ワインの時事通信 フランス・南西地方の挑戦

久しぶりのnote更新です。7月14日はフランス革命記念日、ということで、ワイン大国のフランスは、今日は祝日です。いつもなら大盛り上がりのところですが、今年だけは別で、通常シャンゼリゼ通りで盛大に行われている軍事パレードは中止になり、その代わりに医療従事者に敬意を表すための式典が参加者全員マスク着用の下に行われたようです。

今日のワインにまつわる時事ニュースは、この革命記念日の件で埋もれていました(私、よくみつけた!)。記事のテーマは、革命記念以前に昨今のコロナ禍の中ですっかり見過ごされている気候変動問題です。

ワインといえば、経済的側面も切り離せなくて、コロナ・ショックであらゆる事業者が経済的な打撃を受けていることは事実だと思いますが、気候変動問題も緊急かつ重大な問題として、特に生産者の間で徐々に認識されているという話です。

今回ご紹介する記事は、フランスの全国紙Le Mondeで環境問題について取り扱っているビデオジャーナリストによるルポルタージュです。

気候変動問題はフランスのワイン作りにも着実に影響を与えており、地元のぶどう栽培農家はこれまでとは異なる取り組みが求められているそうです。

たとえばフランスの一大ワイン銘醸地のボルドー地方では、戦後70年で平均気温が2度上昇したそうです。フランス国立農学研究所(INRA)によると、この気温上昇によってブドウが早熟し、これによってワインの品質さえも変わってしまうとのことです。また、ぶどうが良く熟すことによってぶどうの糖度が上がり、これによって発酵が進んでアルコール度数も高くなってしまいます。

実際、この30年のワインのアルコール度数はあらゆる地域で上昇傾向にあり、最も顕著なラングドック地方では、10年で1度上昇しているそうです。INRAによると、1984年の平均度数が11.8度だったところ、2018年には14度に達したそうです。

これによって地元の人々が危惧しているのは、自分たちの地域のワインの品質が劣ることはもちろん、これによってアイデンティティーが失われることです。ぶどうが熟しきるのを防ぐために収穫時期を早めるなど、様々な取り組みが行われているようです。実際、収穫時期は早いところでは8月の終わりに行われるなど、最近では1980年代に比べて3週間ほど前倒しに行われているそうです。そして今年も暑い夏になることが予想されているようです。

INRAの研究者の言葉によれば、この問題を解決する方法はなく、今後人間が環境に適応しなければならないということ。

フランスの南西地方のピレネー地方にあるAOCモンサン(生産色は赤・ロゼ・白!)では、1世紀前に「見放された」古来の地場品種をもう一度栽培しようという取り組みが行われてるようです。

これらの見放されていた品種とは(何かは明記されていませんが)、1900年代、今よりだいぶ涼しかったころ、当時はぶどうの糖分が商業用のワイン造りには不十分だったために、ワイン用のぶどうとしては不適格とされた品種です。

これらの品種の栽培の取り組みはスタートしたばかり。ワインが作れるだけの収穫までにはあと数年かかることになるし、おいしいワインになるかも定かではありませんが、気候変動の問題はそれだけ深刻化しているということを、私たち消費者としても、頭の片隅に入れておきたいことではないでしょうか。


#ワイン愛好家 #ワイン



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