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第19回名古屋フィギュアスケートフェスティバルを視聴して

このフェスティバルからフィギュアスケートの新年が始まるという。開催趣旨は以下の通り。

公式サイトより

緊迫した全日本選手権から一転、2022年1月4日18:25よりオンライン配信が始まった。解説はいずれも元フィギュアスケート選手の鈴木明子と無良崇人、ゲスト解説に川原星を迎えた。後輩たちへの眼差しが優しかった。

参加選手21名によるオープニング、日本語ボーカルの曲で滑るのを観ているとしみじみ国内のショーならではのような気がする。また、国際大会レベルの選手らには個別の見せ場も設けられていた。

第一部と第二部で小学生から今季で引退する選手まで幅広い年齢層の選手が演じた。演技の前に本人からのメッセージが読み上げられるのも人間味を感じさせた。その間には母の手紙と後輩の花束贈呈で感極まる引退セレモニー(松田悠良と本郷理華)が設けられた。フィギュアスケーターの始まりと終わりをあたたかく見守るアイスショーであった。

第二部には自分の注目選手が出演した。三者三様に輝いていた。

田中刑事「Godzilla」
今季初披露のエキシビジョン・プログラムである。カーキのオールインワン(つなぎ)の上半身をはだけ黒のタンクトップで逞しさ露わに登場した。楽曲の重厚さをものともせず獰猛かつ流麗に踊り続けた。迫り来る有名なフレーズに同期すると会場の空気が完全に制圧された。更にアンコールはWhiplashの怒涛のステップワークで追い打ちをかけてみせた。

山本草太「これからも僕はいるよ」
このフリースケーティングのプログラムはアイスショーという魅せる場で遂に大きく花開いた。競技さながらの高い密度で冒頭から全てのジャンプを決めた。曲が進むにつれ一体感が増し、クライマックスのイーグルは堂々と観客を魅了した。アンコールはYesterday。人生の紆余曲折を見るようなステップからのハイキックが清々しかった。

競技もショーも披露する機会というのは同じ。現時点ベストの完成形を見せていただいた。白いドレープの衣装で登場してきたときは申し訳ないがまさかと思った。このプログラムは失敗続きだったからである。しかし冒頭の3回転を決めてから私は山本草太が加速させる攻めの姿勢に魅入られ言葉を失った。正統なる進化。演技後にこぼれた笑顔は陽だまりのようであった。

友野一希「Bills」
何度も観たい面白エキシビジョン、名古屋出張である。寝起きの冒頭は先着1名様にサインが入ったフェスティバルのパンフレットを手渡した。照明が明るいためか、確かな技術が支える考え抜かれた若手サラリーマン仕草が際立った。アンコールのラ・ラ・ランドで会場は満場一致の手拍子に包まれた。決めポーズはメガネをキリッと輝かせた。

フィナーレは引退選手を筆頭に全選手がひとりずつ紹介のアナウンスを受けながらそれぞれのスタイルで感謝の気持ちを表現した。最後はひとりひとりに手渡された花束を掲げ、全員でリンクを周回した。そして21:44に配信は終了した。あっという間の3時間19分であった。

スケートが好きであることが全面的に許される会場の包容力、そして日本のファン独特と思われるアットホームな雰囲気の一端を、黄色い声の外側にいる人間として垣間見させていただいた。

※公式サイト