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繊維はなぜ強い? その2

もう一つは,繊維軸方向に規則的に並んだ結晶構造などの寄与があります.

鋼材においては,圧延後に結晶方向が揃い強度が向上するという性質があります1) .

線材では伸線加工により強い圧力で均等に絞り込まれるため,強度の高いセメンタイトと延性のあるフェライトの結晶が不規則な状態から伸線方向に向きが揃うことで,フェライト相の幅(ラメラー間隔)が均等に狭まり,強度が飛躍的に高まるそうです.

一方で,薄板のような圧延材の場合は,結晶が圧延方向だけに伸ばされ幅方向は伸ばされないため,方向によって結晶粒径が異なるそうです.

SS400(JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材)は引張強度が400~510MPaですが,一方でピアノ線SWP-B(JIS G 3522 ピアノ線)は直径0.08mmで3190~3480MPaの引張強度です.

カットワイヤー法の鋼繊維は伸線された線材を切断して作られますので,例として,普通鋼繊維で約1000MPa以上,高張力鋼繊維で2610MPa以上の引張強度を示すものがあります.

参考文献

1) 新日本製鐵株式會社,“モノづくりの原点-科学の世界VOL. 25高強度の最先端をいく棒鋼・線材(2)”,NIPPON STEEL MONTHLY,Vol. 157,pp. 11-14,2006.


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