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(コラム)航空整備士はホワイト?ブラック?

就活や転職を考える際に、選ぶ基準は人によって千差万別ですが、その業界や仕事のホワイト・ブラック度は誰もが気になるところだと思います。

今回の記事ではコラムとして航空整備士という働き方の実態について、なるべく中立な視点で説明してみます。
ホワイトブラック度合いは、みなさんそれぞれの基準と照らし合わせて判断してもらえればと思います。
(日系の航空会社を基準にします)


まず賃金

賃金の考え方は以下の合計です。
・基本給
・資格手当
・土日祝日手当
・夜勤手当(ある場合)
・福利厚生(家賃補助など)
・残業代

基本給は新卒で20〜22万です。(23年8月現在)
これは大学卒か高専卒かといったような、入社時の年齢によって上下します。
会社の給与体系も年齢(年次)によって上昇していくように定められている場合がほとんどです。

この辺りは日本の企業文化ともいえますね。

参考までに2023年新卒の初任給の平均は、大学卒が21万8,324円です。

中央値を取ると少し低いですね。


資格手当は「一等航空運航整備士」もしくは「一等航空整備士」の国家資格を取得し、業務に行使できると付与されます。
「一等航空」の方が「一等航空運航」の上位グレードの資格で、仕事のできる範囲が広く、手当も上がります。
(一等航空運航整備士は取得しないエアラインもあります。)


手当の金額はエアラインによってさまざまで、月に数千円〜数万円とかなりの幅があります。(詳しくは企業の口コミサイトを活用してご確認ください)

手当と基本給については企業によって様々な考え方があります。

(A社)
基本給は少ないけど、資格手当は多いから、頑張って早く資格とってね。

(B社)
基本給や福利厚生は充実させるけど、資格手当は弾まないよ。


そして資格取得には2、3年はかかります。
5年目くらいで資格を取得できたとして、とてもざっくり合計すると
基本給:24万
資格手当:3万
残業・夜勤:3万
+福利厚生
合計約30万

のようなイメージです。

会社によってかなり異なる部分ですので、イメージとしてお考えください。

資格を取得するまでの期間は、資格手当が加算されませんので、少ないと感じる方も多いかもしれません。


一方外国のエアライン(一般に外航エアラインとか外航と呼ばれます)は、上記で説明した限りではありません。
年齢(年次)が基本給の全てではなく、これまでの経験や資格で年収が決まります。

また資格を持っていて、ある程度知識と経験のある即戦力を中途採用するので、入社時点での年収は、日系企業より高くなることがほとんどです。


勤務時間や夜勤の有無は?

日勤のみの会社、夜勤込みの会社の両方が存在します。

日勤のみ形態をとっているのは例えば、
外国航空機の整備委託をしている会社です。

これはどういうことかというと、
業務は「外国航空機のライセンサーの指示に従い、整備アシスト」で、
その飛行機の運航時間は、日本着10:00、発15:00
夜に整備する飛行機がいないので、日本で飛行機が壊れて飛べなくなったということが起きない限り、夜勤はなさそうですよね。

24時間空港でないところに勤務地があります。

逆に夜勤のあるのは
24時間空港であったり、夜中は運用しない空港であっても、自社で格納庫を持っていたり、整備できる環境を持っているエアラインは夜勤が発生します。
夜に空港にステイしている飛行機を長時間整備したり、修理しようとします。

夜勤の形態についてです。
夜に出社、朝に帰宅というガチガチの夜勤とまでは行かなくとも、
昼に出社、夜12時に終業のようなシフト勤務を取り入れている会社もあります。
また連続夜勤(2日以上続けて夜勤)の体系も存在します。

メリットは夜勤手当が付加されることです。
どのくらい割り増しされるかは個々の会社によりますが、
通常の+25%と最低額が決められています。

デメリットは、
・年齢的に定年まで夜勤をするのは、健康上様々な害がある
・家族との時間を合わせにくい
のようなことが挙げられます。


残業は?

エアラインの人員の状況(会社や基地)と、航空業の需要によりかなり波があります

理由としては
・航空需要は急に高まったり、低くなったりする
・その際、簡単に人員を補充できない(スキルを持った人が少ない)
・便数や路線を変更することもよくあるので、出発、到着空港の人員数も頻繁に増減する

コロナ前はある程度需要と供給のバランスが取れており、残業時間も目立つほど多くありませんでした。

コロナ期間は、飛行機が飛ぶ回数や飛行時間が少なくなり、不具合での整備の頻度が減りましたが、保存整備に人員を割かれ人員不足感のあるエアラインもありました。

関係者の話によっては、最近では人手不足に加えて航空需要増もあり、残業は増えているとも聞きます。

慢性的に人員不足感は否めないかも知れません。


(参考)
残業手当は
平日なら基本給の25%
休日なら基本給の35%が
最低基準としてどの会社も保証されています。


資格の取得は大変?

大型旅客機を取り扱う場合、エアラインに入社後、国家資格である一等(運航)航空整備士の資格を取得することになります。

会社内で一定以上の業務をするために必要となり、会社としても取得を進めることが多いです。

国家資格であるため、数年の経験と勉強を必要とします。
勉強時間も少なくとも2000時間くらいは必要だと思います。
(参考までに、弁護士で3000時間程度のようです)

そしてエアラインによって、資格取得のための勉強時間の取り扱いが異なります。

実際にありそうな例を挙げてみます。

(A社)
会社として資格を持った人材が必要だから、資格取得のための勉強時間は業務として扱います。

(B社)
資格取得はあくまで自己啓発で、取得して手当もらえて得するのは社員です。勤務前後のプライベートの時間を使って勉強してください。

会社のスタンスによってかなり差がありますよね。

どちらの言い分も正しいように思えますが、労働法を参考にすると
使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間にあたる」とされています。

もし会社として資格取得を強制(指示)するなら、A社の言い分が正しくなりそうです。
逆に、会社の希望に関わらず、社員が自ら資格取得する場合はB社の言い分が正しいです。

エアラインの中には、資格取得を強制させているにも関わらず、B社のように勤務の合間に勉強させるケースもあります。
もしくは強制や指示はされてないけど、勉強しないと先輩から白い目で見られたり、職場での居心地が悪くなるということもあります。

私個人としてはこのような姿勢をとっている企業を推奨したくありません。
(これから整備士を目指す方のためにも、日本の雇用形態のためにも)

航空整備士を目指す方の中には
「整備業務は行いたいけど、受験はしたくない」
という考えの人もいます。
企業選定の際は転職口コミサイトや説明会で自分の将来プランにあった企業を見つけることが大切です。


理想としては
・社内で選別して資格取得を希望する人にのみ受験機会を与える
・受験機会を与えたら学習の時間は業務時間中に設定する

というのが企業としても労働者との関係がWIN-WINになりそうですが、
実情はそういう仕組みにはなっておりません。


まとめ

就職や転職を考えている方に最低限知っておいてもらいたいことをまとめます。

・新卒の基本給は大卒平均より少し低い
・各種手当はある
・残業は波がある
・夜勤有無は比較的多い業種
・資格取得はプライベートの時間を大幅に削る確率が高い
・転職サイトや口コミサイトで情報を集めることが重要

この記事の内容が、少しでも読者のタメになりましたら幸いです。




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