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マーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデス②:奇妙なカップルの誕生と、”栄光”の記録

レイモンド・フェルナンデス


( 1914~1951 )

 

マーサ・ベック

( 1920~1951 )

 

二人の出会い


最初にマーサを見たとき、レイモンドはもちろん驚いたでしょう。しかし、外見なんて関係ありません。お金さえ持ってればいいんですから。

最初にレイモンドを見たとき、もちろんマーサは喜んだでしょう。誠実さ漂うその姿が、写真と寸分違わず目の前に現れたんですから。

 

フロリダ州ペンサコーラで出会ったマーサは、彼女の家へレイモンドを連れてゆき娘と息子をレイモンドに紹介します。

 

実はマーサ、子供がいました。


フロリダ生まれのマーサは10代の頃に兄にレイプされ、母にそのことを話した際に「お前のせいだ」と理不尽に責められた後に家を飛び出しました。

看護を学んだ後にも、外見のせいで仕事を見つけるのに苦労したため、最初は葬儀屋の助手として働くことにします。その後はカリフォルニアの陸軍病院で働きますが、自身の劣等感から簡単に男になびく奔放な性生活により未婚のまま一人目の子供を妊娠。

妊娠中にフロリダへ戻り、周囲の人には「夫は戦争で死んだ」と言いながら娘を出産。その後すぐにバス運転手との間に子供を授かりますが、結婚後6ヶ月で離婚。

シングルマザーとして二人の子供を育てますが、心はロマンスを求めて映画や小説にご執心だったところに一通のラブレターがやってきたわけです。

 

子供たちと四人で夕食を取り、子供が寝静まった後に二人は愛し合いました。

そんな数日を過ごした後、マーサはレイモンドへ不朽の愛を誓い「フロリダへ来て欲しい」とレイモンドに伝えました。しかし、レイモンドは「事業があるからニューヨークへ戻らないといけない」と告げます。

レイモンドは、まだ結婚詐欺師の仕事を続ける気だったようです。

マーサがこちらに来れるようにお金を送るよ。と告げてニューヨークへ戻るレイモンドでしたが、マーサはコレを一種の”プロポーズ”と受け止めます。

周囲に再婚する予定だと話し、幸福感に包まれていました。

 

しかし、届いた手紙は

 

「誤解だ。結婚するつもりはない」

 

強い消失感に蝕まれた彼女は、自殺を企てました。しかし、レイモンドにその旨を伝えるとニューヨークへ遊びに来いと言ってくれたため、急遽仕事を二週間休みレイモンドのもとへ駆け足で向かいました。

 

最高の休日を過ごした後、フロリダに戻った彼女は仕事を失っていました。

一切の説明無く病院から解雇されたことにより、彼女のナニかが吹っ切れたのでしょう。

最後の給料を「マーサ・フェルナンデス」として受け取り、二人の子供に服を着せてニューヨーク行きのバスに乗りました。

 

1948年1月18日、詐欺師と親子の奇妙な生活が始まります。

 

共同生活

マーサは献身的にレイモンドに尽くしました。

レイモンドにとっては詐欺にとっての大きな障害であることに違いありませんが、食事を作り家を掃除し彼のあらゆるニーズに答えます。

 

最初は戸惑っていたレイモンドも、ここに来てついに決心します。


 

コレまで書いたロンリーハート宛の手紙を全て持ち出し

自身のやっている犯罪行為や既婚者であることについて、全てマーサに打ち明けたんです。

 

マーサは怒り狂い・・・って言いたかったんですけど

その女性達の中で「自分がトップにいる」という結果に気付き、受け入れたんです。

 

相談の結果、子供を”救世軍”に預けて二人で次の犯行を計画し始めました。

 

 

犯行


二人はペンシルベニアへ向かいます。


既にレイモンドのターゲットになっていたエスター・ヘンネという女性と会うためです。

マーサとの関係は兄妹だと偽り、ヘンネとレイモンドは2月28日に短い挙式を行い夫婦となります。

しかし、ヘンネはのちに

「ニューヨークの家で3人で生活しましたが、彼が保険と年金の受取人に彼を指定させようとしてきました。私が拒むと彼は激しく舌打ちしたんです。」

と述べています。

結局ヘンネはレイモンドに車とお金を奪われて、家を去りました。

 


 

次の犠牲者はマートル・ヤング。1948年8月14日に二人は結婚しました。

しかしマーサは、絶対にレイモンドと寝させないように

マートルと同じベッドで寝続けました。

結局二人はマートルに大量の睡眠薬を飲ませ、マートルの出身地”アーカンソー”行きのバスに乗せました。警察に引きずりおろされるまで、彼女はバスで眠りこけていたようです。

4000ドルを奪われた彼女は翌日、リトルロック病院で亡くなりました。

 

その後も二人は複数の町で犯行を繰り返し、いくばくかのお金を奪うことに成功します。

しかしどれも長期的な資金源にはなりえず、二人の手持ちはどんどんさびしくなっていきました。

 

そこで見つかった次の犠牲者が66歳のジャネット・フェイでした。

 

ジャネット・フェイ

彼女は繁華街に広いアパートを借りているほどお金持ち。毎週日曜には教会に行く献身的なカトリック教徒でした。

レイモンドは「チャールズ・マーティン」という偽名を使い、1948年12月30日にアルバニーへ到着。翌日には一人で花束を持ってジャネットの家を訪れました。

宗教問題について熱く語り合うほど親しくなった彼は、数日後にマーサを連れてきて兄妹だと紹介します。ジャネットは彼らを自宅に泊め、食事し、会話し、散歩し、信頼感は急上昇します。

 

のちにレイモンドが結婚を申し出た際もジャネットは快諾しました。三人はアルバニーを去りロングアイランドで一緒に過ごすことにし、ジャネットはアルバニー銀行の口座に入っていた6,000ドル以上のお金を一掃して引っ越しました。

 

アパートに着き三人で食事をした後、レイモンドは眠りにつきました。

マーサとジャネットは別々に過ごしていましたが、のちにマーサがレイモンドの部屋に行った時に

ジャネットが裸でレイモンドと腕を絡ませて寝ている姿を見てしまいました。

 

マーサはその姿を見て大発狂。

叫び狂ったところから記憶はなく、次に覚えているのはレイモンドに揺さぶられていたところでした。

 

頭から大量に血を流し、足元に横たわるジャネット。

マーサの手に握られたハンマー。

 

答えは明らかでした。

 

つづく

サイコパスの生きざまは面白い!!! 下手なドラマや映画ではない真実の物語を、現存するありとあらゆる情報をもとに1つのストーリーに。 生来の快楽依存から外傷による発狂まで、"裏"の日常をお届けします。