「学習のお悩み解決!グループワーク」の効果(学生目線)
上掲した図の文字の部分は、Schun&Zimmerman(1998)の「自己調整学習サイクル」の図です。脇に添えてあるイラストは、私の資格試験学習法のワークショップの説明です。時々、個人ワークに加えて、グループワークを行います。その主目的は「メタ認知力の強化」にあるのですが(別の機会に書きたいです)、その意図とは別に、このグループワークは、学生にとても好評です。
一番は「孤独感からの解放」にあるようです。
そのことについて、今日は書いてみたいと思います。
グループワークの一つに「お悩み解決ワーク」と銘打ったものがあります。
学生からの学習上の悩みをたくさん出してもらい、それをまとめて「一般化した悩み」の言葉に変え、それについて皆から解決のアドバイスを出すというグループワークです。
資格試験の学習というのは、非常に個人的なものなので、「悩みを出す」とか「それに意見を出す」などは「余計なお世話」「うざい」かなぁ、と企画前は思っていたのですが、ワークでは「メタ認知力が必要!」を連呼して、「だから仕方ないからやってみてね」というこちらのスタンスを理由にして取り組んでもらいます。他人の(一般化された)悩みになら意見が言えるだろうから、悩みを本当に解決しなくてもいいから、無責任でもいいからアイデアをどんどん出してみよう、というものです。
はじめ、自分のアイデアに集中するために、個人個人で付箋にアイデアを書き、その後、説明しながら皆にシェアをし、出し尽くしたら、それについて自由に話をする、という流れです。
冷めた姿勢の学生が大半だったらどうしようかなぁ、と心配なのですが、大概の学生は、前のめりになって熱心に話します。人によっては、どんどん表情が明るくなっていくのが印象的です。今の学生はアクティブラーニングにも慣れているので、上手に会話を紡いでくれます。
学生の感想などを後で見たり聞いたりすると、「学習方法について人と話したことがなかったので新鮮」「みんなも同じようなことで悩んでいるのだと思って、ほっとした」「みんなも悩みながら頑張っているのだと知れて、自分も頑張りたいと思った」「自分と似たような考え、違う考えが色々知れて面白かった」などの感想がたくさん出てきます。
私の「主目的」以外の、このワークの意図としては、「学習について、話し合える雰囲気を作りたい」というのもあります。人によっては、「社会的学習方略」という他者との関わりを利用した学習方法が有効なことがあり、そこにいたるまでの障壁を低くしておく、という意図です。
ただ、こちらとしては「しかけ」を提供しているだけで、その効果がどれだけあるのかの評価基準はありません。このワークが、例えばトリガーとなって、その後の学生の行動にうまく機能しているかどうかは、学生の様子からなんとなくわかる、かもしれない!程度です。
昨年度合格した学生(私のワークを受けた学年)が、「前の学年の先輩は、試験会場で、同じ大学の仲間に会っても「ふん」という感じだったと聞いていたが、私たちの学年は、会場でみんな笑顔で迎えてくれて、一緒に頑張ろう、という雰囲気で、リラックスして試験を受けることができた」と報告してくれていました。もしかしたら、こういうところにも、このグループワークをやる意味が潜在しているのかもしれないなぁ、などと、勝手に思っていたのでした。
こういう内容について、人によっては「甘い!」と思う向きもあるかも知れません。私が関わっている大学は、いわゆる世間一般に言う「Fランク」の大学で、学生自身に学習体験および学習成功体験が少ないという特徴があります。ご両親が大学を出ておらず、大学の雰囲気がわからないまま大学に入ったという学生も多くいます。また「金銭的に余裕のない」学生も多く、サークル活動や教職員による実践ワークなどでの交流はあるものの、ひとりバイトに奮闘している学生も多い。学習に関して「孤独」と「どうしたらいいかわからない」不安感が強いという傾向があるように思います。
「甘い」のかもしれませんが、大学に入った意味を、このワークを通じて、さらに一つでも多く掴み取ってほしいと願っているので、学びの中での社会的関係がどう学習に効果をもたらすのか、学生自身が経験を通じて掴んでもらえたらいいなぁ、と思うのでした。