弁天湯

銭湯

街角の古い暖簾をくぐると銭湯であった。暖気で毛穴が緩んだ。回数券を差し出した。
番台の座席におじさんが座っていて、ぶっきらぼうにそれを受け取った。女湯には湯気が立ちこめた。ミミは新鮮な獲物を見定めるようにして、
「今日は二番目に水圧の強い蛇口にしよお」
タオルで身体を隠すことなくゆっくり歩いて来た女は、黄色の桶を持ち、一つしかない乳房はへそまで垂れていた。乳癌かなとミミは耳までお湯に沈めると、女の病も持病もすべて忘れ、脱力し、無心で暖かさに抱かれた。
「今日も一日、おつかれさまでございました」
「おお、ミミさんじゃないか。お帰りかい」
「カレー食べてゴルフ打ちっぱなしての帰りですの。お世話さまですわ」

※なお、「」内はすべて独り言である。

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