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ヨナオケイシ「CYBERPHONIC」感想

2018年10~12月にかけて、ヨナオケイシ「CYBERPHONIC」再販3アルバムに傾倒していた。

サイバーという「キワモノ」とも言える音色を軸にしながら、様々な既存ジャンルの要素が交歓するさまに、陶然とする。各曲の素晴らしさもさることながら、明晰に綯い交ぜされた調べは、それぞれが同一の地下水脈に達していることに驚く。その流れが行き着く先には、高純度の気持ちよさと普遍性が待つ。

聴いてきた音楽の記憶たちを横串で貫く。耳にした人間と響き合い、その人専用のハーモニーをも与える。当時の耳の早い方々が、たちまち魅了されたのも頷ける。

しかし、ここまで到達してしまったからには、懐かしい「伝説のアルバム」に留まることは許されなかった。CD再販のみならず、その世界に魅入られた現在を生きる人間たちが、ヨナオケイシのもとに合流することは、もはや必然であったのだろう。

楽曲等ひとつひとつと時を共にする、彼が主催するイベントの場には、参加者全員の情感が同期する快楽が止まない。続編「CYBERPHONIC3」は、その現場で既に萌芽しているのかもしれない。

各アルバムの聴き所を以下に記す。

1は、COMPLICATION 〜 YOU RECALL 〜 THE END OF EVOLUTION の流れが山場と言える。本編シメのPREJUDICEで突き抜ける。

2については、全体的には徐々に聖なる背徳感が高まる様相を呈している。それは、THE SKY NO ONE LOOKS UP で高らかに歌いながら、HUGE THEORIZINGで勃興し、POISEで一旦安定して足場を固めてから、ACCUMULATION OF VANITY でクライマックスを迎える。

いわば外伝であるEXTENTENSIONは、全5曲と少ないのは惜しいが、取り込んで吸い出し調和させる音楽のジャンルが、確かに拡大している。個人的には、飄々としたSELFISH OF UNITY と、1と2の総括であるような最終曲REVERTH HISTORY が印象深い。

最後に、CYBERPHONICは単なるオリジナルアルバムではなく、ゲーム音楽界における当時の反響以上に現在も語り継がれうるひとつの「現象」ではないだろうか。

作曲者いわく「J.S.バッハの小フーガト短調とケチャを混ぜたら面白そう」という着想から始まったという。第1作目は1995年。ヨナオケイシの貪欲な先見性に瞠目する。

遅れてきた聴き手である自分から言えることは、ここまでである。