「保険料の贈与」と「保険の贈与」

最近、セミナーでよくこの話をしています。

70歳を過ぎ、後期高齢者入りが目前に迫ってくると、手持ちの金融資産を子供や孫に役立ててもらおうと生前贈与を考える方が増えてきます。死んでお金を残すよりも、生きている間に贈与して子供や孫の喜ぶ顔が見たい、感謝されたいと考えるからでしょう。

この年齢になれば、子供は40歳前後の中年、その子供は小学生などでこれからお金がかかる時期。贈与を受け取る側から見れば、このタイミングでもらえるのはとってもありがたい。

人生の第4コーナーをまわり、ゴールがあとわずかに迫った時、それまで「俺は自分の財産をすべて使い切って死ぬから子供達には財産は残さない」と言っていた人でさえ、いざ、最後の最後には、家族に感謝されながら「お父さん、今までありがとう・・・」などと言われてゴールテープを切りたいと思うのでしょう(-。-)y-゜゜゜

なお、生前贈与せずに親が死んだときに財産を残すような場合、その時には子の年齢はもっと上になっているでしょう。一番経済的に苦しい時期はとうに過ぎていて、「どうせならもっと早く生前贈与してくれれば助かったのに・・・」ということになるでしょう。

そのため、生前贈与をするならば、後期高齢者入りするあたりでやっておくほうが本人にとっても子供たちにとってもベストタイミングということになるでしょう。

生命保険業界で古くからある生前贈与プランというのは、親から子へ金銭を贈与し、子供が契約者になって生命保険に加入するというものです。この際、年間110万円までの範囲内であれば贈与税の基礎控除の範囲となりますので贈与税はかかりません。なので、毎年110万円の贈与を繰り返していき、その110万円以内のお金を年払保険料に充当して子供に生命保険に加入してもらうというハナシです。

留意点としては、後々の税務トラブルを防ぐために「贈与契約書」を取り交わしておきましょうということがありますが、これがちょっと面倒臭い。しかも、贈与というのは単年ごとに独立した契約としておかねば「定期贈与」とみなされてしまう恐れがあるので、毎年毎年、面倒でも贈与契約を結んでおく必要があるわけです。

また、贈与というのは贈与したお金を子供の管理下に置くことが必要になりますので、贈与する側としては無駄遣いをしないかと気をもむことに。そうならないように保険をセットするわけですが、いつも見張っているわけにもいきませんので、もしかしたら保険を勝手にやめてしまって無駄遣いをしてしまうかもしれません。

さらに、贈与者が認知症になったりすると、贈与契約書の当事者になれなくなりますので、そこで生前贈与はストップ。そうなると、子供は保険料を払えなくなりますので保険を続けていくことが困難になり解約することに。

かつてのように予定利率が高い時期は、貯蓄性の保険のラインナップが豊富でしたし、一定期間保険料を払えば、そのあとは解約しても返戻金の方が支払保険料を上回るということが多かったので、5年とか10年とか生前贈与できればよいか、ということでした。子供がどうしてもお金を必要とするならば解約せずに契約者貸付を受けることができますし、贈与者はいい顔をしないでしょうが一部解約や全部解約という方法も取れます。

しかし、マイナス金利の今ではこの手法が難しい。同じ手法で5年や10年程度贈与したのち贈与者が認知症になるなどして贈与がストップした場合、受贈者である子供が解約しようとすれば大きな含み損が実現してしまいます。支払保険料を大きく下回る返戻金しか受け取れないということです。

今だと、貯蓄性の終身保険などは、20年、30年払ってようやく解約返戻金が保険料総額を上回るかどうか。なので、生前贈与はいいけれど、保険を使うと減ってしまうから意味がないよね・・・ということになるのです。

そこで最近注目されているのが「保険の贈与」という方法です。これは、贈与者である父親が5年程度の払込期間で貯蓄性の生命保険に入って保険料をすべて払込んでしまっておきます。被保険者は自分でも、子供でも誰でもいいです。そして、頃合いを見計らった頃に契約者を父親から子供に変更します。

これをご覧になっている方はお分かりと思いますが、保険の契約者を変更しただけでは贈与とはなりません。贈与が認定されるのは、契約者変更後に子供が解約して返戻金を受け取った時。なので、このタイミングで贈与とならないように返戻金を毎年110万円までに抑えて一部解約を繰り返すという考え方です。

この手法が良いのは、贈与契約書がいらないこと。親が元気なうちに払込が完了した短期払の貯蓄性の保険をたくさん持っておいて、自分が好きなタイミングで名義変更すればよいこと。認知症になって贈与ができなくなる、というリスクがなくなること(認知症になる前に払込を終える必要はあります)。被保険者を父親にしている状態で名義変更前に父親が死亡すれば、「生命保険金の非課税枠」が使えること。そして、最も大きいメリットは、お金を子供の管理下に置くことを「留保」しておけるということ。

ただし、この手法はどこの生命保険会社でもできるわけではありません。終身保険を5年払程度の短期間で払込できる取扱規定があること。そして払込が終わったら大きく増えなくともいいので、早期に返戻金が払込保険料を上回る商品スペックであること。ここは少し上回る程度で構いません。保険で増やすのが目的ではなく、無税で資金を親から子に移転させることが目的なので。

なお、私が今取引している会社にはこの手法に沿った商品があるので、「団塊の世代」が後期高齢者入りしていく、これからの数年間はこの手法が使えると考えています。

「75歳は人生の第4コーナー。家族に感謝されながらゴールテープを切りたいものですよね」

「一方で『どうせ財産を残してくれるんだったら早く贈与してくれればよかったのに・・・ケチな親だったな』と思われたくないと、生前贈与を考える人が増えてきています」

こんな感じかなぁ(-。-)y-゜゜゜


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