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#18「住宅ローン」選びは老後破綻を防ぐための試金石

すでに住宅ローンを選んだ人もこれから選ぶ人も、どのように金融商品を選んだ(選ぶ)だろうか。普段から節約に取り組んでいる人でも、金融資産の選び方をおろそかにすれば、これまでの節約は簡単に吹き飛ぶどころか、将来どれだけ節約しても取り戻せないかもしれない。

住宅ローンについていえば、何も考えずに単に「良さそう」というイメージで選んでしまうと、100万円ぐらいすぐに負担を増やすことができる。住宅取得時には、住宅ローン、火災保険、生命保険・医療保険の見直し、団信保険など一度に多くの商品を選ぶことを考えると、簡単に損できる。

しかも多くの人が「自分に合った商品を選んだ」と思い、多く支払っていることすら気づいていないのではないだろうか。

住宅取得費以外にも様々な支出を控えているなか、適当に選んでいれば自ら老後破綻へ突き進んでいることになる。

そこで、なるべく無駄のないよう、住宅ローンの選び方を紹介する。

1 住宅ローン利用者の実態

住宅金融支援機構は、「民間住宅ローンの実態調査」を行っている。年2回行うこの調査のうち、最新の2018年度2回の調査を見てみよう。

〇資料1 変動金利型を選んだ人のリスクの理解度

変動金利型は借入期間中も金利が変動するため、金利が上昇すればその分、利息額が増え、当初の予定より返済額は多くなる。このリスクへの理解度について、「よく理解していない」「全く理解していない」がどの項目も1割程度いる。

〇資料2 金利上昇への対応

金利上昇により返済額が増加した場合、どのように対応するかの調査でえある。「見当がつかない、わからない」が2割いる。変動金利型は対応策を準備してから選ばないと、リスク発生時に家計への負担が大きくなる可能性がある。

また借換で対応すると考える人がいるが、住宅ローン金利の変動が激しくなると、金融機関はこれまでどおりの基準で借り換えに応じるとは限らない。そのようなときは、金融機関でも金利の動向が読めなくなるからだ。実際に、金利がバブル前の水準まで低下したとき、これから上昇する可能性があるとして各金融機関は審査に3ヶ月ほど費やし、事実上の受付拒否としていた。

〇資料3 住宅ローンを利用する上で役に立った情報

役に立った情報の上位が利害関係のある相手からの情報だと分かる。インターネットの情報もよほど注意して読まなければ、アフィリエイト目的で書いてある文章かどうか気づかないだろう。

ただ「役に立った」と言っても、それをどの程度役立てたかは人によって異なるため、単に「参考にした」という調査でも同じような結果になる可能性はある。どこまで信用して活用したかまでは分からない。

〇資料4 利用した住宅ローンを選んだ理由(決め手)

フラット35以外で利用した住宅ローン選んだ理由で最も多いのは、「金利が安い」で70%以上である。そもそも変動金利型と固定金利型は商品性が異なるため、単に金利を比較することはできない。変動金利型の金利が低いのは当たり前である。市場金利が上昇すれば、金融機関は金利を上げればいいので、借り入れ時はキャンペーンを打って金利を低く設定しても調整できる。

固定金利型を選んでいる人の多くはリスク回避のためだが、これに加え、他の固定金利型より金利が低いことも理由となる。フラット35の金利は1.110%(最頻金利・返済期間21年以上)だが、他の固定金利をネットでさっと検索すると、マイカーローン1.90%~2.85%、教育ローン1.71%と設定している商品と比較すれば、「資金調達は住宅ローンを固定金利型で行う方がリスク回避となる」と判断できる。借入金額が大きい割に、金利が低いためだ。借入金額が少なく、返済期間が短ければ、変動金利の金利上昇リスクは軽減できる。

2 変動金利型を選ぶ前に行うこと

家計の状況を把握し、将来、金利が上昇したとしても返済できる余裕があるなら、変動金利型を選んでも良い。。ただ調査結果から分かるように、一部の人はリスクを認識せず、金利が低いという理由だけで選んでいる。

そこで、住宅ローンを選ぶ基準を一つ紹介する。

それは「自分がコントロール(制御)できるかどうか」である。住宅ローンに関して、コントロール(制御)可能か否かで要素を分けてみる。

<コントロール(制御)可能>                    最も負担の軽い住宅ローンを探す                   最も保険料の安い団信、火災保険を探す。

<コントロール(制御)不可能>                   金利の変動を予測する

変動金利型を選ぶことは、自分でコントロールできない金利の変動による影響を受けることを意味する。「金利の予測」は単に上昇する、下降するだけの予測では意味がなく、「何年後に何年間上昇し続けるか」を予測しなければならない。金利がこれまでより上昇すればメディアなどで大きく取り上げられるが、しばらくすると下がることはよくある。「金利上昇機運」に乗せられて借り換えをした直後に金利が元に戻ることは十分考えられるため、金利を予測することに期待はできない。

そこで、自分でコントロールできることに労力を費やす

住宅ローンと保険探しだ。実際に最安値を選ぶのは難しいかもしれないが、上位3位の商品を選ぶことはできるだろう。「住宅ローンは難しい」「保険は難しい」で諦めてしまったら、自分でコントロールできる(自由に選べる)要素を自ら手放していることになる。

これで変動金利型を選べば、自らリスクを抱え込みに行っているものだ。

加えて、完全にコントロールできるわけではないが、キャッシュフロー表を作成し、「景気が悪化した場合」の収支計画を立てておく。金利上昇による返済額の負担が増えたとしても、家計への影響が大きくなければ変動金利型も選択肢になる

3 住宅ローンの金利を予測している人にはこの質問を

もしネット上でも金利の予測をしている人を見つけたら、次の2つの質問をしてみよう。

Q1 どのような軌道で上がりますか(何年間、何%まで上がりますか)。

Q2 それを信じて行動しても大丈夫ですか(責任とってくれますか)。

金利の予測が当たるかどうかで家計に影響が出るような選択肢は極力避けなければならない。それこそギャンブルである。

金利は様々な要因で変化する。経済学の分野ではあるが、経済学を次のようにたとえる話がある。

『ある二人の経済学者が雪山で遭難した。二人は地図や方位磁石など持っているあらゆる道具と知恵を使い、ついに場所を特定した。「わかったぞ。向こうに山が見えるだろ。あれが私たちの立っている山だ( ;∀;)」』

・・・話がそれたが、日ごろから研究している経済学者でも金利の動向を詳細に予測することはできないだろう(人数が多ければそのうちの一人が詳細に予測する可能性は確率的にある)。

経済学をけなしているわけではないが、コントロールできないところでいくら労力を使っても、一般家庭が報われるかどうかはわからない。報われたとしても偶然である。

住宅ローンや保険の情報は、情報リテラシーがあれば(これが難しいが)、自分に合った商品を選ぶことができる。数百万円の差が後々響いてくるので、住宅ローン選びは早めに始めよう。

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