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私の工場経営ノウハウ(10)5SはJIS規格

よく聞く「5S(ごえす)」は日本産業規格JIS 8142-5603に定義されている日本製造業の行動指針です。ちなみに、JIS(Japanese Industrial Standard)は1949年以来「日本工業規格」と呼ばれていましたが、法改正により2019年7月1日より「日本産業規格」に改称されました。JIS規格は主務大臣である経済産業大臣が制定した日本の国家標準です。英語表記はそのままです。5Sは、1930~1940年代に生まれ1950年代に日本能率協会からトヨタなどの企業での実践を経て確立され、JISに登録されたようです。今では、各社における「現場運営管理の要」であり「現場の奥義」です。各社独自の5S活動をやっているようで会社や工場の改善活動全般に及んでいます。

❶ JIS 8141-5603「5S」定義:職場の管理の前提となる整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(躾)について、日本語ローマ字表記で頭文字をとったもの。整理とは必要なものと不必要なものを区分し、不必要なものを片付けること。整頓とは、必要なものを必要なときにすぐに使用できるように、決められた場所に準備しておくこと。清掃とは、必要なものについた異物を除去すること。清潔とは、整理・整頓・清掃が繰り返され、汚れのない状態を維持していること。しつけ(躾)とは、決めたことを必ずまもること。

 上記の定義とその解釈を噛みしめると味わい深いですね。5Sには流れがあって、整理⇒整頓⇒清掃⇒清潔⇒躾という順番があるということですね。製造現場では是非解釈を正しく理解して実践するといいですね。

❷ 関連用語「3T」:定品、定位置、定量の日本語ローマ字表記で頭文字をとったもので、5Sの中の整頓をサポートする指針です。よく「5S・3T」と言われますので紹介します。

 5Sで分かったような気持ちにはなるのですが、いざ実践しようとすると、どこから手を付けようか迷うのではないでしょうか。それを助ける指針として3Tは明快です。

5Sの目指すところ:何より、すっきりした働きやすい職場です。通路や棚が整理・整頓されていないと作業効率が落ちます。工程内の加工前・加工後の置き場や材料の置き場が整理・整頓されていないと品質問題が起きるし、工具や保護具、消火器、手洗い場、洗眼器の5Sがダメだと安全衛生問題に関わります。 

 生産性で目指すは、JIT(Just In Time)を可能にする工程平準化と、それを可能にする停滞仕掛ゼロを実現することが一つ。財務的には棚卸資産回転率の向上、ROA総資本事業利益率の向上など会社経営効率の向上を目指しています。品質的には工程内不良率のコントロールを向上させることや製造設備で言えば動かしたいときにいつでも動く可用率向上でもあります。作業者の標準作業時間、すなわち固定費回収効率にも効果があります。結局、会社・工場経営上の効率向上を目指しており、収益向上に貢献する訳です。

実践5Sは関連ルールとの連携が重要:家庭内の整理なら5S・3Tで十分だと思いますが、工場となると関連ルールとの連携が重要です。
例えば、「整理、整頓」のところで、今日「必要なもの」は作業場に整頓・3Tして、明日以降必要なものは倉庫に整頓・3Tしますが、「故障や期限切れの有無」の確認と処置が伴います。「不必要なもの」は売却するか廃棄することになりますが、実際には古い機械の場合売れない一方、他にも使っている同型機や類似機がある場合、故障したときの「部品調達先」になります。すでに部品も供給終了しているときなど助かるので棚卸評価替して「簿価」を下げて保有します。その他は廃棄するために減損処理します。いずれにせよ、貸借対照表、損益計算書など財務諸表に影響が出ますので社内の手続きを取ります。関連法規として、危険物なら「消防法」の指定数量を超える場合、該当危険物の取扱者免状を持った者が法令に定める基準にしたがって保管することになります。「毒物及び劇物取締法」「有機溶剤中毒予防規則」も同様です。工場排水も「水質汚濁防止法」があります。ISO工場なら環境に関して「ISO-14001」、品質に関して「ISO-9001」の要求事項があります。そして廃棄物を含め全てが会社の資産ですから財務会計上の処理が必要です。

❺難しいのが躾(しつけ):JISでは「決めたことを必ず守ること」と定義していますが、5Sでは整理・整頓・清掃・清潔について決めたことと理解しましょう。それでも守っていることを確認するには仕掛けが必要です。こういうときに、ISO-9001の考え方が有効です。すなわち、各設備、部屋等の清掃基準又は5S基準を作って実行し、点検基準のチェックリストを使って確認して、記録を残します。方法を変えたら最新版管理として基準類のレビジョンアップをすればいいです。
 
 よく考えてみると家庭内や職場内での「躾」も「決めたこと?決まりこと?を守らせる」という意味では同じですね。でも、守れない決まり事や苦痛を伴う決まり事は困りますね。さらに、効果のない決まり事も守りたくないですね。そこで、これらの決まり事は実効性と効率性、効果の検証が常に必要です。工場では原価に関わるので定期的な検証に基づくPDCAを回しましょう。結局、工場経営上の何等かのKPI(Key Performance Indicators)を向上させるためにやっているのですから。

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