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内縁関係と同性パートナーシップ制度

今年3月、最高裁が同性カップルでも内縁関係(事実婚の状態)が成立し、不貞行為に対する慰謝料請求も認める、という判決を下しました。
7年間の同居生活や海外で婚姻登録証明書を取得しているなど、いくつか明確な内縁関係を裏付ける状況にあったとはいえ、最高裁が同性の内縁関係を認めた初めてのケースだそうです。

内縁の夫婦という言葉はよく聞きますが、同性でも認められることによって、今後どんなことが想定されるのか。
また通常の夫婦とはそもそも何が違うのか、まとめてみたいと思います。

内縁関係(事実婚)とは

内縁関係と認められるにはいくつか要件があります。
主なものを挙げると

1.婚姻の意思がある
2.同居し、生計を共にしている
3.公表し、周囲からも認識されている
4.子供を認知している

4以外は明確なエビデンスを挙げづらいかもしれませんが、住民票が同じ場所にある、結婚式を挙げている、なども判断基準になるようです。

同性パートナーシップ制度とは

一方、2015年に渋谷区と世田谷区でスタートした同性パートナーシップ制度は、年々拡大を続けており、現在では110以上の自治体が採用。人口カバー率は50%に近付きつつある状況です。
この制度の内容は自治体によって差はありますが、自治体が「宣誓を受け付ける」「証明書を発行する」などの方法でパートナーシップを認めることで、公営住宅の入居など本来夫婦しか受けられない行政のサービスを受けられるというものです。

古くから「婚姻に準じる制度」として法的にも保護される部分も多い内縁関係と、ここ数年で急速に広まりつつある同性パートナーシップ制度。それぞれどんなシーンで有効なのか、見ていきたいと思います。

社会保険

内縁関係でも、生計を維持されているなどの要件を満たせば、健康保険の被扶養者とすることができます。
またその配偶者の同居している父母、子についても被扶養者とすることができます。
また同様に厚生年金保険についても、第3号被保険者となることができます。被保険者が死亡した場合は、遺族年金を受け取ることもできます。
ただし同性パートナーの場合、健康保険の被扶養者や厚生年金保険の3号被保険者になることはできません。

税優遇

内縁関係でも同性パートナーシップ制度でも、配偶者控除や配偶者特別控除の適用はできません。

相続

現時点では、内縁関係には相続権はありません。
長年のパートナーという事実があっても法定相続人にはならないので、内縁の配偶者が亡くなっても自動的に遺産を相続することはできません。同性パートナーシップ制度でも同様です。

遺贈・養子縁組

ただし(内縁や同性パートナーに限りませんが)、遺言により財産を受け取ることは可能です。また養子縁組により、法定相続人になることもできます。
この場合、他の相続人が知らない間に進めてしまうと、イザというときに揉めてしまうこともあります。他の相続にからすれば、自分の相続分が減るわけですから当然です。弁護士等の専門家に相談して慎重に進めてください。

住宅取得

金融機関によっては、内縁関係や同性パートナーでも、住宅ローンを折半で組むペアローン契約ができます。その場合、それぞれを団信(団体信用生命保険)の受取人にも設定できます。一方で、住宅そのものを共有することも可能ですが、前述のようにお互いを相続人にできないため、死亡時も持ち分をどうするかについては事前に対策しておいたほうが良さそうです。

生命保険

住宅ローン同様、生命保険会社によっては内縁関係、同性パートナーともに生命保険の受取人に設定することが可能です。
同性パートナー制度の開始に合わせて、パートナーを受取人に指定できるよう改めた保険会社が登場し、その後、多くの保険会社が追随しています。
ただし生命保険金の基礎控除(500万円×法定相続人の数)のカウントには含めることができません。

医療行為の意思確認

患者が意識不明の時、手術などの医療行為の同意は、家族が代理で判断することになります。
この場合の「家族」をどこまでの範囲とするかは、医師や病院の裁量のようですが、「同性パートナーシップ制度」の証明書によって代理を認めているケースも多いようです。
一方、内縁関係で証明できるものがない場合は、家族として認められるかどうかは、病院次第になります。


愛人関係とは

さて、内縁と混同してしまいがちな関係性として、愛人関係があります。
こちらは婚姻の意思はない(片方はあると思っていても)、双方もしくは片方が別な相手と既に結婚している、という点において、内縁関係とは明確に違います。
よって法的な保護もありません。遺贈や住宅の共有などムリヤリできなくもないですが、片方が亡くなった後に揉めるのは必至。避けたほうが良いでしょう。


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※筆者作成(2021年7月現在)

同性パートナーシップ制度を採用する自治体は年々増加しており、それに伴い、保護される権利の拡大を求める声も大きくなっています。
現時点では内縁関係にやや劣る制度かもしれませんが、冒頭の判例の通り、同等の権利を有する制度になりつつあります。

また、全世界的に性的少数者(LGBT)の権利は大きく容認されてきています。いずれ日本での同性婚も認められる日が来るかもしれません。その時は通常の婚姻同様の法的な保護が得られます。

大きな変化がありそうな同性パートナーシップ制度に、FPとしてこれからも注目していきたいと思います。

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