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【機材のこと】Rickenbacker 360V64

新しくギターがやってきました。



Rickenbacker 360V64です。
ずっと弾き続けてるリッケンバッカーに何かあったときのための1本は以前から考えてたんですが、ほぼ偶然に見つけてしまったので手に入れました。

さて、GibsonやFenderのようなエレキギターの代名詞ともいえるメーカー(クルマでいうとメルセデスやBMW)のことはよく知ってる人は多いと思いますが、Rickenbackerのことをよく知ってる人は少ないかもしれません。
なので、このモデルと周辺について紐解いていきたいと思います。
ちょい解説が長くなるので、興味ない人は戻っていただいて構いません。

まず、モデル名の「360V64」ですが、読みは「サンロクマル(またはサンロクゼロ)V64」です。「360」はRickenbackerが60年代から現在まで生産するセミ・ホロウ構造(ボディの一部が中空になってるってことね)のモデルの1つです。自分が愛用するギターも現行の360。
で、今回やってきた「V64」は「Vintage 64」の略で、1964年製の360の復刻(リイシュー)という意味です。ヴィンテージのリイシューであるVシリーズには2パターンあり、12弦のモデルが1981年ごろから2001年ごろまで、6弦のモデルが1991から2001年ごろまで生産されていました。

1964年、The Beatlesが「A Hard Day's Night」というアルバムをリリースしました。
このアルバムには12弦ギターが多用されていますが、ジョージ・ハリスンが弾いていたギターが当時のリッケンバッカーの360の12弦でした。そんなイメージもあり、リイシューも6弦よりも12弦が先になったそうです。もっとも、ジョージが弾いてたギターは63年製らしいですが(アルバムのリリースが64年だからこのネーミングにしたような気がする…)。

12弦を弾いてたころのジョージ・ハリスン。
確かに仕様がほぼ同じだ…

https://youtu.be/Yjyj8qnqkYI?si=A6KNMydzrq-iHYp3

The Beatles - A Hard day's night

さて、1964年当時の360の仕様は、モデル名こそ同じですが現行とは大きく異なります。
主な特徴は、2発のトースター・ピックアップ、21のフレット、フラットトップ(コの字型)のテールピース、ボディの形状などです。
ボディの形状は、兄弟機種の330とほぼ同じ。違いといえば、指板のポジション・マーク(360は三角、330はドット)と、360はネックとボディの表裏にバインディング(白い縁取り)が巻かれていたくらい。
このため、ユーザーから「どっちか見分けがつかん」という声が多く、翌年の1965年ごろには360の形状が変更されて今に至っています。

1964年の360と現行の360、330の違いを写真と表にしてみたのでご参考までに↓

左→現行の360
右→360V64
現行のRickenbacker 330
(参考)
手作りですいません
(タップしてください)

という感じ。
さて、僕が手に入れた個体についてお話しましょう(←相変わらず前振りが長い)。

数年くらい前から、普段のリッケンバッカーに何かあった時のためのギターは欲しいなとうっすら思っていて、トースターピックアップがいいなとか、どのモデルがいいかなとかうにゃうにゃ考えてたわけです。
実際のヴィンテージも試奏したけど、ネックが細かったり、ピックアップが現行に交換されてたりとかで好みのやつがなかなか見つからず、これはもうヴィンテージじゃなくてもええかとなり、楽器販売サイトとかをのんびり眺めてたところ某オークションでたまたまお安く見かけたので、入札したらそのまま落札できてしまったので(笑)、晴れてお迎えしました。

スペックは上の表でほぼ言ってしまってるようなもんですが、シリアルナンバーは「M0 96XX(伏せる意味ないけど)」で、たぶん97年製です。長期間ハードケースに入った状態で倉庫で眠っていたらしく、F社でいう「Closet classic」みたいにほとんど傷がない状態でした。
ネックジョイントの塗装にクラックがあり、一部欠けてますが木部にダメージはないのであんまり気にしてません。
さて肝心の音ですが、トースター・ピックアップは音に独特なキャラを持っています。現行のハイゲイン・ピックアップよりパワーもサステインもない。ただ、独特な切れ味と鋭さ、金属的な響きがあります。BeatlesやThe Jamが鳴らしてるジャキジャキの音をそのままイメージしてもらうとわかりやすいかも。

The Jam - In The City

https://youtu.be/ycnWuHsly0A?si=aJ-ql7fI2Jo4T7Nd

1973年にRickenbacker社がピックアップをトースターからハイゲインに変更して以来、レギュラーモデルにはトースターが載ることはなくなりました。ヴィンテージのリイシューや、最上位機種の381、ジョン・レノンの愛機325など、限定で生産される一部のモデルにのみ搭載されています。
フリマアプリで単体で数千円とかで見かけたりしますが、見た目だけのパチモノであることが多いので無視しましょう。本物はたまに海外のオークションとかに出たりします。

なお、トースター・ピックアップのリプレイスメントを作っているメーカーがイギリスにあるので、ご興味があれば取り寄せてみてもよいかも。

creamery custom pickups

https://www.creamery-pickups.co.uk/custom-handwound-pickups-from-the-creamery/custom-handwound-replacement-ric-rickenbacker-and-toaster-style-pickups.html


その他の気づきとして、
・21フレットしかないのでネックが短く感じる(立って弾くと特に)
ミディアム・スケールの21フレットのギターって、あんまりないよなと思う。
・弦交換がとにかく楽
このテールピースはめちゃくちゃ交換しやすい(笑)。R型テールピースはかっこいいけどとにかく面倒くさいので…。

このモデルの注意点としては、塗装が挙げられます。
Rickenbackerが使うラッカーはかなり柔らかいので、すぐベタベタになることがあります。
僕のも届いてすぐベタベタになったり、曇ったりしたので諸先輩方のご意見を聞いたところ、freedomさんのポリッシュを勧められたので使ってみたら綺麗に磨けました。サウンドハウスにも普通に売ってて、リッケンバッカーに限らず、ラッカー塗装のギター全般に使えます。

とまあ、仕様や弾き心地など、持って初めてわかることがいろいろありました。

いずれにしても、ヴィンテージ・スペックのリッケンバッカーは一つの目標でもあったので、入手できてうれしく思います。
あくまでもメインは360ですが、この子はサブだけでなく、貴重なオプションになってくれそうです。

次ですか?60年前半の本物を狙うしかないですね(笑)。

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