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(コラム)最近の航空機の製造事情など

最近のニュースが製造に与えた影響

2024年に入ってから、羽田空港の衝突事故やアラスカ航空のEMERGENCY HATCH(非常脱出口)脱落事故など、重大な事故が多発しています。

「これらの事故が航空機の生産にどのような影響を及ぼすのか」という観点で手短に説明したいと思います。


年間何機くらい製造される?


まずボーイング機の直近三年の機種別の生産データを表にすると以下のようになります。


主力機種の製造ペースは?

上記のグラフデータから
ボーイング機においては「737」と「787」シリーズが主力と推測できます。

737は短〜中距離用なので国内メインで使用します。
787は長距離も飛べるので、国内でも国際線でも使用できます。

日本では国土が小さいため、
「737のような短〜中距離用の航空機がそれほどたくさん需要があるの?」
と疑問に思うかもしれませんが、アメリカや、中国といった国土の広く、人口(利用者)も多い国では、かなりの需要があります。


製造ペース
ですが、ここ1年では
737シリーズは38機 / 月
787シリーズは5機 / 月
とレポートされています。

需要に合わせて、737の製造に力を入れていることもありますが、基本的に小型になる程製造に要する期間も短く済みます。


最近のニュースが与えた影響は?

アラスカ航空のニュースが発生した直後、FAA(日本でいう航空局:監督当局)は、運航と製造を一時停止させました。

詳細はこちらから↓


1/31に追加点検を完了させた機体から、運航再開を許可させていますが、機体の生産ペースは増やすことは許可しておらず、製造をFAAが監視する形態をとっているそうです。

製造現場からしたら、常に緊張感のある環境に変わってストレスがかかっていることでしょう。

例えると、
学校の授業中に、後ろに怖い体育系の先生がいて、居眠りすると怒鳴られる・・
のようなイメージでしょうか。

売上を上げたいボーイングの経営陣からしても、生産ペースを上げることができないのは、望ましい状態ではありません。

製造数から航空業界の方向性も分かってくる?

では妥当な生産ペースとはどれくらいでしょうか?

今年度の新規の注文今年度は約1600機ありました。

24年1月現在
5600機の受注残(注文は受けたもののまだ提供できていない機数)があります。
しかもこの数は23年に比べて増え続けています。

主力の737と787を合計しても今のペースだと年間500機程度しか作れないので、
供給が需要に追いついていない傾向です。

普通に考えると、生産ペースを加速したいと考えるはずです。


商業用飛行機(旅客機)の生産ペースが加速すると、基本的に航空業界の発展につながります。

今ぱっと思いついただけでも

・1日に飛ぶ飛行機の数が多くなる
・「満席で乗れなかった」のような利用できない状況が解消される
・より便利で、妥当な価格で利用できる
・航空業界の働き口が増える

以上のような点が考えられます。

そのため生産ペースの制限というのは、業界全体の発展の観点からはブレーキをかけることになってしまうのです。

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