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私の工場経営ノウハウ(6) ロボット化のメリットと注意点

ロボット化は実際どうなのでしょうか? そのメリットと注意点について記します。

❶結論:
 ケースバイケースで圧倒的に有利な場合と、効果の出にくい場合があります。よく調査して適用可否を決めてください。ここでは、産業用ロボットの導入について記します。

❷メリット:
1) 従来の加工設備、検査装置が使えるため、自動化するに当たって、これらの設備を改造する必要はありません。また、ロボットは設備を選びませんから、生産終了した設備に使っていたロボットを他の設備に使うことができます。
2) 危険、汚い、キツイの3K職場への適用は、まさにロボットの出番です。産業用ロボットは、作業環境の悪いところはもちろん、あらゆる場面で活躍しています。自動車工場でロボットが溶接作業をしている映像が流れますが、あのような使い方は最適ですね。
3) 次に、ノンストップランニング、人間と違ってお昼休みも交代勤務も必要ないので、それだけでも効率は高いです。
4) さらに、作業者間の出来栄えに差がなくなり品質が安定します。新人教育が不要で即ベテラン作業員です。ポカミスもありません。
5) 最後に、労務管理が不要ということです。人の採用、配属、評価、報酬、離職、定年、シニア活用、ボーナス、ベースアップ、人員整理、労働災害、労働組合交渉について悩む必要がなくなり人事部員を減らせます。ロボット100台を導入すれば昼夜土日稼働で300人の仕事をします。
6) 10台のロボットを使う場合の例を記します。それで30人分の作業をします。人件費なら(給料じゃないですよ)、国内で年間1億8千万円、海外でも半分の9千万円です。10台が同じ作業をするなら、システムインテグレーション費用が抑えられるので投資は1年以内に回収され、翌年から利益がでます。
7) 但し、ロボットの操作・監視、メンテナンスと同時にローダ・アンローダ・工程間処理をする要員と、電気代、作業に適合したマンピュレータや専用ツールは別に必要です。同一エリアで10台昼夜連続なら4人は必要だし、給与レベルも上げる必要があるから人件費が別途掛かりますが、それも織り込み済みで1年程度の回収期間です。

❸注意点:
 メリットで話した使い方と違う使い方をすると儲かりません。

1) 同じ作業を継続的に行う職場向きです。昼間だけ短時間使用では効果が出ません。作業者のように別のところに歩いて行って応援したり、突然違う仕事を頼んだりできません。
2) 原則移動しませんし、可動範囲に人は入れません。よって、安全柵などで周囲を囲います。一部、可搬重量が小さいロボットが人と共同作業できますが、小さな部品の取出し、取付け作業のような仕事に限られます。また、ロボットにトラブルがあった時、作業者が手動で加工設備を運転できるようにスペースを考慮しておく必要があります。
3) ロボット本体以外にシステムインテグレーション(SI)費用やマニピュレータ開発費用が掛かる場合があります。これらがロボット本体よりお金が掛かる場合が多いです。ロボット1台毎に異なる作業をさせると、多関節ロボット1台が400万円でも、その他費用が800万円なんてことになります。SIは、加工設備とロボット間、さらにロボット同士をシンクロナイズさせるための信号のやり取り、ロボットのセンサからアクチュエーターへの信号処理や命令伝送などの他に、座標精度調整など多くのシステムインテグレーションを必要とします。
4) 一度に多くのSIを使ってロボット化するのは困難です。理由は、SI会社は丸抱え受注したがらないためです。理由は、仕事が終わったら皆失業状態になるためです。SI会社は、SIが数か月の期間縛られるので、いろんなお客様と同時に時間差で仕事をしたがります。よって、複数工程の同時ロボット化は複数SI会社と行うことになります。または、中長期的にロボット化を実行する方がよいでしょう。
5) 丸投げ発注はできません。ロボットは製品を加工したり検査したりするので、動作や結果の出来栄え確認は自工場の技術者が行います。加工設備とのすり合わせ作業も大切です。また、ロボット化で作業タクトタイムが伸びてしまうことがあります。ロボットと加工設備の作業分担も考慮が必要です。意外と人間の動きは速いです。2人作業をロボット3台に置き換えた経験があります。一方、ロボットのマニピュレータが製品のデリケートな部分に接触して不良を作らないようにしなければなりません。
6) ロボット現場の運転にはロボットオペレータが必要です。ロボットにティーチングしたり、マニピュレータの改良、加工設備とロボットのメンテナンスやSIとのすり合わせも必要です。また、ロボットに関するある程度の知識は必要です。日頃は、ローダ・アンローダと工程間つなぎのところに仕事があります。製品の出来栄えをアンローダのところでチェックも必要です。特に、製品のロット番号やシリアル番号と作業記録をロボットが正しく生産管理システムに報告しているかなど、生産管理システムとの情報リンクもチェックします。ロボットを多く使う場合、ロボットオペレータの社内教育体制が必要だし、なければロボットメーカのロボット学校などを活用する方法もあります。
 ロボットオペレータは従来の作業者より高給で使うべきです。これから、経験のある彼らは転職が容易になりますから。

➍ロボットは進化します:
 ロボットは人工知能(AI)との連動で作業を学習して効率向上をするようになりました。また、ロボットメーカーではクラウドシステムを応用して、ロボットのセンサやモーターの状態を監視するサービスも開始しました。これにより、動作に心配が発生すればメーカーの監視センターから情報がもらえ、トラブル予防も可能になりました。最近では、人との協調作業用に開発された産業用ロボットもあります。価格が下がって普及すると現場の様子が変わると思います。
 一方、生産管理システムとの連動で、リアルタイムに生産状態を確認できるしロット管理もできるようになりました。AIとの連動はこれからも進化します。そのうち、ロボットの監視とメンテナンスもロボットがやるようになるでしょう。いろんな業務をAIとロボットがやるようになるので、人間の仕事は、開発試作のような創造的な業務や文化芸術的な仕事、医療現場での心理的ケアなどの人の心に訴えるような仕事が増えるのではないでしょうか? ロボット会社でロボットがロボットを作っているのを見てそう思いました。

 教育的投資と思って、ロボットをまずは1台買って使ってみてはどうでしょうか?

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