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第21回:気は幽界まで


太陽から地球にもたらされる「気」

「気」は、太陽から来る。
宇宙空間で生成された気は太陽を経由し、第三惑星・地球に届くのである。
その気を、地球の多くの生物がいただいて生命を保っているのだ。
故に、気の恩恵を授からない地球の生物は存在しない。
そして、気は地上の物質界だけではなく、幽界アストラル界までも届くようだ。

神智学に、「アグニヨガの教え」というものがある。
そのアグニヨガ叢書の第八集「ハート」の309には、こう記されている。

「マラカラとは、幽界の最下層にある非常に暗い場所である。
気が殆ど達しないので、そこに居ることは非常に辛い。
それにも関わらず、時々これらの魔界的層に入らなければならない。」

アグニヨガ叢書
第八集「ハート」309一部要約

この教えから理解できることは、「気は地上界だけではなく、目には見えない幽界までをも満たしその生命力を及ぼす」ということである。
要するに、幽界の先祖霊も地上界で暮らす私たちと同様に、気の恩恵を受けているのだ。

秘教における霊的世界の七つの階層

ここで幽界の話が出てきたので、神智学における「あの世の構造」を説明しよう。
秘教でいうあの世の構造とは、七段階の界層によって成り立っている。
高い界層から順に挙げる。
① アディ
② モナド(アヌパーダカ)
③ アートマ(ニルヴァーナ)
④ ブッディ
⑤ メンタル
⑥ アストラル
⑦ 物質界
このような界層で、地球上の霊的世界は構成されている。

なお、あの世は幽界を指し、他の界層は入らない。
ただし、今の人類が密接に関わっている霊的界層は、物質界を含めたアストラル、メンタルの三つの界層である。
それよりも上の界のブッディ、アートマ、モナド、アディという界層は、今の人類にはあまりにも高い界層なので直接関係するものではない。

物質、アストラル、メンタルの三階層で行われる輪廻

人類の輪廻は、先に述べた三つの界層で行われる。
要するに、人は今生を終えると一つ上のあの世といわれるアストラル界へ移行し、そこで生活することになる。

あの世とは、「人が抱く思いの世界」のことである。
故に、日本語ではアストラル界を情緒界といい、一般的には幽界と言い表わす。
即ち、古くから言われる「十万億土」とは、この幽界を指す。

人は生前、「快、不快」の思いを抱くものであり、その思いに応じた死後の世界で暮らすことになるのである。
例えば、生前に自然界を愛し環境を保護してきた人は、美しい草花に溢れた世界に行くであろう。
それとは逆に、恨み辛みを原動力として生きてきた者は、おぞましい醜悪な世界に陥るであろう。

生前の執着心が関わってくる死後の世界

要するに、幽界とは「自身の潜在意識(無意識)があの世で顕現した界層」である。
言い換えれば、自身が気付かないうちに執着していたものが、鏡のように反映されるのだ。
故に、古代の聖賢たちは、口を揃えて「執着心を捨てよ。」と述べてきた。
生前の心の中の軽重が、死後の世界の重みを決めるのだ。
アグニヨガの教える「マラカラ」という幽界の最下層は、執着心という心の軽重によって陥ってしまう世界なのかもしれない。
それを日本では、三途の川の「奪衣婆」として表現されてきたのではないだろうか。
彼女が測る亡者の衣は、人の執着心を「衣の重さ」に見立ててきた霊的な教えとも解釈できる。

やがて執着心に囚われていた帰幽者も、時間の経過と共に固執しなくなる。そして、それまで囚われていた執着というエネルギーの塊を脱ぎ捨て、より軽いエネルギー体の幽体となる。

脱ぎ捨てられた執着心は重い想念の塊なので、低い地上世界に留まる。
それを古くから、人類は幽霊として認知してきた。
軽くなった幽体はより上の界層の幽界に昇り、更に時間の経過と共に浄化され、その上のメンタル界に移行する。

具体的と抽象的に分かれる、高位と低位のメンタル界

メンタル界とは日本語では「識心界」を意味し、一般的には「霊界」と呼ばれている世界である。
識心という言葉が分かりづらければ、「思考する」又は「考える」という風に解釈をすれば良い。

メンタル界は、簡単に言えば二つに分けることができる。
一つは低位メンタル界、もう一つは高位メンタル界である。
低位メンタル界とは仏教の「極楽」であり、キリスト教の「天国」である。
いわば霊的世界のユートピアであり、帰幽者はこの界層で霊的な癒やしを体験し、高位メンタル界へと至る。
充分癒やされた帰幽者は、高位メンタル界に至ると次の輪廻転生の準備に入る。

問題は、脱ぎ捨てられた低いエネルギーの塊である幽体の方である。
これは執着、つまり欲望の塊なのでその思いを果たすために、地上界の人間に憑依するのだ。
今の人類は、一部の者以外、憑依者への対処の仕方を知らない。

このような形で人類は輪廻転生を繰り返し、「あの世」と「この世」を往復している存在なのである。
そして、太陽から地球へと放射される生命力の気は、私たちの目には見えない世界である霊的界層にまで届き、その恩恵をもたらしてくれるのである。