おかえり

「おかえり。」
『ただいま。』
「はあー、疲れた。」
『……。』
「ねえー。もう萎えたー。」
『え?』
「きっついわ、こんな時間までさあー。」
『毎日じゃん。』
「これが日常と化してるのがやってられんな。」
『仕事多いんでしょ?』
「もー、人をもっと増やした方がいい。」
『秋入社が来年度に期待ね。』
「イヤァアー。」
『玄関で倒れてないで手洗いうがいして着替えなよ。』
「体力が……。」
『あー。』
「なんか体調も悪いし。」
『なら早くご飯食べてお風呂入ってさっさと寝ちゃいなよ。』
「オー……生きるとは大変だ。」
『そりゃそうさ。生きるためにはそれなりのことをしないと。』
「うー……。」
『……。』
「……空っぽだ。」
『空っぽ?』
「自分。」
『うおっ、ちょっ、泣いてんの?』
「訳もなく涙が溢れる。」
『病院行きなさいよ。』
「もう行ってるよ。」
『……ほら、カバン持ってくから。』
「あざーす。ああ、そこに入ってるハンカチは洗濯カゴに入れて。水筒はシンクに。」
『はいはい。本当、早くそこから起きて、ご飯食べてお風呂入りな。』
「ご飯別に……。」
『夕飯食べてないんでしょ。』
「……うん。」
『……美味しいもの食べたら、ちょっとは空っぽじゃなくなるから。ね?』
「分かんないじゃん。」
『お腹は満たされるよ。』
「んんー、うん……。」
『寝癖酷い。』
「ちょっと寝っ転がってただけなんですけど。」
『ごろごろしてたからねえ。』
「……手洗うわ。」
『うん。』
「……。」
『……。』
「……おかえり、ヒーロー。」
『んあ?何か言った?水使ってるから何も聞こえん。』
「何も言ってないよ。」

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