厨二病中学一年生


「風が...泣いている」
窓際にある騒めく木々を横目に、数学の時間が始まった。
6年前中学一年生だった私は、列記とした厨二病を患っていた。それも当時流行っていたアニメ、「中二病でも恋がしたい」の小鳥遊〇六花に憧れ、無事厨二病への扉をこじ開けていた。
眼帯に強い憧れを持ち、近くの100円ショップや薬局など、手に取っては自分の羞恥心と葛藤し、結局は買わずじまいだった。
しかし、傷、欠陥、に強い憧れを抱いた少女はついに顔に絆創膏を貼り、見事に1年1組の教室に足を踏み入れた。今思えば、普通の生き方をした少女達なら誰しも顔の傷なんてものは否が応でも死守するはずだ。だが少女は小鳥〇六花に憧れている。手遅れであった。
まずは、仲のいい友達から嬉々とした視線が送られる。「なにこれどうしたんw」
「かっこいいしょ!傷ついてないけど貼っちゃった!w」
「まじかwwwwwwww」
マジである。少女は大マジである。
大マジであるが故の大バカであった。
少女、満身創痍で授業を受ける。「風が騒がしいな...」
午後、風の強い曇り空であった。
厨二病絆創膏事件

それから部活の時間が始まった。
吹奏楽部の少女は個人練習に耽っていた。すると音もなく隣に部活の副顧問が隣に立っていた「その傷、どうしたの...?」
深刻そうに問い詰める副顧問、一瞬ドキッとした。なんせ傷もついていない箇所に絆創膏を貼って厨二病ごっこを謳歌しています!などくそバカである限り言えない。まだ少女は大バカ止まりであったので。
「え、ああ、なんか蚊に刺されました..!w」
無い頭を回転させて咄嗟に副顧問にしょうもない嘘をついた。
「そうーならいいけど!」
去っていく副顧問
今思えば、目立つ箇所に絆創膏を貼るなんて、DVでもされていたのではないかとも思っても不思議ではない。副顧問へ、あの時は心配かけてごめんね!

少女の厨二病武勇伝は止まることを知らない。
「邪王真眼」
少女は邪王真眼の虜であった。筆箱の中からマジックペンを取り出し、手の甲に邪王真眼を描き、その上からまたまた絆創膏で「封印」していた。周りからバカにされようが至って少女は本気であった。
次の時間は体育であった。
バレーボールをペアでパスしあう動作中、絆創膏の粘着力が弱まり、邪王真眼がペリ、ペリと見え隠れしていた。必死に邪王真眼を隠す少女は傍から見れば滑稽以外の何者でもなかった。

厨二病邪王真眼編

包帯眼帯絆創膏折り畳み傘、全て眩しいくらいに輝いていたあの頃。中学一年生という貴重な1年をドブに捨て、どっぷり厨二病の世界へのめり込んでいた少女も、今年で20歳を迎える。今となっては、友人界隈では鉄板の笑い話になった。どんなにバカにされても好きな事を貫く姿勢、そもそも、ここまで熱中できる何かがあるということ。今となっては中々ない事である。
中学一年生で厨二病になった少女よ、中学二年生になると、もっと闇が深くなるぞ。

[完]

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