vol.7「がんについて正しい知識の話」
がんとは、がんを知ることでコントロールできる」ということであり、「がんを知る」ということが非常に大事だということ。
がんは遺伝(家系)によるものはわずか5%であり、誰にでもなる可能性があるということ。そして、「がんとは一種の老化である」ということです。生きていくだけで時とともに遺伝子が痛む。これが遺伝子の経年劣化。そして免疫細胞も、年とともに衰えてくる。これが免疫力の老化です。つまり、「遺伝子の経年劣化と免疫力の老化」という、2つが重なってがんになるということ。そもそもがん細胞というのは、自分自身の細胞であり、「遺伝子のコピーミスによる突然変異で起きている。誰にでもがん細胞はあるということで、自分の免疫細胞が戦ってくれているために、発症していないということですね。
日本における発がん原因は、第一位が感染(胃がんであれば、ピロリ菌感染。肝臓がんであれば肝炎ウィルス、子宮頸がんであればHPV感染)であり、続いて、飲酒、喫煙など。ただ、これは30%くらいの話で、60%くらいは「運」ということでした。完璧な生活をしていても、誰でもがんになることがあるということです。だからこそ、「健康診断」が非常に重要であり、早期に見つけていくことが大事なのですね。
がん細胞というのは小さい時は害はないというか、何もしない状態で、10年から20年をかけて約1センチになるということでした。この1センチ未満で見つけることは(外科医の現場では)ほぼないそうです。ただ、がん細胞が1センチから2センチの大きさになるのが、たったの1年~2年であり、ここの時期に、健康診断を受診し発見できるかどうかが非常に大事ということです。
ただ、日本のがん健診受診率は低い。これは先進諸外国ではがんの教育がなされているのに対して、日本は「がん教育」がまったくないということも要因だそうです。健康増進法の改正により、例えば受動喫煙なども整備されつつあるが、まだまだ日本はがん後進国なのですね。
今日本では、「ドラッグロス」という問題があり、これも日本のがん患者の死亡が多い一因とされているという話もありました。ドラッグロスとは、欧米で承認された薬が日本で使えない事態を指すそうで、どうしてこういうことが起こるかというと、日本は薬価が低く、事業性が成り立ちにくいのだそう。つまり、収益性を見込めない日本市場での開発は、検討すらされないことがあって、いい薬が入ってこない。なので、こうしたドラッグロスもがん死亡につながっている可能性もあるということです。国が貧しくなると、こういった面でも影響が出てくるのですね。ヘルスリテラシーという言葉がありますが、これも日本は圧倒的に低いのだとか。「疾病別の保険がある意味がわからない」などとネット上で堂々と配信されていたり、「保険不要論」とか声高に配信されていたりする中で、あまりに「想像力」が欠落している方に出くわすこともあるはずです。日本人は、世界で最も長く(生涯でみたときに長い年月という意味)働くそうです。「がん社会」とは、働くがん患者が増えるということであり、私たちも全員が意識していく必要があるわけです。