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#15保険相談で顧客本位か見分ける方法

保険の相談は、最終的には保険代理店や保険会社の募集人にするが、本当に自分に合った商品を勧めているか判断しにくいだろう。そこで、保険募集人が本当に顧客本位で業務を行っているか、見分ける方法を紹介する。

1 保険相談の流れとその怪しさ

保険相談をすると、今ではほとんどの代理店で、ライフプランの作成を無料で行っている。ライフプランの作成では、家計の状況を伝えなければならないため、家計にどのくらい余裕があるかを利害関係のある相手に教えることになり、ここに怪しさを感じる人も少なくないだろう。実際に、家計に余裕があるほど、貯蓄型の保険を勧めやすい。募集人からすれば、資金に余裕がある顧客には営業しやすい。顧客に合う合わないに関係なく、勧めたい商品に説得力を持たせることができるのが保険のプロである(私もやろうと思えばできる)。

2 保険商品に詳しいのはやはり保険のプロ

ただ注意したいのは、保険販売の経験者やどんなに保険に詳しい人でも、現役の募集人には劣ることである。

数多くある保険商品のうち、検討時にどの商品が優れているかは、乗合代理店の保険募集人に相談した方がいい。どんなに詳しい人でも、現役でなければ保険設計ができないため、「女性より男性の方がお勧め」「40代の女性の保険料が安い」「非喫煙者の女性ならこの商品がいい」など、細かい優劣は知らないはずである。

公式サイトのシミュレーションでも一部の条件でしか保険料の試算ができないため、シミュレーションだけで最終的な判断をするのは危険である。保険サイトの情報も、保険募集人が保険設計システムを使用して算出した保険料でなければ、信用できる情報とは言えない。

私自身、ランキングなど見ることがあるが、調べる順位を参考にするぐらいいで、商品の良し悪しには使用していない。

対面相談のないネット経由の商品でも念のため電話で保険料など詳細を確認しておいた方がいいだろう。保険に詳しくなければ勘違いしている場合もあり、直接相談すると、公式サイトに書かれていることと同じ内容であっても安心できる。

3 顧客本位の営業をしているかどうかの見分け方

顧客本位の営業をしているかどうかの見分け方はいくつかあるが、今回は、葬儀費用での見分け方について紹介する。

子育て世帯は、万一に備え、死亡保障の加入を検討する。死亡保障は、生活費や教育費などの支出から遺族年金などの収入を引いて、不足している額を計算し、それが死亡保障の額となる。

死亡保障の計算は、各代理店が使用しているソフトで行うため、保険募集人自身、ソフトの操作方法は知っているが、死亡保障額の算出方法や考え方まで知らないことがある。また詳しい保険募集人でも、あまり知識がない顧客にはスキができる。

さて死亡保障額は高いほど保険料が高くなるため、手数料収入もよくなる。意図的に高くすることはないが、死亡保障額の算出方法に興味がない、保険を売ることが目的の募集人にとっては知識に穴が生まれやすい。

その一つが、葬儀費用である

葬儀費用をネットで検索すると、平均200万円としているサイトが多いことに気づく。葬儀の参列数が増えると、葬儀費用は上がるため、葬儀費用を200万円~300万円として死亡保障額に加えている。

そして、政府統計で公開されている葬儀費用別の件数が次のグラフである。

統計データによると、100万円以上200万円未満が36%と最も多いが、100万円未満が半数以上である。相続税を専門に扱う税理士事務所の税理士法人チェスター[*1]も「平均200万円と記載しているサイトが多いが、実務的な経験から富裕層でも200万円かけているのはまれで、100万円程度に収まる」と書かれている。これは政府統計データを見ても明らかである。

見分け方だが、保険募集人は相談中に様々なデータを案内してくれる。死亡保障額の合計だけ示して細かい説明をしない代理店は論外で、信用に値しない。具体的な見分け方を紹介する。

<見分ける具体的な方法>

死亡保障額の中に、葬儀費用として200万円~300万円がさりげなく加算されている。繰り返しになるが、内訳を提示しないプランは全く信用しなくてよい。

おそらく「何かご不明な点はございますか」「これでいかがでしょうか」など確認されると思うが、そもそもライフプランの作成方法が分からないから相談しているため、指摘できず、そのままになるはずである。ましてや最後の最後、葬儀費用でどれくらいかかるか即答できる人はほとんどいないだろう。

「いつでも修正しますので、気になりましたら、おっしゃってください」と言ったとしても、細かい指摘はされないと思っている(細かい指摘をする人がいないため)。

このように、本来なら収入によって変動すべき葬儀費用であっても、家計の状況を知っているにもかかわらず、平均額で計上するのである

少なくとも、顧客本位であれば、葬儀費用のデータを提示し、いくらで見積もりましょうか、と尋ねるべきである。その上で、200万円を選ぶなら問題ないだろう。実際に地域によって葬儀に対する考え方が異なるため、葬儀費用の相場も正確に把握するのは難しい。

葬儀費用はその状況からなかなか削除しにくい費用であることは確かだが、借金をしてまで平均値の規模の葬儀をすることは現実的ではない。限られた予算内で費用を捻出するのが普通である。

ライフプランの作成は、細かい情報を盛り込むため、葬儀費用のようなスキが生まれやすい。今回は葬儀費用に焦点を当てたが、他にも多くのデータを使用するため、ライフプランを重視していない(保険を売ることが目的である)代理店ほどスキが多くなる。

保険に限らず、相談する前は無数の選択肢を持っているが、相談すると知らないうちに選択肢が少なくなっており、場合によっては有利な選択肢もなくなることがある。「知らないうちに」なくなるのだ。

[*1]出典:税理士法人チェスター「葬儀費用の相場は本当に200万円? 葬儀費用の目安と仕組みを解説」

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