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ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX 入手報告

それは2021年12月を境にFreQuencyが記憶に蘇り、急速に傾倒していった必然であった。CDにして20枚(Blu-spec CD2規格の高音質サウンドトラック18枚、スペシャルディスク2枚)の「アーマード・コア」シリーズ音源完全網羅BOXである。

こちらは2018年11月1日に限定発売されたもので、2021年に至っては当然廃盤であった。意を決して中古市場を検索した。そして「中古美品(エンブレムステッカーのみ欠品)」と謳うものを定価の2.5倍で発見した。ネット上のことである。しかしここは予算上限で賭けてみることにした。

偶然にもクリスマスの日に届けられた。はたして案内文どおりの品であった。まずは「保護をした」という気持ちで胸を撫で下ろした。

手元にアルバムが無くまだ取り込んでいないおよそ3分の2の音源を携帯プレイヤーに納めた。時間がゆっくり流れる旅行のあいだ順を追って一巡した。同時に「The 20-year History of ARMORED CORE」という小さいながらライナーノーツやサウンド陣インタビューも充実したビジュアルブックを読み、背景への理解を深めた。

全20ディスクの印象を以下に記す。

【第1集 1997-2003】

DISC 01「ARMORED CORE / ARMORED CORE PROJECT PHANTASMA」——シリーズの原点となる純粋なテクノ。"Shape Memory Alloys" は高低差が効いたクールな一曲。

DISC 02「ARMORED CORE MASTER OF ARENA」——ビートの強調が心地よいテクノ。荒々しい"9"は最強の敵「ナインボール」戦のテーマ。

DISC 03「ARMORED CORE 2」——生々しく凝縮された無機質なテクノ。「ジャーマンテクノの雄」であるマイク・フォン・ダイクがゲスト。"Whiz Drop"が時折見せるきまぐれさが新鮮。

DISC 04「ARMORED CORE 2 ANOTHER AGE」——テクノ最終章は暗黒の地にて。忍び寄る"Out of Control"にゾクゾクさせられる。

DISC 05「ARMORED CORE 3」——大きな転機となる記念碑的作品。ここでバンド・テクノ・アコースティックの三位一体が揃う。言葉を歌い上げるヴォーカルを取り入れ始めた。私が好きな"In My Heart"の初出元でもある。

DISC 06「ARMORED CORE 3 SILENT LINE」——鉄塊と砂埃が舞う戦場の音楽。"Initiating"は空耳かもしれないが声ネタが「遠慮しないで」が繰り返されているように聞こえてくすぐったい。

【第2集 2004-2008】

DISC 07「ARMORED CORE NEXUS」——EVOLUTION(進化)のディスク。2で煮詰まっていたテクノもここからは自由に駆け巡る。ひとつ星が煌めきを見せる"World Navigation"で世界に滑り込む。

DISC 08「ARMORED CORE NEXUS」——REVOLUTION(回帰・革命)のディスク。過去作からのアレンジ曲を伸びやかに収録。最終トラック"The Revolution Mix"でもまとめて堪能できる。

DISC 09「ARMORED CORE NINE BREAKER」——重々しくも爽やかな楽曲が多い印象。"Running Man"は疾走感にモールス信号の直線が交差するユニークな曲。

DISC 10「ARMORED CORE FORMULA FRONT」——軽やかな跳躍に心弾む音楽。"Tyro"の小刻みなリズムのバリエーションが心地よい。

DISC 11「ARMORED CORE LAST RAVEN」——硬派で地を這うようなアンビエント。代表的なのは"Old Peal"で、後に「ARMORED CORE REPRISES」で奥行きの増したサウンドを展開する。

DISC 12「ARMORED CORE MOBILE SERIES」——フィーチャーフォン向けゲームアプリからの4作品を当時の携帯電話音源のままレトロに収録。"Mobile 4 Opening" はシンセギターが刻むリフレインがどこか切ない。

【第3集 2006-2013】

DISC 13「ARMORED CORE 4」——プラットフォームの進化によりサウンドの厚みと壮大さが増強された。エンディングテーマの"Thinker"を抜きにしては語れない。微かにノイズがかった遠い歌声に、ネット上では味わい深い英語歌詞の和訳が様々に飛び交わされいる。

DISC 14「ARMORED CORE FOR ANSWER」——オーケストラやコーラス、そしてバンドといった人間の生身に近しい要素を優位にしたドラマティックな作りである。ストリングスが鋭利な壮大さを引き立てている。祈りのコーラスがベースラインを高揚させていく"Remember"は恐怖を歌うボーカルに吸い込まれていく。

DISC 15-16「ARMORED CORE V」——金管の音をあえて遠めにくぐもらせているところに注目されたい。大義名分を持った軍隊ではなく孤高の傭兵が後先のない戦いに身を投じる様を反映している。"Conversation"は冒頭からサイレンが飛び交い裏拍のドラム激しく否応なしに戦闘という「会話」が始まる。

DISC 17-18「ARMORED CORE VERDICT DAY」——テクノ、ストリングス、バンドが互いに馴染んだところにソロヴァイオリンが加入し、楽曲に新しい道筋を切り拓いている。"Forgive An Angel"は破壊的なサウンドからヴァイオリンが妖艶に光る。

【SPECIAL DISC】
VOL.1「ARMORED CORE VERDICT DAY DLC MUSIC」——サウンドトラック発売後に要望の多かったDLC内の楽曲を全て収録している。VERDICT DAYのサウンドトラックが実は3枚組だったと分かる。女性ボーカルがリードする"Cosmos New Version"は高揚感の刻まれ方ががクセになる。

VOL.2「Outtakes & Remix version Music」——プロモーションムービーの楽曲や元々シリーズのファンである若手コンポーザーによるアレンジ、未使用曲等が収められている。激しいテクノから穏やかなクラシカルまで幅広く楽しめる。"Armeria -reborn-"はヴァイオリンとピアノの掛け合いが美しい。

以上20ディスクにより硬質なテクノを開祖としたアーマード・コアシリーズのサウンドは、3から荒々しくも軽快なバンド、4から緊張感を拡張させるストリングスとピアノ、VERDICT DAYで叙情的なヴァイオリンソロが参画し、発展と進化を遂げてきたという軌跡を辿ることができた。

理想的には耳にするための前提は1997年の第1作からリアルタイムでゲームを遊んでいることなのだろう。しかしそうではない自分でも、このBOXセットのおかげで魅力的なアーマード・コアの音楽を横断的に聴ける。とても有意義な体験を所有することができ、意を決して取り寄せた甲斐があるというものである。