2024年6月の読了本感想

◆6月読了本
ということで、先月分から読み終わった本の感想をまとめてみようと思います。一応、読了都度X(旧Twitter)には上げてるんですがそっちは140文字(マイナスハッシュタグ分)しかないので書ききれないところがあって...。さていつまで続くか。

・頭木弘樹編『絶望図書館 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語』(ちくま文庫)
同じ作者の『絶望読書』という本を4月に読んだのだけど、これはそれの姉妹編ともいうべき本。『絶望読書』の後半では絶望している時におすすめの本が紹介されているのだが、ここでは紹介ではなまっちょろいということで、作品そのものを収録したアンソロジーとなっている。
中身の方は短めの短編をサブタイトル通り12篇収録(マンガもある)。どれも一読忘れがたい印象を残す作品ばかりだが、個人的に一番印象に残ったのは冒頭の三田村信行「おとうさんがいっぱい」という作。
これはタイトル通りのストーリーなんだけど、なんか悪夢を見ているようで小さい頃に読んだらトラウマになりそうだと思ったのだけれど、調べてみると三田村信行という人は児童文学を書いている人らしく(!)、この「おとうさんがいっぱい」を収録した本は児童文学界隈では「トラウマ本」と認定されているらしい。
それはともかく、絶望云々は置いておいて単なるアンソロジーとしても非常に面白い、すぐれたものになっているのでおすすめ。

・中村圭志『宗教図像学入門 十字架、神殿から仏像、怪獣まで』(中公新書)
タイトルが面白そうなので買った本。「宗教図像学」とは宗教で使われているいろんな図像(サブタイトル通り「十字架、神殿から仏像、怪獣まで」。神殿なんかはもはや「図像」じゃなくて「建築」だが。後「怪獣」はドラゴンとかレヴァイアサンと言った「獣ならざる獣」のことでゴジラとかラドンは出てきません)について解説したもの。
あくまで「図像」がメインなので章立ても図像の種類ごとになっていて、宗教ごとではない。しかしそれが図らずも各宗教を比べる形になっていて、各宗教の成立ちや背景や性質が判り、面白い。また図版が沢山載っているので目で見て判りやすい。
あと、巻末に付録として主な宗教の成立ちや性質をまとめたガイドが載せてあるので、そっちを先に読んだほうが良さげ。


・レオ・ブルース作 小林晋訳『ビーフ巡査部長のための事件』(扶桑社ミステリー)
クラシック・ミステリ作家、レオ・ブルース2冊目にして初の長編。第1章は名探偵であるビーフ巡査部長(すでに警察は辞めて私立探偵になっているのだけどなぜか「巡査部長」と呼ばれている)とワトソン役の人のところへ、捜査の依頼が来るというオーソドックスなものなのだが、第2章でいきなり犯人と覚しき人物(しかも名前も明かしてある)による殺人計画日記らしきものが載せられている。
倒叙ものか?と思ったがそんな単純な訳はなく、その後は意外な展開に。ラストではあっと驚く真相が明かされる。「意外な犯人」にしてやられた感がある。
この人の本は後1冊在庫があるのだけど、その後の入手がなかなか難しい。基本品切れで、Amazonのマケプレで出品はされているのだけど結構いい値段がする。扶桑社ミステリーはなかなか良い本を出してくれるのだけどすぐに品切れになっておまけに再版もしてくれないので困る。


・E・H・カー著 清水幾太郎訳『歴史とは何か』(岩波新書)
なんだか大上段に構えたタイトルだが、中身の方もタイトル通りで、「歴史」とはどういう性質のものなのか、「歴史」を研究する上ではどういう立場に立たねばならないか、を古今東西の歴史家・思想家の著作からの記述を(主に)批評しながら説明していく本。
なかなかに難しい。ただ、著者の立場というか、立ち位置は定まっていてブレないのでその点では納得は出来る。しかし講演会で発表された内容の文字起こしなので、どうしても説明が冗長で回りくどいところがある。さらに翻訳がかなり古く、判りにくい文章。新約の単行本も出ているのでそちらの方がおすすめかも知れない。

◆輪読会用
・三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫)
・北杜夫『夜と霧の隅で』(新潮文庫)
現在も輪読中。

◆雑誌

『望星 2024年7月号 特集:「積読」を考える』(東海教育研究所)
Xで流れてきた投稿で初めてその存在を知った雑誌だが、特集のタイトルを見て「これは買わねば!」ということで即Amazonでポチリ。普段雑誌を買っても(最近は殆ど買わないが)、面白そうな記事だけ読んで後は読み残してしまうことが多いのだがこれはほぼ全部読んだ。なかなか面白かった。
特集はなかなか考えさせられる内容。古書店の店長をしている人の寄稿は、「積読」の最終解決法は古書店の店長になれば良い、というもの。つまり積読も古書店の在庫としてしまうというもので、案外そういう解決法も良いのかなと思えた。実現は出来ませんけど。
好きな人である頭木弘樹の寄稿も面白かった。660円は安かったが、Amazonでは今日現在品切れ中。早い目に買ってよかった。


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