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勉強って?

とてもお酒の好きな先輩がいます。楽しいお酒で、時には若手社員を同席させて何気ない雑談の中にビジネスで大切なことに触れますが、押しつけがましくなくおしゃべりをするのが上手な人です。

その先輩と若手の席で、「勉強って何でしょうかねぇ」、と尋ねられたことがあります。突然に聞かれたので少し問い惑い、なんと答えたのか忘れてしまいましたが、あれは若い人たちに勉強の大事さを伝えたかったので、自分からではなく、うまく答えろよと期待を込めて聞いてくれたのでしょうが、その場を繕う曖昧な言葉で濁してしまい、後で思い返すと大変失礼なことだったと反省しきりでした。

で、その勉強。じっくりと考えたことがありませんでしたが、その重要性を3つ書き留めておこうと思います。

まず第一。それは忍耐を学ぶことです。勉強をするからには知らない分野を知ると言うことでしょうが、それは特に最初の内は理解に時間がかかり、時にいらいらすることもあります。でも辛抱強く習い進めていくとあるとき視界が一気に晴れ、なるほどと理解が深まり勉強することが楽しくなります。たいていはその時期がずいぶんと先にあるので辛抱しきれず放り出してしまいがちですが、分かる、と言うことは気持ちがいいことです。

また、知らないことを知ると言うことのひとつの形として、相手の話を聞く、と言う場面があります。相手が何を考えているのか、どこまで事情を理解しているのか、どうしたいと考えているのか、何を欲しているのか、等々を辛抱強く聞く必要があります。特に皆さんが先輩という立場になったり、リーダーになったり、あるいは上司という役割を担うようになったときには、相手の話を忍耐強く聞くことが重要です。

ことほどさように、実社会では忍耐が必要で、勉強することでそれが学べると言うことだと思います。ある意味においては勉強する対象は何でもいいのかもしれません。勉強するという態度が大切なのです。

二つ目に重要なこと、世界が広がると言うこと。知らない分野を学ぶと言うことは自分の知らない世界が知っている世界に変化すると言うことです。そうなると知っている事柄と知っている事柄を結びつけて、新たな知っていることが生まれる。スティーブ・ジョブスも言っていました、点と点をつなぐことが重要で、自分が経験したからことそれができる、と。

「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います」

世界を広げると今やっていることがいずれどこかでつながって実を結ぶ、世界を広げなければつながることもありませんし実を結ぶこともないのです。

三つ目は伝えることの大事さ。さぁ、今あなたは忍耐を覚え世界が広がり何者かの実を結ぶことができました。つまりあなたは成功したわけですし、少なくとも成功の確率が高まりました。おめでとうございます。

でもそれはあなた一人の中での成功です。人間はいずれ死を迎えます。その成功は後世の人たちには思い出として残るかもしれませんが、それはただの記憶です。そうだとすると、勉強で大切なことは学んだことを後輩や後世の人たちに受け渡すと言うことです。そうすればその人たちは一定の進歩から学びを始められますし、勉強の質も高まるでしょう。あなたが得たものを後輩や部下に具体的に示すことのできる器量を身につけること。伝えることの重要性を理解することも勉強をするひとつの大きな理由だと思います。

松尾芭蕉は言ったそうです、「高く心を悟りて俗に帰る」 古人や師の心を学んで風雅の誠を心高く悟り、そこから日常の生活に目を向けるべきだ、と。 俳諧の根本理念を心高く悟るとは、我々の言葉で置き換えれば勉強すると言うことでしょう。これを体得すれば卑近な事柄を句にしても俗におちいらない、つまり平易な言葉で体得した極意を周囲に伝えられると言うことと思われます。勉強したからこそ身につく器量です。

一歩ずつ始めてみましょう。

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