にあると思います。

🏝ウインマクシマム

2歳牡馬・キタサンブラック産駒 美浦・畠山厩舎
鞍上・松岡正海

先日の有馬記念で引退したウインマリリン。入れ替わるように今回出走する、ウインオーナー所有馬の中でもデビュー前から評価の高かった急先鋒が、このウインマクシマムです。8月の札幌新馬戦では1番人気も、出遅れから差し切れず2着。先月の東京1800mではスタートを決め好位につけるも、直線で差され2着、と惜しい競馬が続いていました。
ようやく今月に入っての中山2000mで、スタートを決めてからハナを取りそのまま逃げ切り勝ち。素質の高さを証明して見せました。
父牡馬キタサンブラックは言わずと知れた名馬であり、イクイノックス・ソールオリエンスといった産駒の活躍は記憶に新しいところ。
母コスモアクセスはJRA芝1200mで4勝、祖母コスモスカイラインも同じく芝1200で3勝を挙げている、まごうことなき短距離血統。
ここにキタサンブラックが配合され、先行脚質のスタミナ馬、といういかにも中山の2000mが向きそうな馬になりました。ここですでにキャリア4戦目を迎えますが、敗れた2走をみても相手なりに好走できるタイプだと思いますので、相手関係が一気に強化されるGⅠでも期待はできそうです。
また日曜の追切では美浦Wで89.3-11.0というかなりの好時計を出しており、今回出走する馬の中では、最も時計が良かった点にも注目したいです。

最後に

以上が今回のホープフルS考察noteとなります。
2歳馬戦はいわずもがな拾えるデータが少なく、また各馬いまだに底を見せていないケースが多いので、評価・予想共に難しいのですが、自分なりにまとめてみました。先にも述べたように好走データに一致する馬が少ないため、今回は結果的に穴馬の紹介となってしまいましたが…。
言いわけではないのですが、ホープフルS、あっさり人気馬決着する可能性も十分あると思いますのでご了承ください。他の予想や、Xを見る限りでは上位人気の馬を推している方が非常に多いようなので、ここは森タイツらしく個性的な推奨馬を挙げれたと、個人的には満足しています。

さてホープフル翌日は、大井競馬でのGⅠレース「東京大賞典」が控えています。これからnoteと指数の作成に入りますので、今回はここまでとさせていただきます。
では、また。




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