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景気後退(リセッション)を100%予測できる指標とは?

外国為替市場で円相場は1ドル=149円台をつけ、32年ぶりの円安水準を更新しました。次の大きな節目、150円が意識されるようになり、市場では政府・日銀がどのタイミングで為替介入に踏み切るかと警戒感を高めています。

ただ、一時的にドル高を抑えることはできても、円安トレンドは変わらないと、その効果を疑問視する声もあります。そもそも相場というのは市場の自然な需給関係で決まるべきものであって、為替介入はいわば非常手段ともいうべきものです。いたずらに介入を繰り返しても、その効果はどんどん薄まります。

急速に進む円安ドル高の背景

今の円安ドル高の主因は米国の利上げにあることは既知の事実ですが、このところの急速な動きのきっかけとされているのが、米国労働省から発表された9月消費者物価指数(CPI)です。

8月に8.3%だった上昇率は8.2%となり、伸びは3ヶ月連続で鈍化してはいるものの、市場予想(8.1%)を上回りました。その結果を受け、米国のインフレは未だ収まっておらず、FRBが利上げを積極化するとの見方が強まり長期金利が上昇。日米金利差拡大が強調されたことで、円売りドル買いが加速することになりました。

パウエルFRB議長はインフレに徹底抗戦の構えで、大幅な利上げを継続する強い意志を示していますが、その一方で、利上げの代償として懸念が強まっているのが景気後退(リセッション)です。

当然ながら、投資家としては看過できません。とはいっても、早かれ遅かれ来るのかもしれませんが、絶対に来るということでもない。ただ、いざそのときに慌てないようにある程度、時期にアタリはつけておきたいものです。

その目安として多くの市場関係者が注視しているのが、米国債のイールドカーブ(利回り曲線)です。

長短金利の逆転現象は景気後退のシグナル!?

イールドカーブとは、債券の利回り(イールド)と償還期間(満期までの期間)との相関性を示したグラフのことをいいます。

順イールドと逆イールド

一般的に平常時や金融緩和時において、償還期間が長いほど利回りが高くなる、右肩上がりの曲線を描くのが「順イールド」。

反対に右肩下がりの曲線を描く「逆イールド」は”償還期間の短い債券の利回り”が”償還期間の長い債券の利回り”を上回る状態をいいます。金融引締め時に多く見られ、景気後退(リセッション)の兆候とされています。

実際には、2年物と10年物の米国債の利回りを比較するのが一般的です。前記したように平常時では、短期債より長期債の利回りのほうが高くなります。期間が長いほど債券の価格変動リスクが大きくなるので、2年債よりも10年債の方が金利が高くなるのは当然です。

銀行の定期預金でも10年より2年のほうが利息が高いなら、わざわざ利息の低い方に長く預ける意味がありません。つまり、長期金利よりも短期金利が高いのは、異常な状態であるということです。

そして、現在その異常事態である「逆イールド」が米国債券市場で発生しています。理由はFRBがインフレ抑制のために急ピッチで金利を引き上げているからに他なりません。

債権の金利を決定する要因はいくつもありますが、基本的には短期金利が中央銀行の決定する政策金利ベースで、長期金利は市場予想や期待値がベースになっています。

つまり、金融政策の影響を強く受ける期間の短い2年債の利回りが上昇を続ける一方、10年債は金融引き締めによる将来的な景気減速が織り込まれるなど2年債ほど金利が上がらない。その結果、逆イールドが発生しているというわけです。

過去に逆イールド状態になった際には・・・

米国では1980年以降の景気後退局面が6回あり、逆イールドが発生したのも6回でした。そして、逆イールドが発生してから一定期間後に景気後退局面入りしていることが以下の表からわかります。ただし、発生から直ちに景気後退とはなっていません。

右列には逆イールド発生から景気後退までに要した期間を、ざっくりと月単位で表示しています。この過去の事例から推測できるのは、金利の逆転現象から景気後退までしばらくは時間の余裕があるということ。

ただ、これまでと同様に必ずしもリセッション入りするとは断言できません。というのも現在、FRBは大幅な連続利上げと量的引き締めを断固とした姿勢で推し進めていますが、実は同時に実施するのは1978年以降で初めてのことなのです。

40年ぶりという歴史的なインフレ高となっている米国はいま、この状況を早期脱却しようと前代未聞の金融政策で躍起になっているわけです。

もし、FRBの可及的で大胆な金融対策が功を奏し、数ヶ月後にもインフレが収まるようであれば、景気後退のシナリオが崩れる可能性も十分あります。

そもそもFRBはこの逆イールド状態を直ちに危険信号になるとは見ていません。なぜならFRBが重視しているイールドカーブは、市場が注目している2年債と10年債の組み合せではなく3ヵ月物短期国債と10年債だというのです。

そして、以下が2022年1月からの2年債と10年債、3ヵ月物と10年債の金利差をグラフにしたものです。2年-10年は7月以降にゼロラインを下回る逆イールド状態となっていますが、3ヵ月-10年は下落しているものの、ゼロラインに近付くと反発を繰り返していることが見て取れます。

また、パウエル議長が今年3月の講演の際に「景気動向を100%説明できる」と主張した組み合わせもあります。それが「3ヵ月物の金利」と「18ヵ月先の3ヵ月物先物金利」との比較です。2年債と10年債の逆イールドの信頼性より、この金利差のほうがリセッションの指標として正確だと述べたのです。

では、現状どうなっているかというと、、、足元では昨年末より開きがある状態でノーシグナル。FRBを代弁するなら、喫緊の問題ではないから、私たちはまったく意に介していないという印象です。

周りが身構えているときこそ動くとき!

日々矢継ぎ早に耳目に触れるネガティブ情報にどうしても投資家は感化されて積極的になりにくいものですが、冷静に考えてみると、FRBの金融政策が上手くいけば、リセッションなくして株式市場はまもなく何事もなかったかのように回復していくだろうし・・・、

リセッションとなるにしても過去のデータからすると、まだ1年あまり猶予期間がある。いずれにしても今日明日どうこうなるものではないので、短期的には過剰に憶病風に吹かれることもないでしょう。

ひとつ言えることは、市場参加者たちが、目の前に迫りつつある危機的な状況に対して、今のように過敏になっているときほど、その現実は訪れない。市場を震撼させるショックが勃発するのは、いつだって、そんな馬鹿な!と意表をつくタイミングです。

なので、個人的には意外にも早い段階でインフレが減速し、金利引き下げ方向に舵が切られて株式市場は全体的に上昇基調に回復すると見ています。それは、いま私たちが思うよりもずっと近い将来なのかもしれません。周りが身構えているときこそ動くときです!

このところのセンチメント悪化の影響で、有望な米国株が割安になっています。もう一段の下げがあっても尚更、絶好の仕込み時とも考えられます。楽観相場になれば、もう割安ではありませんからね。

PS

WEBラジオ番組『週刊 株と共に生きる!』(略して株イキ!)の放送内でも金融市場が注目する逆イールドについての話題が取り上げられ、証券アナリスト窪田先生が丁寧に解説してくれました。(10月7日放送より一部抜粋)

「米国債が逆イールド現象 投資家はバーゲンセールに備えよ」

PPS

米国には大きく分けて11種の業種セクターがあり、景気サイクルに従って巡回するとされています。金利が上昇し、景気が後退していくというのなら、次に来るのはどのセクターなのか!?

米国株推奨銘柄リスト『シャイニングスター8』のシリーズ8作目のテーマは「米国の景気後退が懸念されるなか注目すべき銘柄」です。詳細につきましては、FPO公式メールマガジン(読者数16万8,466名 ※本稿執筆時点)にてご確認ください。未登録の方は是非この機会にご登録ください。

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