『ダニが刺したら穴2つは本当か?』(2021年6月刊行) もう少し丁寧に答えてみる.
質問1
「夏が近づくと室内には人間が落とすフケをエサとして,イエダニが増えてアレルギーの原因になり,ついには,イエダニが人間も刺すのですよね.」
回答
「いいえ.イエダニは,ネズミに寄生するダニで,昔の家はネズミが良く住み着いていました.このため,ネズミに寄生するイエダニが人間につくことがありました.しかし,現在では人家にネズミが生息していることはあまりないので,イエダニも人家から見つかることは,あまりなくなりました.
人間のフケや,はがれ落ちた皮膚を食べるのはヒョウヒダニ類(チリダニ類ともいう)の仲間です.ヒョウヒダニ類はアレルギーの原因(アレルゲン)になりますが,人間を刺すような口器はもっていません.ヒョウヒダニ類などが,増えていくと,それを食べるツメダニ類が増えて,このツメダニ類が人間を間違えて刺すことになります.」
質問2
こう言った質問もくる「かゆい虫刺されで,2つ穴の刺し口があるとき、原因はダニですよね?」
回答
「確かに以前「刺し口2つ穴はツメダニ類の仕業」と専門家のあいだで言われたことはあります.
実際,ツメダニ類は刺し口を,複数個残すことも知られています。その理由は刺し直しとみられます。ただし、誰もまだその刺し直すダニの行動を実際に見てはいません。長い時間かけて観察した研究者もいますが、結局、その行動を観察できなかったといいます。
そうなると、家庭での刺し口2つ以上の虫刺されは、ツメダニ類以外の犯人の可能性も考えなければならないようです。
昆虫であるトコジラミも口器の刺し直しをするために、複数の刺し口がのこることがあるといいます。ツメダニだけが、刺し口2つ穴というわけではないようです。
家庭内で起きる虫刺されの主な犯人は、ハチ、アリ、サシガメ、カ、ブユ、ヌカカ、ノミ、トコジラミ、カミキリモドキ、アタマジラミ、ケジラミなどの昆虫類、ムカデ、サソリ、イエダニ、ヒゼンダニ、シラミダニなどの昆虫以外の節足動物も考慮しなければなりません.
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