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悲運の名馬

人が運100%であるのと同じように、馬も運が全てだ。
食肉として生まれる運命を持った馬もいれば、競走馬として歴史に名前を残す馬もいる。
競走馬として生まれても、どの牧場で生まれるか、どの馬主に買われるか、厩舎はどこになるのか、騎手は誰になるのかは馬がいくら努力をしても選べない。

無事に良い牧場で生まれて名門厩舎に預けられ、名手が手綱を取ってもレースでは簡単に勝てるものではない。1勝も出来ず競馬場を去り、乗馬やセラピーホースになれれば良いが、大半は食肉になる。過酷だ。

そんな中で頂点を極めるのは人間と同じようにほんのひと握りだ。
そんな一頭にサクラスターオーという馬がいた。
彼はクラシック三冠の皐月賞を勝ち、東京優駿を休んで三冠目の菊花賞に長期休み明けで挑み、見事に二冠馬となった。
本来なら翌春の天皇賞(春)まで休養の予定だったが、人間のわがままで年末の有馬記念に出走することになる。

有馬記念のゲートが開いた。その瞬間、サクラスターオーが欠場した東京優駿を勝ったメリーナイスの根本康広騎手(現調教師)が落馬をした。場内にどよめきが起こる。
1番人気のサクラスターオーは順調にレースを進めて勝負を賭けた4コーナーで故障発生。再び場内にどよめきと悲鳴が。

馬という生き物は細い脚で大きな身体を支えている。そのため四肢で立てないと激しい苦痛を味わい命を落とす。だから治療の可能性がない場合は安楽死の処分がとられる。残酷なようだが、馬に関わるものとして最後に出来る愛馬に対しての行いだ。だがここでも人間のエゴで彼を生かそうとした。そして激痛に苦しみ、翌年5月、安楽死になった。

もし有馬記念を回避していたら彼の子供が活躍していたかもしれない。
もし有馬記念で故障発生した時に即座に安楽死にしてあげれば彼は苦しまずに済んだ。
そう思うと人間は罪深い。

夜が明ければ菊花賞が行われる。
夏に予言した通り、コントレイルが無敗の三冠馬になるだろう。
しかし競馬場には魔物が住んでいる。三冠馬になれなくても無事に全馬戻ってきて欲しい。


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