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【地方紹介8】コート・ダジュール地方

 <地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:コート・ダジュール地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方
(Provence Alpes Côte d'Azur)/マルセイユ(Marseille)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方
(Provence Alpes Côte d'Azur)/マルセイユ(Marseille)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●アルプ・ドゥ・オート・プロヴァンス県(Alpes-de-Haute-Provence /04)県庁所在地:ディーニュ・レ・バン(Digne-les-Bains)
●アルプ・マリティム県(Alpes-Maritimes /06)県庁所在地:ニース(Nice)
●ブーシュ・デュ・ローヌ県(Bouches-du-Rhône /13)県庁所在地:マルセイユ(Marseille)
●オート・ザルプ県(Hautes-Alpes /05)県庁所在地:ガップ(Gap)
●ヴァール県(Var /83)県庁所在地:トゥーロン(Toulon)
●ヴォークリューズ県(Vaucluse /84)県庁所在地:アヴィニョン(Avignon)
 
※francerでは、プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方を、「プロヴァンス地方」と「コート・ダジュール地方」に分けてご紹介しています。この中で、コート・ダジュール地方は、

「プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール」地方圏の中で、「アルプ・マリティム県」および、「ヴァール県東部の沿岸部」をコート・ダジュール地方として紹介をしています。
  
★地方概要★
 
日本でも、その名を知られるコート・ダジュール。フランスの地方の中でも、非常に知名度が高い名前であるように思います。しかし、このコート・ダジュールという言葉は、まだ出来上がってからそんなに歴史があるわけではありません。コート・ダジュールという言葉が生まれたのは1888年です。
 
ステファン・リエジャールが出版した本のタイトルが「La Côte d'Azur」であり、彼はこの本の中で、「今後この地域はコート・ダジュールと呼ばれ、辞書にはこの言葉が組み込まれるだろう」と語っていますが、この呼称は、この地方一帯を説明するのに非常に都合がよかったのでしょう。たちまちこの呼び方はフランス中に広まりました。
 
本サイトでは、地方圏区分と違い、明確に地域を分けることわけにはいきませんが、主に東はマントン、西はイエール東、サン・トロペ周辺の沿岸部、及びそれに準ずる山間部の観光地として魅力的な村々をコート・ダジュールと定義しています。
 
そうすると、コート・ダジュールはフランス南東部、地中海沿岸に広がるリゾート地のような印象を受けます。コート・ダジュール(紺碧海岸)という名前からも、どうしても海や観光地、リゾート地というイメージが先行する地方なのですが、この地域の大半は山間部なのです。
 
中心地であるニースのある県はアルプ・マリティム(Alpes Maritimes)県、訳すと「海のアルプス」県なのです。このあたりはヨーロッパのアルプスの西端が沿岸部近くまで迫ってきており、海岸から数キロのところまでは平地がありますが、少し北上するだけで、山間地域、渓谷がいくつも連なっている山間部が広がります。そして、これらの山間部に広がるアルプ・マリティム県が、この地方のもう一つの魅力を作り上げているわけです。

沿岸部のアンティーブ、後ろには山々が迫っています。

コート・ダジュールの魅力の一つはイメージ通りのリゾート地、まぶしい太陽と紺碧の海岸、高級ホテルと上流階級の社交場、海岸線沿いでは、こういった光景は確かにみることができます。しかし、もう一つの忘れてはいけない魅力が、この山間部に点在する魅力的な村々。鷲巣村と呼ばれる中世の雰囲気を残す村、時がとまったかのように中世の趣きを残し、歴史に翻弄されたこの地方を私たちに語ってくれる芸術作品や家並みがひっそりと残っていることも、見逃すことはできません。

鷲巣村サン・ポールは、画家シャガールが眠る

★町や村★
 
古くはケルト人の一派であったリグリア人がこの地方には住んでいましたが、ギリシャ人が地中海を西進し、フランスにやってきて以来、都市部はギリシャ都市となり、その後、ローマ帝国の治下に入り、その後ゲルマン民族の支配、というのは、他の地方と同様で、特にプロヴァンス地方と同じくくりで発展をしていきます。この地域が独自性を持ち始めるのはニースが勢力を持ち始め、プロヴァンスとの関係を断ったことから始まります。
 
それまで西のエクス・アン・プロヴァンスを拠点としていたプロヴァンス伯爵領から、ニースとその周辺地域は離れ、現イタリアのトリノを本拠とするサヴォワ公国に庇護を求めます。この後、1860年にフランスに組み入れられるまで、ニースとその周辺はフランスとは別の歴史を歩むことになり、コート・ダジュールの旧市街がイタリア的な要素を持っているのは、このためです。
 
この地域では、都市部はすべて沿岸部に集中しており、中心となるのは、「リヴィエラの女王」と称されるニース。次いでカンヌ、アンティーブ、マントンなどの都市が続き、また、国は違えど同地域内にあるモナコ公国の存在も忘れられません。ニースは中世の時代から「ニース伯爵領」として、発展をしてきた歴史があり、フランス王国やプロヴァンスとは一線を画した独自の文化を築き上げてきました。現在のエクス・オン・プロヴァンスを中心としていたプロヴァンス伯爵領が15世紀末にフランス王国に併合されたことを考えれば、1860年まで、そのフランスとは違った歴史を歩んできたニース周辺の旧ニース伯爵領の地域は、やはり文化的にも、毛色が違うのも当然です。

リヴィエラの女王ニース。美しい海岸線は「天使の湾」と呼ばれる

現在では、リゾート的要素が多いコート・ダジュールですが、近代にはその風光明媚な景色を求めて画家に愛された町も多数あります。マティス、シャガールが愛したニース、ルノワールが晩年に住んだカーニュ・シュル・メール、シャガールが眠るサン・ポール、ピカソが住んだアンティーブやヴァロリス、コクトーはマントンやヴィルフランシュを愛し、数々の美術作品がこの地に残っています。それは、この地方の自然景観が豊かなことを何よりも証明しているでしょう。

イタリア国境の街マントン

このような芸術家が集まりだした時代に、ドイツ、ロシア、そしてイギリスという北ヨーロッパの高級貴族や王族たちが避寒のためにこの地方に足を運ぶようになります。町の交通網は整備され、新しい建物、高級ホテル、カジノなどが立ち並び、美しの時代「ベル・エポック(Belle Epoque)」と呼ばれる時代が到来し、その後、現在に至るまで、コートダジュールは世界有数のリゾート地として発展していきます。

エル・エポックの華やかな時代の装飾がなされたホテルのバンケット・ルーム

そして、地方の大部分を占める山間部を忘れてはいけません。地方のイメージから、山間部はそれほど注目されませんが、景勝鉄道に乗って、山の奥へと進んでいくと、中世から時が止まったかのような美しい村々が点在しています。サヴォワ公国統治時代に描かれたであろうすばらしいフレスコ画の残る教会や礼拝堂が残っていたり、ルネッサンス以前に活躍したニース原始絵画派とよばれる画家たちの作品も各地に残ります。

ニース後背地に位置する中世の村、サオルジュ

★名産品と郷土料理★
 
郷土料理は、典型的な南フランス料理や地中海料理と似たような食文化が根付いています。気候や地理的特徴により、肉は羊、乳はヤギ、そして、にんにく、ハーブ、トマト、オリーブを多用する食文化ですが、特にニースの郷土料理は有名なものが多数あります。
 
名前が知られているものでは、まずは、ニース風サラダ(サラド・ニソワーズ)。今やフランス中のどこでも食べることができるほどポピュラーな料理ですが、やっぱり本場ニースで食べてみたいところです。本場のポイントはトマト、黒オリーブの実、アンチョビ、ピーマン、そしてゆで卵。この5つの材料が本物の証拠であり、これ以上でもダメ、これ以下でもダメなわけですが、実際本場ニースのサラド・ニソワーズでさえ、今やツナなどを付け加えて出されます。また、黒オリーブの実以外の具には、火を一切通してはいけないとされています。茹でたサヤインゲンなどがでてくることもあるが、それもニセモノと言われています。

ニースの代表的な郷土料理、サラド・ニソワーズ

もう一つ、有名なものはラタトゥイユ。日本でも知られている料理ですが、実はコート・ダジュールの郷土料理です。野菜煮込み料理で、もともとは残飯を処理するためにつくられたものだったのですが、それを料理としてだせるようにしたのがラタトゥイユです。ナスの紫、トマトの赤、ズッキーニの緑と色鮮やかで、冷たくしても熱くしてもおいしい。多くは、前菜や、またはメイン料理のつけ合わせなどに使われます。 夏には冷たく冷やしたプロヴァンス産ロゼワインと共に前菜に食べたい一品です。 ニース料理と紹介されることが多いのですが、プロヴァンス各地でも食べられる料理です。

野菜の煮込み・ラタトゥイユ

その他、野菜やオリーブオイルを使った料理も多数ありますが、食材で非常に有名なものがレモンです。名産地はイタリアとの国境の街であるマントン。レモン生産でフランス一を誇る名産地で、毎年2月末(または3月上旬)にレモン祭りが開かれるほどの名産地です。マントンでは、レモンを使った様々な製品がお土産としても売られています。

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