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フリーランスの業務委託契約書、作成してますか?口約束には危険がいっぱい!

フリーランスとして仕事を受注するとき、契約書を作成しない方が多数おられます。

「取引先から求められたら署名押印して返送するけれど、自分からは求めたことがない」という方も多いでしょう。

しかし契約書を作成しないで仕事をすると非常に高いリスクが発生してしまいます。

この記事では契約書を作成しないリスク、作成すべき理由や簡単に作成する方法をお伝えします。

1.契約書がなくても契約は有効

大前提として、契約書がなくても契約自体は有効です。

フリーランスがクライアントと締結する契約は、通常「業務委託契約」です。業務の内容はフリーランスの仕事内容によって変わります。

• サイト構築
• アプリ、システム開発
• ナレーション
• 動画編集
• イラスト作成
• ライティング
• SEO対策

発注者が上記のような業務をフリーランスへ委託し、フリーランスが仕事を遂行し、発注者が報酬を払う、というのが契約内容の骨子です。

この種の契約については、法律上書面契約書や電子契約データの作成を求められていません。口約束であっても、互いの意思が合致した時点で契約が成立します。

契約書がないからといって契約は無効にはなりません。

2.契約書を作成しないリスク

口約束でも契約が成立しますが、契約書がないとさまざまなリスクが発生します。
以下で契約書を作成しなかったためによく発生するトラブル事例をみてみましょう。

2-1.代金を払ってもらえない

契約書があれば、代金支払時期や支払い方法が明確になります。相手としても約束通り払う可能性が高くなるでしょう。

一方、契約書を作成しない場合、相手がいつまでも払ってくれないケースが多々あります。
支払いを督促しても「待ってほしい」などと言われて引き延ばされ、数か月以上が経過してしまう事例も珍しくありません。

2-2.検収が終わらない

イラストやシステムなどの納品をすると、発注者は検収を行います。
契約書に検収日数を明記していれば、検収に異常に時間がかかるのを避けられます。

しかし契約書がなかったら、検収にかかる日数を制限できません。
クライアントがいつまでも「確認中です」と言って報酬を払わない可能性があります。
検収日数を明らかにするためにも、契約書は必ず作成しましょう。

2-3.著作権の所在があいまいで勝手に納品物を使われる

契約書を作成する場合、「著作権の譲渡」や「著作権の移転時期」も定めます。
通常は納品して検収が完了し、代金が支払われた時点で著作権を移転するでしょう。
場合によっては著作権をフリーランス側へ残すケースもあります。

契約書がなかったら、著作権が移転するのか、いつの時点で移転するのかが明らかになりません。
納品後、報酬が払われていないのにクライアントが勝手に納品物を掲載したり改変して使ったりする可能性もあります。

2-4.何度も修正を要求される

フリーランスが制作物を納品しても、一回でOKが出るとは限りません。修正を要求されるケースがよくあります。
契約書を作成すれば、修正回数の制限ができます。「一定回数を超える場合には追加費用が発生する」と定めておけば、無制限に理不尽な修正を要求されるリスクを避けられるでしょう。

しかし契約書がなかったら、クライアント側から何度でも修正を要求される可能性があります。
対応しなければいつまでも報酬を払ってもらえず、フリーランス側に過大な負担がかかるケースも少なくありません。

2-5.追加で条件を出される

契約書には「発注する業務の内容」を定めるので、契約書に書かれた以上の仕事を求められたら「そもそも契約内容に入っていない」と主張して断れます。

しかし契約書がなかったら、発注内容があいまいになってしまうでしょう。クライアントが五月雨的に追加条件を提示して、フリーランス側の仕事を増やされてしまう可能性があります。

2-6.連絡が取れなくなってしまう

契約書を作成すると、クライアントの住所(所在地)や氏名(名称)が明らかになります。
相手と連絡を取れなくなっても、内容証明郵便を送ったり、場合によっては裁判を起こしたりして責任を追求できるでしょう。

契約書がないと、相手が音信不通になったときに連絡先がわからず、責任追及の方法がなくなってしまう可能性があります。
相手の素性を把握しておくためにも、契約書を作成しておきましょう。

3.契約書を作成するメリット

契約書を作成すると、以下のようなメリットがあります。

3-1.相手が報酬を払わないときに根拠を持って請求できる

クライアントによっては、さまざまな理由で報酬を払わないケースがあるものです。
「修正に応じてくれていない」
「まだ検収が終わっていない」
無視される場合もあります。

契約書ではっきり検収日数や支払時期を定めていれば、上記のような言い訳は通用しません。
報酬を払ってくれないときに根拠を持って請求できるので払ってもらいやすいメリットがあります。

3-2.訴訟の証拠にできる

相手がどうしても報酬を払わない場合には、訴訟(裁判)を起こさねばならない場合もあります。
しかし口約束では証拠が残らないので、裁判で不利になってしまう可能性が高いでしょう。裁判は書面・証拠主義であり、証拠がないことは認めてもらえません。

契約書があれば、相手の契約違反を立証できます。
裁判で勝てる可能性が高くなるのも大きなメリットです。

3-3.契約に反する要求に応える必要がない

契約書できちんと委託する仕事の内容を定めていたら、当初の契約に定められていない修正や後付けのレギュレーション、要求内容などに従う必要がありません。

相手が大企業でこちらが一個人であっても、契約書1通あるおかげで法的な権利を主張できます。
理不尽な要求に応えずに報酬を請求できるのも大きなメリットといえるでしょう。

4.契約書に必ず書き込むべきこと

契約書には、以下のような内容を書き込みましょう。

• 委託する仕事の内容
• 検収期間
• 修正回数や内容について
• 追加費用が発生する場合
• 著作権が移転するのか、移転する場合には移転時期
• 報酬支払時期や方法
• 秘密保持
• 契約を解除できる条件
• 損害賠償について

なお「秘密保持」については、通常クライアント側から要求されるケースが多数です。

契約書の必要事項を書き入れたら、日付を入れてお互いが署名押印(記名捺印)し、2通作成して双方が1通ずつ所持しましょう。契約が終了するまで大切に保管してください。

5.契約書を簡単に作成する方法

フリーランスの方の場合、契約書の作成方法がわからない方もおられるでしょう。
その場合には、簡単に利用できるひな形を利用するのがおすすめです。

イラスト、システムやソフトの開発、ライティングなど、一般的な業務委託契約についてはひな形を使えばだいたいの形が整います。

あとは仕事の内容や検収期間、修正や報酬額、支払い時期など個別に定めるべき事項を書き換えれば、そのまま適用しても大きな問題は生じないでしょう。

フリーランスの簡単な業務委託契約であれば、わざわざ弁護士などの専門家へ契約書の作成を依頼する必要はないケースが多数です。

日頃から業務委託契約書のひな形を自分で用意しておいて、仕事の受注を受けるときに相手に提示してみてください。相手も了承したら、お互いが署名捺印(記名押印)して契約書を作成できます。

郵送によるやり取りが負担になる場合、電子契約も可能です。電子契約であってもきちんと電子署名を付せば法的な効力も認められます。

契約書を作成しないで口約束のままにすると多大なリスクが発生します。これまで契約書を作成していなかった方も、これからは業務委託契約書を作成してみてください。

著者紹介
福谷陽子 ライター 元弁護士
弁護士時代は契約書の作成、レビューや中小企業へのコンプライアンスに関するアドバイス、労務管理など企業法務に積極的に取り組んでいた。現在は法律知識やスキルを活かして各種メディアや法律事務所の依頼を受けて専門記事の執筆・監修に精力的に取り組んでいる。

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