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ブービーデザイナーが語る人生すごろく 1コマ目

信じられる女優Nさん

25年以上前、とあるポスター作成時に、今は大女優のNさんとお仕事をさせていただきました。

このお仕事は、基本デビュー直後くらいの方をキャスティングしていました。
まだ、デビューしたてのNさんは初々しさに溢れ、元気そのもの。
結構トリッキーな構図の撮影でしたが、Nさんの元気に引っ張られる形で順調に進行。

撮影終了後には、Nさんの「みんな仲間だ!」パワーが炸裂。
そこにいた全員にオートグラフ(直筆サイン)してくれました。

適当なモノがなくて、何にサインしてもらおうかなと考えていたら、
代理店の方がそれしてもらえばいいじゃんと僕のゼロハリアタッシュケースを指差しました。

彼はたぶんジョークのつもりだった感ありでしたが。
Nさんは「いいんですかあ?」と嬉しそうにさっさかさーとサイン。

当時の彼女は後の大女優ではないし、ゼロハリは新品。
それはやはり一瞬「え!どうしよう」感が勝るのもやむなしかと。

とは言え、せっかくのサインを積極的に消すのも気が引けて、日々ズボンで自然に擦れて消えるように持ち歩いていると、ひと月ほどで薄くなりました。

後悔先に立たず……

その直後、彼女はあっと言う間に国民的スターに駆け上がりました。

実はまだそのゼロハリとっといてあります。サインはほぼ読めなくなっているけれど。
いつの日かもう一度お仕事でご一緒して、そこにサインしてもらう日が来ることを信じて。

信じられても、もうあの時私ではないので、予算が…←Nさんの声(仮)。


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