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【地方紹介12】リムーザン地方

 <地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:リムーザン地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
リムーザン地方(Limousin)/リモージュ(Limoges)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
ヌーヴェル・アキテーヌ地方(Nouvelle-Aquitaine)/ボルドー(Bordeaux)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●コレーズ県(Corrèze /19)県庁所在地:チュール(Tulle)
●クルーズ県(Creuse /23)県庁所在地:ゲレ(Guéret)
●オート・ヴィエンヌ県(Haute-Vienne /87)県庁所在地:リモージュ(Limoges)
 
 
★地方概要★
 
リムーザン地方は、フランス中央部のやや西側に位置し、東にオーヴェルニュ地方、西はアキテーヌ地方とポワトゥー・シャラント地方、南はわずかにミディ・ピレネー地方と接し、北はロワール地方につながる内陸の地方です。地理的には中央山塊の西側に位置するので、リムーザン地方の東側は、山岳地帯が続いており、西に行くにつれてなだらかになっています。 丘陵地や泥沼地もありますが、全体的に花崗岩の大地が広がっており、一般的に、土地が痩せており、伝統的に農業は主要産業ではありましたが、生産性はよくなく、より肥沃な地は農業よりも牧畜に利用される傾向があります。特に牛肉や羊肉の質は高い評価を受けており、当地の名前がつけられたリムーザン種の牛肉は高級ブランド牛として知られています。比較的大きいブリーヴ・ラ・ガイヤルドや中心都市リモージュ以外はまさに田舎という雰囲気で、特に東部の山岳地帯へのアクセスはあまりよくありません。
 
フランスの大部分の地方では人口は自然増を続けていますが、この地方は地方離れによる人口減少の傾向が強いです。そんな田舎のリムーザン地方ですが、逆に手付かずの田舎風景に出会えるともいえます。南部にはフランスの美しい村に登録される村も多く点在しています。

コロンジュ・ラ・ルージュは「フランスの美しい村協会」が生まれた村

古代のリムーザン地方はローマの属州アクイタニアの一部であり、リモージュでまつられていた聖マルシアルが宣教し、3世紀にはキリスト教化されたといわれます。その後、西ゴート族、次いでフランク族がこの地を治めますが、さらにはイスラム、ヴァイキングと様々な外部勢力からの侵攻を受けます。しかし、人々の独立心は強く、統治は容易ではなかったといいます。
中世以降は、フランス王家、リムーザン子爵領となり、また、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼で宗教的な賑わいを見せ、巡礼路上には、オーヴェルニュ、ペリゴール、ポワトゥーなど、周辺地域の建築様式に影響をうけたロマネスク建築なども残ります。
 
18世紀に、サン・ティリエの町で高純度のカオリナイト(鉱石)が発見されたことで生まれたリモージュ焼きは、その後、地方の顔となるような名産品となり、中世から盛んだった七宝焼き(エマイユ)とともに、発展していきました。
 
★町や村★
 
大きな町が少ないリムーザン地方ですが、その中心地となっているのがリモージュです。ヴィエンヌ川のほとりに作られた焼き物の町です。町の歴史は古く、中世には、巡礼者なども多く訪れる街でした。18世紀には、今の主要産業となったリモージュ焼きが始まり、白くきめ細かい陶器は、リムーザン地方を代表する名産品となりました。

リムーザン地方の中心地、リモージュ

また、南部のブリーヴ・ラ・ガイヤルドも、長い歴史を持ち、交通の要所として、発展をした町です。現在でもパリへの鉄道が伸びるなど、周囲へのアクセスが良い町で、町中には歴史を感じさせる中世建築が点在しています。
 
ブリーヴの近郊、地方南部のミディ・ピレネーに近い地域には、チュレンヌやコロンジュ・ラ・ルージュなど、美しい村々が点在しています。

地方南部にある美しい村「チュレンヌ」

東部にあるオービュッソンは、古くからタペストリーの町として知られ、国際タペストリーセンターでは、2023年に、スタジオジブリの宮崎駿監督の作品をモチーフにタペストリーを制作することが決まり話題となりました。
 
★名産品と郷土料理★
 
様々な手工芸の伝統が残り、世界に誇る磁器であるリモージュ焼きと伝統の七宝焼は、リムーザン地方を代表する名産品でしょう。リモージュ焼き(Porcelaine de Limoges) は、リモージュの白い土と清らかな水で作られる磁器です。18世紀に製法が発明され、以来、欧州を代表する磁器として有名になりました。透き通るような白色の陶磁器はこの上もなく美しく、そこに様々な絵付けが施されます。食器から置物まで作られ、高級なものは芸術品ともいえる磁器ですが、アトリエやショップでは、高級品からリーズナブルな商品まで手に入れることができます。

リムーザン地方の名産、リモージュ焼き

七宝焼(エマイユ)というのは、金、銀、銅などの金属の上にガラス質の化合物を溶かして形を仕上げていく工芸品で、七宝焼は、リモージュ焼きよりもはるか昔から当地で発展した芸術品です。12世紀ごろから、作られており、独特の深みのある色彩を放っています。中世では、宗教関連の作品が多くありましたが、現在では、様々な装飾品として作成されており、簡単なものはお土産としても売られています。

中世に作られた七宝焼き

また、緑深き森と大地、多くの河川が走るこの地方では、高級ブランド牛でもあるリムーザン牛や、ジビエなどの食材が豊富で、キャベツや栗とともに、リムーザンの郷土料理として登場する機会が多いです。
リムーザン牛は、フランスでは、シャロレー牛、バザス牛と並んで高い評価を受けるブランド牛です。健康志向の欧州では、日本でいうところの霜降りなどは、あまりお目にかかることはありませんが、赤身のおいしさを感じられるでしょう。リムーザン牛は、田舎の豊かな自然環境の中で放牧され、香り高くおいしい赤身肉として知られ、近年はだんだんとその人気が高まってきています。

ブランド牛のリムーザン牛は高級レストランでも使われる

ジビエの一つに数えられる野兎(Lievre)は、日本では、あまり食べることがないですが、兎はフランスではポピュラーな食材です。兎を示す言葉には2つあり、一つはラパン(Lapin)、もう一つがリエーヴル(Lievre)です。一般的な兎をラパンと呼ぶのに対し、リエーヴルは野兎と訳され、その名の通り、野生の兎で、大柄な兎であることが多いです。リムーザン地方は冬場にはジビエの産地としても知られ、兎もよく食べられます。カベサル仕立てと呼ばれる、兎に豚肉や仔牛肉などを詰め、ワインで煮込み、煮汁を兎の血とレバーでつないだソースで食べる料理が知られています。また、この料理は現在、高級兎料理とされる兎のロワイヤル風の元祖ともいわれ、ロワイヤル風では、フォワグラやトリュフなども使って仕上げます

冬に旬を迎えるジビエのリエーヴル(野兎)

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