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私は蝶?

ジュラシックパークという映画を覚えていますか。原作はSF小説ですがスティーヴン・スピルバーグ監督により1993年に最初に映画化され、米国をはじめ世界各国で大ヒット。スピルバーグ映画史上では最大のヒット作だそうです。その全世界興行収入9億1469万ドルという数字は当時世界1位となりました。でも世界1位の座は後にタイタニックが更新しました、残念。その人気を背景に続編がいくつも作られ、日本でも興行収入上位で人気が高いようです。

もちろん恐竜映画ですから恐竜好きの子供たちには絶大な支持を受けていることでしょうが、娯楽大作としてではなく哲学的な雰囲気を秘めている作品としても知られています。たとえば第一作にもその後の作品にも出演しているイアン・マルコムという役名の登場人物をご存知でしょうか。彼はカオス理論の専門家として第一作でも重要な役どころで、あの有名なセリフを静かに語りました。

https://www.qedcat.com/moviemath/jurassik_park.html

MALCOLM: It simply deals with unpredictability in complex systems. The shorthand is the Butterfly Effect. A butterfly can flap its wings in Peking and in Central Park you get rain instead of sunshine.
カオスとは複雑系の中における予測不可能性を単に論じる学問だ。簡単に言えばいわゆるバタフライ効果というやつさ。たとえば、蝶が中国の北京で羽ばたくと、晴れていたニューヨークのセントラルパークで雨を降らせるとこができる。

どうですか、わかったようなわからないような、不思議な会話です。地球の裏側の蝶の羽ばたきがこちら側の気候の変化を引き起こすような、何気ない現象が予測不可能な結果となるとか、小さな動きが思いもよらないような大きな影響を与えるとか、それが複雑系におけるカオスということのようです。

うぅ〜ん、我々が学校教育で習ってきたような素直な法則、つまり原因と結果が不可分のような分かりやすい法則や因果関係といった直感的な理解は複雑系では役に立たないということでしょうか。このようないわば常識的な視点は決定論的世界観と呼ばれ、地道な行動が地道な結果を導く、という居心地の良い世界観ですね。整然とした世界。努力は必ず報われる。

一方でイアン・マルコムが説くバタフライ効果。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%BF%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E5%8A%B9%E6%9E%9C

これは努力が必ずしも報われない世界。当初の目的が必ずしも達成できない世界。複雑な現代社会。これを初期値鋭敏性と呼ぶようです。小さな行動が思いもよらない変化を生み出す世界です。

つまり、イアン・マルコムは、DNA操作で恐竜を生み出しそれを管理することができると安易に考えている人間社会に警鐘を鳴らしているのだと思います。映画では予想もつかない展開をうまくコントロールできない人間を描いています。

このことは、昭和の企業、オールドエコノミーでは、例えば製造業であれば努力して新製品を定期的に売り出せば売上も伸びるし、その中から定番商品として残ることもあるでしょうから企業の土台を安定して築いてくれます。でも現代社会ではそのような安定は必ずしも保証されていません。そうだとすると何をやっても無駄だ、ということなのでしょうか。なるようにしかならないということなのでしょうか。

ちよっとだけ皆さんより長く会社生活を送ってきた身としては、そうではないと思っています。会社が大きくなればなるほど一社員がどれだけ頑張っても業績にはそんなに影響しない、活躍しようと思っていても誰も評価してくれない、と思うのは早すぎます。複雑になってきた現代の市場では、あなたの努力が蝶の羽ばたきのようにはかないものであるかのように受け止められがちですが、ご本人も気がつかないような不思議なつながりを経て大きな業績に結び付けることができる、イアン・マルコムはそういっているように思います。



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