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ニューロダイバーシティ(多様性)を知る一助としての「同時・継次」

大学で行っている”学習支援”のワークショップの第一回目には、必ず認知処理傾向としての「同時処理と継次処理」の話をすることにしています。
これは学生の記憶にも強く残っているようで、WS最終日に全体を通しての感想を書いてもらっても、この点に言及する学生がとても多いのです。
それくらい、インパクトを与える話なのかな、と思っています。

ワークを始める前に、あくまで、学習方法を考えるときの一つのヒントであり、絶対的なものでないということは、断りを入れます。
また、これからする設問も、私が勝手に考えたものであり、不正確かもしれないが、遊びのつもりでやってみてください、とお願いしています。

あらかじめ、ピンクと水色の付箋を各学生に配布しておき、以下の質問をしてみます。

ここで、自分に当てはまる方の色の付箋を高く掲げてもらいます。
そして「周りを見回して、それぞれの色がどれくらいあるか見てみてください」と言います。
毎年、今年はどうだろう・・・と心配になるのですが、不思議に大体半数ずつになります。
続けて次の2問もやってみます。

これはあまりよくない質問。なぜかというと、うちの学生は「英単語を覚える」という学習を積極的に行ってなかった学生も多いからです。また、同時継次の設問としてもあまり適切でない気がしているのですが、一応聞いてみます。
すると、予想通りですが、比較的ピンクが多くなります。語源を調べたりなどしたことがない学生が多いからだと思われます。しかし「何回書いても覚えられない!」という文言に強く反応する学生もいるので、ピンク:水色が2:1くらいになります。

これまた「どうだろう・・・?」と疑問の湧く質問。
しかし、これも1:1くらいになるのです。

そして、最後に「3問全部ピンクだった人?」「3問全部水色だった人?」と聞きます。全部ピンクが参加者の2〜3割。全部水色は1.5〜2.5割という感じになるのが毎年同じです。

周りを見回して、ピンクと水色の付箋の比率がどんな感じか見てもらうのは、「いろんな人(タイプ)がいる」「正解は一つじゃない」「実は多数派はいない」というようなことを、自分ごととして感じてもらうためです。
「え?そうなの?」と、付箋の比率を見て感じてもらえれば、成功です。
自分自身も、「多様性」の中の一部なんだ、と・・・そこまでこのワークでわかるのは難しいかもしれませんが、そのきっかけにして欲しくてやっています。
そして、それでいいんだ。色々あって(多様性があって)良いし、自分もこれで良いのだと思って欲しいのです。
その点で、継次傾向があるか、同時傾向があるかは関係ないのですが、
その感覚を引き出しやすいのかな・・・と思っています。
そして、毎年この結果は興味深い。

そのあと継次処理と同時処理の「傾向」としてのあり方を説明します。

これも、あくまで「傾向」の話だと念を押します。
学習方法に限った話をするので、継次処理様式と同時処理様式の何もかもは書いていません。

さらに説明は続くのですが、
大体、これくらいの話をしたところで、学生は「自分は、こっちのタイプに近い!」と自覚する人は自覚します。
学校教育が継次的に与えられることが多いので、継次的なやり方に慣れている人が多いはずなのですが、それなのに「同時傾向があるな」と自覚した人は、かなりの確率で同時傾向であろう、と考えています。

しかし、これはただ、一つの傾向を見ただけであり、学ぶ対象や、与えられた環境に応じて、それぞれ使い分けることができるし、大概の人は、両方の特徴があること。たまに、何をしてもその傾向が強く現れるタイプもいる、などの話をして、あまりこの話に引きずられすぎないように、と配慮するようにしています(かなりインパクトがあるようなので)。

大概「同時処理傾向」のある人は、嬉しそうにしています。
「自分のやり方で良かったんだ!」と感想コメントに書いてくる学生は、同時処理傾向があると自分で判断した学生です。
同時処理傾向のある人は、それまでの経験の中で疎外感を持っていることがあるように思います。ここで自分のやり方が認められたと思って、嬉しくなるようです。これは、修士課程で研究していたときのインタビューなどでも見られる傾向でした。

こんな話を前提として、その後のワークショップや個別相談につながっていくのですが、
その後の約1年間のうちの個別相談で、この話に言及する学生の多いこと多いこと。
ということを、また別の機会に書いていきます。

*それから、同時・継次を知るための有名な質問として「道を教えてもらうときに、地図を示して云々・・・口頭で順序立てて云々・・・」というのがあるのですが、修士課程の時に、これを何人かに試してみると、なかなか興味深い反応があり、一概に同時・継次をさっと判断するのに良い質問ではないかもしれない・・・と考えているので、これは使っていません。
それについても、いつか書きたいです。

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