対ゲジ戦
一日の仕事が終わり、自宅に帰って風呂に入り、夕飯を食べ、まったりタイムを過ごしていた。
YouTube見ていたが、何となくデスクの向こう側の壁を見ると黒いモノが壁を横切っていく。
視認してから1秒。
「ゲジだ!!!」
北海道の大自然で育ち、廃墟並みの社員寮で生活した経験のある私は蟲共とは幾度も戦ってきた。ナウシカなら心を通わせるただろうが私は風の谷の姫ではない。ポケットに蟲笛も入ってない。メーヴェは欲しい。
ゲジがデスクの引き出し裏に入っていくのを見ながら手元にあった綿棒ケースのフタを外して綿棒を投げ捨てた。円柱状の綿棒ケースを片手に体勢を整える。
引き出しの隣にはベッドが置いてある。寝床に乗り込まれたらたまったもんじゃない。ベッドを素早く動かしてベッド上でスタンバイ。制空権は私のものだ。ひかえおろう。
ゲジはお得意の陰キャを発揮してシーリングライトの明かりが届かない床付近を這って逃走。バカめ、わたしがオメェを見失うとでも?部屋の隅へ追い詰めて、壁を登り始めたゲジに綿棒ケースを被せてスピード収監。
しかしここで問題が発生する。部屋の隅のため手の届く位置にフタとして使えるアイテムがない。
くそっ!こういう時に誰もいないの一人暮らしってのがが困るぜ!壁にプラケースをピッタリくっつけてゲジが脱獄しないようにジリジリとデスクに近づく。何か、薄さと硬さと使い捨てを兼ね備えた素材はないか…?!
デスクの引き出しを開けた。無印のメモ帳。ダメだ、分厚すぎる。Amazonギフトカードが入っていた缶。ダメだ、片手で開けられない。古い名刺、小さすぎる。派遣会社のオリエンテーション資料、薄さ…硬さ…使い捨て…全てを網羅したアイテムだ!もはやこのために派遣会社から遣わされたと言っても過言ではない。
壁とケースの隙間に資料を差し込んで仮初のフタ。素早くベッドから距離を取り、綿棒ケースのフタを装着した。ゲジの完全密閉に成功した。ここまで来ればわたしのもの。余裕もできたので家族のグループLINEでゲジ捕獲を報告しちゃう。
その後は玄関から共用廊下へ出て、窓から大自然にリリース。お勤めご苦労様です!!
あばよ、二度とここへくるんじゃないぞ。脚一本踏み入るな。
部屋に戻ると解き放たれた綿棒が散らかっていた。さてこれはどうやって保管しようか…。
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