ヒガンバナ《心情㉜》
ピルケースに収まるほどの僕がここにある
秋の香り
まだ金木犀の香りはしない
どこからの線香の香り?
雨の前の雲の切れ目から、秋風と虫の声と一緒に攫っていって
孤独が電車の音に轢かれた
睫毛にぷくりと乗る雫
瞬いて頬に滑ったのはいつ?
ユニセックスだなんて言葉で形取られる私
ユニセックスだなんて言葉に寄り添ってネックレスと香水をつけた私
言葉を全て捨てたくなった私
救急車のサイレンに乗せられたのは私の心のレプリカ
泣き喚きたくなった
髪も葉も心も揺らす風に殺されたい
死にたい時
空っぽの時
愛されたい時
諦めた時
いつも1人で立っていなければならないのは、そう生きてきてしまったのだろうか
そう生きなければいけないのだろうか
いつかそう願ったのだろうか
願ったことを忘れないように大事にしまって何重にも鍵をかけたらどれがどれの鍵か分からなくなってしまったのだろうか
それであればまだいい
そうであってくれればきっといい
もう何も見せずに、感じさせず、選択させず、考えさせず、そうやって私を覆って
私は気が付かずに死ぬ
脳が薬に浸かる
薬の中に思考が溶けだす
希死念慮は漂白されない
真っ白になった、或いは透明になった希死念慮は、どんなだろうか