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第19話 ついに物件の申込へ!! ~立地の良い中古の戸建て~


【登場人物】


〇藤堂さおり(32歳)・・主人公 
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長 
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。


〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。 
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇不動産会社G 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。  勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。


前回までのあらすじ。


主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件探しをするが、気に入った物件は、再建築不可だったりと中々うまくいかない。他の不動産会社から物件紹介の連絡を受け、FP事務所の龍太同行のもと、数件物件回ったが決まらなかった。そんな中、ついに申込を決める物件が見つかった。


第19話 ついに物件の申込へ!! ~立地の良い中古の戸建て~


週末の土曜日、さおりと啓補、勘太と龍太と皆川の5人で、問い合わせた東急東横線祐天寺駅から徒歩6分の物件を内見しに行った。現地の家に着くと、すでに内見をしているお客がおり、ちょうど玄関から出てきたところだった。若い夫婦が内見したようだ。
「いいわね。いいんじゃない。」
奥さんの方がうんうん頷くように振り返って家を眺めている。
「結構問い合わせ来てる、とは広告掲載している不動産会社の方は言っていたもんなぁ。確かにここは場所がテッパンですよ」
皆川はこれまで、同行していたときは淡々としていたが、珍しく推す言葉が出てきた。
「駅からは高台になっているし、1階部分が少し半地下になっているところはマイナスやけど、地盤等は問題ないですね。契約書の細かいところを見ないと確定的なことはいえないけれど、ここまで見たところアリだと思いますよ。」
龍太は相変わらずマイナス面も含めて冷静に話してくれる。だけど、トータルでOKというのは、最初にFP事務所を訪ねてから10か月近くたつが、今回のような感じは初めてかもしれない。
 家の中は、3階建てになっており、中古である分、壁紙等最低限のリフォームは必要だけど、大規模にリフォームする必要もなさそう。日当たりも良いし、すごく気に入った。
 予算的には、600万ほどオーバーしているけれど、そのあたりをどう考えていくかだと思った。
 啓補は、立地の良さから前のめりになっていた様子だが、内見して家自体も気に入ったようだ。
「外から見るよりも、意外と中は広いね。階段とかあると狭く感じるものだけど」
「そうね。ここなら築年数見ても新耐震基準を満たしているはずだし、安心して暮らせそうね。」
「なんか、コメントが旦那さんと奥さん普通逆ですけどね」
勘太は二人の感想を聞きながら笑った。
 内見を終えて、そのまま歩いて5人はFP事務所に向かって打ち合わせした。
私たちは今回の物件について正式に申し込みすることを伝えた。この案件の仲介も花積の会社にお願いすることもあわせて伝えた。花積は早速募集広告を出している会社へ問い合わせる旨伝え、事務所をあとにした。
 私たちは今日物件を内見するにあたり、今回の物件価格に対して、頭金や月々の支払についてどのように考えていくか話し合っていた。二人の案としては、啓補が頭金と月々の支払をしていく。月々の支払は、2人の手取り収入のからは約30%以下にはなる。それで、先日データでもらっていたキャッシュフロー表のExcelシートに、それらを反映して入力してみたところ、育児休業中や時短勤務であった時期についても40%以下を維持し、年間収支が赤字になる年も基本的にはない。しかし、これはあくまで共働きが続いていることが前提であって、万が一私が仕事を辞めるようなことがあれば、その時は無理せずに、自宅を売却もしくは貸すなりしてもう少し安いエリアに引っ越すということも決めた。これらのことを勘太に話してみた。
「万が一のことまで想定しているのであれば、言うことはないですよ。この物件の立地であれば、前から話していたように、いざとなったら売れる、貸せるという物件でもあるから、そういう計画も立てやすくはなるね。この前お送りしたキャッシュフロー表を修正して確認しているのも素晴らしい。ただ頭の中でなんとなくイメージしていくのとは全然違いますからね。一応奥さんが作成されたキャッシュフロー表、私にも送ってもらえるかな。プロの目でもちゃんと確認して、私がちゃんと作成します。」
「ありがとう。それは助かるわ。ともあれ、あとはこの物件に縁があるかどうかかしら。」
「それもありますけど、契約まで進むとなれば、契約までの準備や、今回は中古戸建なので、ホームインスペクションなどやることは色々出てくるからその準備等で忙しくなりますよ」
「そうですか、わかりました。まずは結果を待っていますね」
2人はFP事務所をあとにした。

数日後、勘太から連絡があった、
「先日の物件、売主の知り合いの方に今話をしていて、その結果待ちとのこと。ただ、その知り合いの方の銀行の審査が下りるかわからないから、それ次第みたい。」
「そう。まぁ 内見してすぐ申し込んだけど、やっぱり人気ではあるのね。知り合いの話は信じていいのかしら?」
「まぁ そこ疑いだしてもねぇ。ただ今回根拠は何もないんだけれど、なんとなく今回はこちらに回ってくるような気がしていますよ。」
「あら、そう。じゃぁ期待しすぎずに待つわね。」
それまた数日後、
勘太から正式に申し込みの審査が下りて、契約が可能とのこと。
「ほんとに!なんだか信じられないけれど、本当に回ってきたのね。」
申し込んで待っていたときは、期待に胸をふくらませていたのに、いざ順番が回ってくると、嬉しさと同時に、予算600万を超えている物件を購入できるものなのか、キャッシュフロー表で確認してはいるもののやはり急に不安になってきた。そんな気持ちを察したのか、勘太から連絡来て、数日後FP事務所を啓補と二人で尋ねることとなった。

数日後、勘太の事務所を訪れた、季節はもう5月になっていた。多摩川沿いの物件のショール―ムを申し込んで、FP事務所を訪ねてもうすぐ1年経つのかと思うと、なんだか感慨深い。
「今回とりあえず、良かったですね。でもこれから次のステージでもあるから安心はできないですよ。むしろこれから。」
「なんだか急に色々不安になってきちゃって。大丈夫かなって」
「この前キャッシュフロー表で色々話したでしょ。それらの備えを忘れず、イベントが起こるたびにメンテナンスして常に数値含めて未来を想定していけば、ある程度リスクは抑えられるはずだから。あとは、決めたなら腹を決めて前に進むしかないですよ。
「ありがとうございます。次は銀行の審査ですか」


(第19話終わり) 次回は10月11日(日)に更新予定です。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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