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第18話 いざ物件探し!④~立地の良い中古の戸建て~


【登場人物】


〇藤堂さおり(32歳)・・主人公 
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長 
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。


〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。 
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇不動産会社G 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。  勘太のFP事務所と連携して、事業を行っている。


前回までのあらすじ。

主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、事務所の所長の勘太から住宅購入にあたり様々なレクチャー後、物件探しをスタート。気に入った物件は、再建築不可だったりと中々うまくいかない。他の不動産会社から物件紹介の連絡を受け、不動産業界経験のあるFP事務所の龍太同行のもと、数件物件回り、そのうちのリフォーム物件を2人は気に入ってしまったが、龍太の説明で新耐震基準を満たしていないと思われる物件だとわかる。今後の二人の物件探しはどうなるのか?


第18話 いざ物件探し!④~立地の良い中古の戸建て~


ある日、物件の内見に龍太が他のお客様との約束で、同行できず、花積だけが同行したときに、勘太と龍太のことを話してくれた。私があのFP事務所の二人が双子だって話したら答えてくれた。
「そう、おっしゃる通りあの二人双子なんですよ、似てるけど、体型が全然違うからなんか変な感じですよね。」
「私もそう思っていました!最初顔はそっくりだから兄弟なのかなぁと思っていたけれど、体型があまりに違うから。うーん、どうだろうってね」
それを聞いて、花積も笑った。
「お二人とは以前からお知り合いなんですか?」
「ええ、私と神崎勘太とは高校の同級生で一番仲良かったんですよ。あいつ、大学卒業して、
最初は証券マンとしてバリバリ稼いでいたんですよ。そのあと保険営業も経験して、独立したというわけ。証券マンのころに福岡に転勤で居た時期が5年以上あったこともあって、時々妙な博多弁はいるでしょ(笑)」
「そう、それも時々違和感あったんですよ。そうだったんですね。じゃぁ、経験でいうと不動産業界の経験は龍太さんの方なんですね」
「そう、彼のことは詳しくはしらないけれど、不動産Zで10年近く経験してるみたいで、この業界の手口はだいたいわかっていると思って大丈夫です」
「あと、そうそう、余計なことかもしれないけれど、二人って最初それぞれ勘太は母、龍太は父のもとで育てられたみたいだけど、小学校の頃に再開して、それ以来転勤で離れていた時期はあれど、基本的には、一緒に過ごしてきたみたいです。」
「それで、今も事務所を一緒にやってるってわけね」
「二人とも金融業界、保険業界、不動産業界で、顧客をカモにしている現場を嫌というほど見てきて、さすがに嫌になった。「脱カモ」サポートしながら、飯を食える方法ないか、をずっと探求しているようなところあるんですよ。その思いは二人とも同じ。実際、世の中では、相談業務だけでやっていけているFP事務所ってほんと限られていますけど、2人の「脱カモ」サポートスタイルは徐々に口コミで広がって、今ではけっこう忙しいみたい」
 「そうね、今回も私たちは、住宅という高額なものを購入するのに、客観的なアドバイスをくれる専門家を探していて、そんな中、運よく今回2人に出会うことができたってことかしら」
「そうですね。安心させて、カモにする業者は腐るほどあるから、FP事務所がどこも安心だとは思わないけれど、2人の意見はある程度信頼してもいいとは思いますよ」
「かもですね。かも。でも、どんな場合も前のめりにならないようには心がけてますよ」
「うん、それがいい。何も疑いなく妄信するのが一番NGですからね、こういう業界は」
「そもあれ、あの二人のことを聞けて良かったわ。ありがとうございました」
これから、本当に気に入った物件と巡り合えて、契約の話になったときは、花積に仲介を頼もうとも思った。金額もお得みたいだし。

 そんなやりとりもあってから約3か月後、さおりは不動産サイトで、東急東横線祐天寺駅から徒歩6分で、築年数16年の中古戸建の物件が目に留まった。物件価格は予算を700万ほど超えているが、立地の良さなどから考えるとそこまで高すぎる印象もない。まずは、勘太にサイトのURLを送り相談してみた。勘太もちょうど忙しい時期のようで
「取り急ぎ!目黒区●●●」と住所だけが記載された短いメールが来た。
だけど、いいと思ったら善は急げだ!翌日仕事を定時で上がり、祐天寺駅で啓補と待ち合わせし、夕方遅く、空は少し薄暗くなってはいたけれど、物件の前まで見に行った。
すでに夜に近い状態だったから、外壁まではっきりとは見えなかったけれど、こじんまりした家ではあるが、いわゆる細長い狭小住宅ではないし、土地の形も綺麗だし、問題はなさそう。なにより東急東横線祐天寺駅から徒歩6分、中目黒駅からも徒歩15分ほどという魅力的な立地だ。何か大きな問題なければすすめてみたいね、って啓補と話してその物件を後にした。
翌日勘太から連絡が電話できた。
「奥さん、まだ詳細を調べてはいないけれど、この物件なかなかいいかもしれんよ」
 勘太と龍太は明日時間を見つけて、まずは現地を見に行くそうだ。それで、その時点で問題がないようであれば花積に内見の手配もしてもらう予定だ。
 翌日の夕方、勘太から連絡があった。
「さっきね、龍太と一緒にとりあえず、事務所から近くやから、歩いて場所と外観確認してきましたよ。」
「年度末の忙しいのにすぐに動いてくださりありがとうございます。嬉しい。」
「いいんじゃないかな。最初、ハザードマップで浸水危険度の色がついているように見えて、念のため区役所にも確認したけれど、ほぼ問題はなさそう。」
「忙しいのに、区役所まで確認してくれたのね!ありがとうございます。とりあえず、また内見のセッティングお願いできますか?」
「うん、もう花積にも連絡しとるよ、今週末の土曜日午後は、旦那さん含めてご都合大丈夫ですか?我々や花積は14時であれば大丈夫なんですが」
「私は午前中だけ仕事だけど、定時であがって間に合わせます。旦那は仕事休みなので大丈夫かと。そこでもうおさえてください」
「了解!じゃ、チェックシート忘れずにね。すでに一回外観までみてはいるだろうけどね」
「わかりました。よろしくお願いします」


(第18話終わり) 次回は10月4日(日)に更新予定です。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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