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繊維はなぜ強い? その4(おわり)

有機繊維も種類が多いです.どうして繊維形状だといいのでしょう?

ビニール袋に用いられる低密度ポリエチレンは,引張強度8~31MPa,弾性率180~280MPaです.また,レジ袋に用いられる高密度ポリエチレンは,引張強度23~31MPa,弾性率1070~1090MPaです1) .

一方で,高強度ポリエチレン繊維は,引張強度3.5GPa以上,弾性率123GPa以上と,特性が大きく異なります2) .

これは,同じポリエチレンであっても高次構造(三次元立体構造)が異なることで,性質が著しく変化することによるのです.高分子の一次構造から推定されるポリエチレンの理論強度は32GPa,結晶弾性率は240GPaとされています3) .

有機繊維は,溶液もしくは融液とした高分子をノズルから出し,引き伸ばし固化させて紡糸を行い,固体状態で繊維を引き伸ばす延伸処理を行います.

これにより,高分子鎖が引き伸ばされて繊維軸方向に並び結晶構造をとることによって,強度と剛性の高い繊維となるのです.また,分子鎖が剛直であること,結晶内欠陥が少ないことも,強度と剛性の向上要因となるそうです.

高強度ポリエチレン繊維は,ロープ,釣り糸,防刃手袋などいろいろなものに使われています.

参考文献

1) 大阪市立工業研究所プラスチック読本編集委員会・プラスチック技術協会,“プラスチック読本”,プラスチック・エージ,2009.

2) 東洋紡株式会社,https://www.toyobo.co.jp/products/hp_fiber/category/dn_izanas/index.html

3) 大田康雄,“高強度ポリエチレン繊維「ダイニーマ®」”,繊維学会誌,Vol. 66,No. 3,pp. 91-97,2010.


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