日々の事56
不屈の闘志・緑のメンコ
先日に引き続いて馬の話。今日の主役はキングヘイロー。
さて、このキングヘイローという馬、往年の競馬ファンなら誰しもが知っているだろう。
(ウマ娘では高飛車お嬢様)
偉大なる父
さて、このキングヘイロー、実は日本競馬史でも稀に見る超良血統馬だった。(何でこんな馬が日本で走ってるの⁉︎と当時を知る人は思う程)
父のダンシングブレーヴは80年代欧州最強馬。そして母のグッバイヘイローもアメリカでケンタッキーオークスなどを勝った名馬。
キングヘイローの話にはこの父の功績が欠かせない。
ダンシングブレーヴは、イギリスの競走馬で、アメリカ・フランス・イギリスで試合をし、10戦8勝と1980年代のヨーロッパ最強馬と謳われている。それを示すように世界の競走馬の格付けであるインターナショナルクラシフィケーション(現ワールド・サラブレッド・ランキング)では、141ポンド(140点中⁈)の史上最高レーティングがされている。
ダンシングブレーヴの持ち味であり、世界の人々を魅了したのがレース終盤の末脚。200mを10秒3で走り切った脚はまさに豪脚の一言。
その真価を発揮したレースを紹介する。
それが、1986年10月5日にフランス・ロンシャンで開催された凱旋門賞。
実際の映像がこちら
レース終盤。最後方にいたダンシングブレーヴは、カメラすら見離す位置取りから、尋常じゃない末脚で、他馬を一気に撫で斬りする。
その上で最後は1馬身半もの差をつけてフィニッシュした。欧州最強の名をほしいままにしたのも頷ける走り。
この後、ダンシングブレーヴは引退、種牡馬として良血を残す……と思いきや、悲劇が襲う。
種牡馬になって間も無く彼はマリー病という奇病を発症し、療養生活を余儀なくされる。一命を取り留めたものの、産駒が成績を残せなかったこともあり、馬主は彼に未来は無いと考えて、手離すことにした。
普通ならば買えるはずもない超が付く良馬。
だが、病気の事もあり買い手がつかなかったところに目をつけたのが、日本のJRAだった。
そして、数奇な運命を辿り、欧州の英雄は日本の種牡馬となる。
日本に来た後、ようやく彼の産駒が欧州のGⅠレースを制覇するようになったが時すでに遅く。ダンシングブレーヴはそこから日本の種牡馬として、GⅠ制覇する数々の産駒を輩出する。
その後、ダンシングブレーヴはマリー病の再発により、この世を去るが、死に際は壮絶で脚を一度も折らず痛みに耐え、仁王立ちで絶命したという話もある。
良血の証明
……前置きが長くなったが、そんなダンシングブレーヴの子どもがキングヘイローだ。
1997年のデビュー時から最強馬の血を継ぐ馬として、注目されていた。
その期待に応えるように新馬戦、黄菊賞、そしてGⅢ東京スポーツ杯と勝ちを重ねていく。
……しかし、ここから彼の受難が始まる。
続く皐月賞トライアルの弥生賞では、セイウンスカイ、頭角を現し始めたスペシャルウィークに及ばず3着。
そして、若かりし福永祐一騎手とのコンビで迎えた日本ダービーでは、逃げの勝負に出るが、終盤に失速し、14着の大敗となった。(ちなみに福永はこれが初ダービーで、そこから2018年日本ダービーにてワグネリアン騎乗で勝利するまで負け続けている)
超良血統のはずが、これで終わるわけがない。
騎手を柴田善臣に変え、信じて何度もGⅠレースに出るも、敗北、また敗北。負けに負け続ける。調教師の坂口正大氏を始めキングヘイロー陣営は、それでもこの馬には力があると信じ続けた。
ウマ娘でキングヘイローが負けレースでも弱音を吐かず首を決して下げないのは、絶望を味わいながらも走り続けたところからきていると思われる。
宝塚記念、安田記念、有馬記念、天皇賞………。
気づけばGⅠレースに10戦。いずれも今一歩届かない。
そして、もはやこれが最後と望みをかけた2000年の高松宮記念で、ついにその時が訪れる。
どうぞノーカットで見てほしい。
まさに執念が掴んだ栄光。
何度負けても諦めなかった。ようやく、自分の血統を証明してみせた。
そんな高松宮記念でのキングヘイローの末脚は、欧州を席巻したあの偉大な父・ダンシングブレーヴそのものに見えた。
キングヘイローはこの後、試合を重ねるものの、GⅠで再び勝つことはなく、引退する。
種牡馬として優秀な産駒を輩出し、その中のローレルゲレイロは父の同じく高松宮記念を制している。どちらかといえば産駒全体では中央競馬よりも地方競馬での活躍が目覚ましく、地方重賞制覇の数は抜きん出ている。
2019年、残念ながらキングヘイローはこの世を去ってしまう。次の世代が血を繋いでくれることを願うばかりだ。
緑のメンコがトレードマークのキングヘイロー。
その戦いぶりは、今も私たちを魅了してやまない。
最後にJRAが彼をフィーチャーしたのCMを見てほしい。
キングヘイロー、そしてダンシングブレーヴの軌跡が見えるはずだ。
今日はここまで。
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