(航空ニュース)アラスカ航空BOEING737MAX-9の緊急着陸について
事故概要
日時:2024/1/6
航空会社:米アラスカ航空
飛行機型式:ボーイング737MAX-9
飛行航路:AS1282便 Portland(PDX)→Ontario(ONT)
事象
飛行中に客室の壁の一部が吹き飛びました。
高度は16000ft(約4900m)でした。(flight radar24のdataを参照)
大型機の場合約40000ftまで上昇するので、半分に到達しない程度の高度でした。
パイロットは引き返し、緊急着陸しました。
乗客171人と乗員6人は無事でした。
ちなみに事故機はわずか8週間前に就航したばかりでした。
事故原因は調査中です。
2/31追記
ボーイングCEOコメント
2/31にFAAはこの不具合に関して追加の点検を明示しています。
点検が完了した機体から使用可能の許可を与えています。
監督当局はどのように航空会社に指示を出す?
このような事故が発生すると、同じ型式の航空機(B737MAX-9)にも同様の不具合が発生する恐れがあります。
何の対策もしないまま継続して飛行させるわけにはいきませんよね。
国の監視機関(FAA)は、航空会社や製造会社に対して運行停止や点検などの命令を出す必要があります。
それはAIRWORTHINESS DIRECTIVE(略してAD)と呼ばれる書類を発行することによって、該当する飛行機を持っているエアラインなどはこの指示に従います。
ADのリンクも載せておきますので、ご興味のある方は本文もご覧ください。
https://drs.faa.gov/browse/excelExternalWindow/DRSDOCID122693486620240106201913.0001
ざっくり要約すると
・737-9の客室のドアが離陸中に吹き飛んだ
・人身事故、機体のコントロールを失う事故につながる可能性がある
・FAAが指示する点検を完了するまで、同じタイプの737MAXは飛行させてはいけません
本事故を受けてFAAは同型機の171機に運航停止を指示しました。
(参考)FAAとは航空会社や航空機製造会社を監督する国の機関です。
日本で言うところの国土交通省の航空局です。
1/9時点で
アエロメヒコ航空(Aeromexico)
コパ航空(Copa Airlines)
は運行停止をアナウンスしています。
胴体がなぜ吹き飛ぶの?
胴体の設計の話から説明します。
まず胴体には緊急時に脱出できるようにドアもしくは非常脱出口を設けるように設計上の基準があります。
数値は適当ですがイメージとして
「100人乗りなら出入り口4つと非常脱出口2つの合計6つ付けてね」という感じです。
ボーイング737MAX-9の場合の標準仕様は
(出入り口として)
1、前方の左
2、前方の右
3、後方の左
4、後方の右
(非常口として)
5、客室中央の左前
6、客室中央の左後
7、客室中央の右前
8、客室中央の右後
の合計8個になります。
今回のアラスカ航空の機体はこの仕様でした。
製造会社の目線で考えてみましょう。
飛行機を作るときは
翼はA工場で、
胴体はB工場で・・
のように別々に量産されます。
大きな筒状の胴体は、客室の窓やドア、脱出口の部分をくり抜いた状態で製造されます。
量産されるため胴体出荷時は、どのような仕様にも(非常口が多い仕様、少ない仕様の両方にも)対応できるよう、最大の数の分の脱出口をくり抜いて出荷されます。
そして機体組み立て時に、
座席数の少ない場合
非常口が4個で済む機体は、4つの非常口を取り付け、残りは塞いで壁にしています
座席数の多い場合
非常口が6個必要な機体は、くり抜いてある部分全てに非常口を取り付けます。
このように座席数を多くオーダーメイドするかどうかで、同じ737MAX-9でも脱出口の数も異なるということですね。
今回の事故のアラスカ航空の機体は前者のパターンでした。
塞いである部分が荷重に耐えられなくなり、与圧で外に吹き飛んだというわけです。
飛行中ドアがなくなると、外に吸い込まれるの?
よく海外の映画なんかで、飛行中にドアが飛んでいって、機内のモノや人が空中に吸い出されるようなシーンは見たことはありますでしょうか?
なぜそのようなことが起こるかというと、
与圧されている機内と、されていない機外に圧力差が生まれているからです。
「与圧」とはあまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。
飛行機の中を風船のようにパンパンに膨らましています。(構造は風船のようにゴムではなく金属のため、形は変化しません。)
空中に吸い出される話をとても乱暴に説明すると、
空気の力同士がお互いに人間のように押し相撲をしていて、力の弱い方は後ろに押されていく・・
この力と力の押し合いが、ドアの開口部で透明な空気上で起こっています。
機内は与圧されているので(圧力が高いので)押し出す力が強いと言うわけです。
シートベルトをしていないと外に吸い出される恐れもあるということです。
酸素はマスクは必要なの?
今回のケースだと、ドアが脱落して機内の空気は高度は16000ft(約4900m)相当になりました。
酸素マスクも落ちてきます。
勘のいい方はここで不思議に思うかもしれません。
「酸素濃度は地上でも高度4900mでも約21%だから、人間が呼吸をするのには問題ないんじゃないの?」
皆さんはなぜだと思いますか?
次回以降に解説記事を書いていきたいと思います。
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