謙遜

　よく目上の人から美辞麗句を連ねられたような世辞を言われることがあるけど、こちらとしてはなんとも反応に困る。主に若さについて「いや～まだ健康に気を遣わなくていいね～」とか「食生活に関して節制しなくていいっしょ？」みたいなことを言われるのだが、個人的にそれなりに健康に気を遣ってはいるしあんまり体に良くなさそうなものは極力控えている。
　そこで「いや、そんなことないですよ」とか言ってもいいのだが、大抵「またまた～」と流されるし、ほとんどの場合は「俺なんかあれだよ？この間体脂肪率計測したら～」というように自身の老化不幸自慢が始まる。難儀なものだ。そういった場合はなんと言ってあしらえばいいのだろうと思い困ってしまうのである。基本目上の人なので「でもそれってアンチエイジング的な努力を怠ったという自己の責任ですよね？」と詰問するのはご法度だし、どうしても「ｱﾊﾊ……」と苦笑いせざるを得ない。いっそのこと「若いからって甘えてるとすぐ地獄を見るからな、俺のような超完全健康体を目指して生きろよ！」とでも言ってくれた方が「はい、頑張ります！」となって楽なのであるが。
　いろいろ考えてみた結果、そういうケースにおいては「ご自愛ください」と言い放つのが一番無難なような気がする。相手のそういう不摂生な生活習慣を肯定し、体を労わるという意がふんだんに込められている。今後から積極的に使っていこうと思う。現実で「ご自愛ください」なんて言う人今まで一度も見たことないけど。

おわり